秩父へ・・・・クマに遭遇!

雨は降り続く。台風がまた接近している。明日、秩父に行こうと思っていたが、昼にラジオを聴くとどうやら明日では少々遅いようだ。演習林に利用申し込みは出していないのだけど、川に沈めてある実験用のリターサンプルを増水から守るために、突然秩父に行くことにした。昼の一時半に、雨の降る中バイクに乗って秩父を目指す。都心は混んでいて、なかなかスピードが上がらない。
途中コンビニに寄り、秩父でホームセンターに寄り、とっくに濡れ鼠になっているので寒さで震えながら、夕闇迫る5時を過ぎてようやく川又に着く。いつもならここで荷物を降ろすのだけど、今回は黙って来たのでそのまま通過。林道を走る。空はまだ何とか明るいが、林道はもうすっかり暗かった。雨に加え、霧も出てきて、視界はそんなに良くない。キャンプ場先の林道にはゲートがあって、鍵がかかっているのだけど、僕の乗っているバイクだと横をすり抜けられる。雨の中、もう辺りは暗いから、人気もまったくなく、僕は遠慮なしにゲートをすり抜け、中に入っていった。
そのゲートから30mも行かないところに、林道の左側に何か大きな黒い塊があることに気がついた。その距離約20m。目を凝らすと、それが動き、ゆっくりと林道を横切る。なんだろう、そう思って足を見た。シカでも、カモシカでも、イノシシでも、足の先はちょっと細くてばかり尖がっている。が、そいつは太くてがっしりしていた。大きさといい、動きといい・・・・クマだ!!!!!クマスプレーをザックの奥深くに仕舞ってあることに気がつく。いつもは宿舎でザックの外にくくりつけるのだけど、今回はそのまま来たからザックの中なのだ。ナタも然り。そして何より、すっかり暗くなってしまった林道が、恐怖感を倍増させた。いつか見た、夕暮れ迫る森の中でクマに遇う夢とよく似たシチュエーション。心臓がバクバクしたが、幸いにも夢とは違い、今回はクマがそのまま右側の山の斜面へと逃げていったので、ホッとした。結構大きいクマに思えた。もしかしたら心理的な圧迫がより大きく感じさせただけかもしれないけど。
今年はクマの被害が各地で相次いでいる。こういう僕も今年クマに遇うのは四回目。多摩川の上流の泉水谷の奥と、日原林道で見ている。その時は両方とも明るかったから怖くなかったのだけど、今回は暗くて恐怖心倍増だった。里に下りてくるのは山のエサが少ないのだろうか?先日、実家に帰った際、親戚のおじさんと猿害の話をした。その時、猿が里に下りるようになったのは、エサがないということよりも、里に放し飼いの犬がいなくなり、里で怯えるモノがなくなった、それを猿が学習したことだ、と力説された。猿に関してはそれが当てはまると僕も考えている。が、クマはどうだろう?今年は木の実が不作というがその影響か?実際、昨年たわわに実っていたサルナシの木が、今年は全然生っていない。秩父のクマは、民家に入って来るものもいたらしいけど、ブナ林、ミズナラ林ではなく、キャンプ場のすぐ横で見たのはかなりびっくりだった。
雨も降り、霧も出て、暗い中、クマまで見てしまったので、先に進むのはかなり萎えたが、林道を走って矢竹沢に行く。途中、数頭の鹿に遇う。暗闇の沢に降り、リターサンプルにナイロン紐を付けて流されないように固定した。岩にリングボルトを打って、塩ビパイプも固定した。すっかり真っ暗になった六時を過ぎて引き上げる。イワナは産卵のシーズンが近づいているのだけど、ライトで照らすと、あちらこちらに結構たくさんいた。大きいものは25㎝ほど。ライトで照らした範囲しか動けないから、夜は簡単に捕まえられる。が、やめておいた。来年以降のイワナの生産源。しっかり繁殖して欲しい。
バイクに戻ると、すぐ横でシカが鳴き、どっきりしてしまった。林道を走り、川又の観光トイレで着替える。全身が濡れていて寒い。せっかくなのでこの機会に大滝温泉に初めて行くことにした。道の駅の横にある温泉、ゆうゆう館。七時過ぎに行くと、八時までですがいいですか?と訪ねられた。男湯は僕一人しかいない。広い湯船を占領して、冷え切った体を温める。いや〜、気持ち良かった良かった。ぽかぽかと温まって、温泉上がりに牛乳を飲んで、すっかり元気になった僕は、また濡れた雨具を着て、東京まで頑張って帰った。