研究室にて

学校に行く。加賀谷先生は新居に移ってから来るのが早い。前は昼ごろやってきていたのに、今は九時前にはやってくる。そんな加賀谷先生が、こんな本があるぞ、と持ってきたのが、「珍世界紀行 ヨーロッパ編」だった。写真ばかりの本なのだけど、何が載っているって、拷問から処刑方法から人体標本からミイラから骨の芸術作品など、ヨーロッパ各都市の博物館や蝋人形館やら協会やらカタコンベの紹介がされている。華やかで知的なヨーロッパの文化の裏の、陰湿で残酷な蠢きがひしひしと伝わってきた。そういうものがあったことは知っていたけど、改めて実感。背筋がぞっとしたのが、「ネズミ責め」。動けなくして、腹の上にネズミの入った底のついていない檻を置くのだけど、檻の上に炭を置いて、暑がって逃げようとするネズミが腹を食い破る、そんな拷問。他にも数々。頭が痛くなった。が、読んでしまった。これは加賀谷先生の内なるサディズムが、加賀谷先生にこの本を買わせたのですね、と言うと、何言っているのだ、そんなわけないだろ、という返事。そりゃそうだ。KGBの拷問も少し出ていて、近年までそういうことが、というか、今も世界のどこかでそういったことがなされていることに気持ち暗くなった。
その後授業。今回やった中に、熱帯雨林の種数、多様性などを考えるときの理論としてHubbellのneutoral theoryが出てきて、この理論について論じている本を読んだ二年前を懐かしく思い出す。
研究室に戻ってくると、加賀谷先生が何やら感動している。話を聞くと、餌の摂食速度についての、機能的反応のTypeⅡ(円盤方程式とか)を提示したHollingという人がまだ現役として論文を書いているということ。円盤方程式云々の論文はいつかと調べて見たら、1959年だった。あのHollingがまだ論文を書いている。すごいなすごいなと話をする。その後、御殿下に行く。