朝起きて

矢竹沢

実験棟で作業をする。なかなかいい天気だ。初め少しだけ雲がかかっていたがすぐに晴れ渡る。朝の八時前に、山へ。まず明日には回収してしまう実験のセッティング。思いのほか時間がかかる。その後ひたすら実験に使う川虫集め。なかなか集まらない。使用頭数は420匹だけど、死ぬ奴もいるし、潰してしまう奴もいるし、すぐに羽化してしまう奴もいるので最低600匹を集めようと頑張った。休憩ほとんどなしで延々と集め続ける。目がしょぼしょぼする。渓流は樹冠に覆われていて日がきつくは差し込まない。昼間なのにヘッドランプをつけて作業作業。気合で昨日の二倍の数を集め、昨日とあわせて合計でだいだい700匹ほど集めた。
夕方七時頃戻ってくる。同じころ、同じ学科の友達がバイクで宿舎に遊びに来た。僕は作業があったので九時ぐらいまで寝ていてもらい、その後ごはんとアスパラベーコンと、豚肉の野菜炒めと、野菜たっぷり味噌汁と、天然ワサビと、牛タンと、クリームチーズと、ゼリーと、ビールと、白ワインを食しつつ、旅談義をする。最近旅に出ていないということで盛り上がる。彼はこの夏は再び北海道を少し周りたいと言っている。僕はどこに行こうかな?行く暇あるのかな?あとはコモンズの話。コモンズって何って、簡単に説明すると、共有地、共有物って感じのもの。「コモンズの悲劇」という言葉があって、これは誰だったか忘れた、結構有名な話なのだけど、ある個人による共有物の搾取から得られるメリットに対して、それによって被るデメリットは小さいという話。何かというと、メリットは丸々その個人のモノになるが、デメリットは共有地であるゆえに皆が被ることになり、デメリットの効果が分散され小さくなり、搾取した個人のメリット > 搾取した個人の被るデメリット となるから、結果的に共有地、共有物はどんどん搾取される方向に進むという話。この仮定に対して疑問はある。こうしたメリット/デメリットに各個人が功利主義的な考えを持つとは限らないし、共有物のあり方によって変化しうるし、また何を軸に功利的な考えを持つかということでも変化しうる。で、こうしたものを回避するためには共有物ではなく、私有物にする方がいいという話。そうした前提のある言葉と、各種問題について少しばかり話をする。環境問題を含め、いろいろなことに面白い示唆をくれる言葉だ。資源が無限、無償であるなら、こうした悲劇は起こらない(起こりにくい)。でもどうしても有限なもの。だからこそ、何に力を注ぎ、何を守るのか、何が必要で、何が不要なものなのか、何を自由にして何に制限をかけるのか、じっくりと考える必要がある。
明日も作業があるので、日付が変わって一時間ほどしてから睡眠につく。