多摩川上流へ

バイクに乗るだけで楽しいなんて、自分も歳をとったものだと思った。行き先は具体的には決めていなかったのだけど、かつての調査地のお気に入りの場所で、のんびりしたくなって、そちらに向かう。小金井街道から五日市街道に移り、走ったが、どうも流れがそんなに速くなく、時間がかかった。五日市駅を過ぎて、しばらく行ったガソリンスタンドで給油。コンビニで買い物。久々やってきた。車では二月の調査のときに一通り回ったけど、この流域にバイクで来るのは昨年の八月以来だ。懐かしい。天気は非常に良くなって、ライダーがたくさんいた。南秋川を走り、都民の森を過ぎ、奥多摩周遊道路へ。高速でカーヴを走り抜けるアグレッシブなライダーを尻目に、僕はのんびりとバイクを走らせていた。山梨県に入り、丹波山村の温泉「のめこいの湯」に入る。昨日も一昨日も風呂に入り損ねていたから、温泉が本当に気持ちよかった。ぽかぽかと温まって出てくる。大満足。風呂上りの牛乳は今回も美味しかった。
多摩川山梨県に入ると丹波川と名称を変える。その奥に進む。三条新橋から泉水谷林道に入る。ここの渓流は好きだ。小室川谷があるし、森も結構美しい。近くには黒山金山なんてものもあるしね。林道を走りながら、ここが二月にスリップして車が後退しひやりとしたところだ、昨年ここで熊にあった、と感慨にふけっていた。そのまま泉水谷林道を走り抜け、青梅街道に戻り、今度は犬切峠を越えて一之瀬方面へ。調査地の一つであった中沢川のお気に入りポイントに行く。砂防堰堤の多い沢ではあるのだけど、花崗岩渓流の美しさを持っている沢だ。ここでは昨年二回ほどキャンプしている。コンビニで買ってきた冷やし中華を食べる。鳥のさえずりと、沢のせせらぎが混じり、太陽はやさしくも眩しくて、澄んでいる。魚はいる気配はなくて、でも試しに竿を出してみたが、あたりは全然なかった。竿を仕舞い、今度はスケッチブックを取り出す。絵を描いてみたいな、と最近思ったり。でも難しいものは描けないので、近くに落ちていたブナの枯葉を拾って、そのスケッチをしてみた。上手くないけど、満足感に浸る。オカリナも久しぶりに吹いた。心が和んだ。
それにしても、調査でない、というだけで、この心の平穏感はなんだろう。調査ということに対する緊張感、それは見えない先への不安感がもたらすものかもしれない。悪くはないけど、詩人にはなれない時間だった。
スモークチーズをナイフで切り取りながら、時々食べ、のんびりと過ごす。平和だった。水は美しかった。空気は澄んでいた。いい時間だった。
帰りは、また奥多摩周遊道路を走って帰ってきた。家にたどり着くと流石に疲労感漂う。スーパーに行って、食材を買い、一昨日買った中華なべで焼きそばを作る。幸せな時間。
明日から研修。準備が必要なのに、準備ができないまま、寝てしまった。
のんびりしたひとときがあった、GWの最終日だった。