信州へ

帆立貝を焼く

朝、六時過ぎに起きた。少々の二日酔い。いや、かなりかもしれない。ちょっとズキズキする頭を振って、目を覚ます。六時半過ぎに家を出て、日野にあるイトーの家までバイクで行く。久々会うイトーのお母さん。七時に行くと言いつつ、着いたのが七時半を過ぎていたため、「ちょっと寝坊しました」と言うと、そんなことだろうと思った、とのこと。車を借りる。今回、レンタカーを借りてカヌーに行くつもりだったのだけど、木曜日に予約を取ろうとしたら、全然車が空いていなかった。三連休とはこういうものらしい。以後、気をつけよう。で、急遽イトーに車を借りたいのだけどと頼むと、OKとのこと。持つべきものは友人だ。前のモデルである、ターボの付いていないレガシー、Fulltime4WD、マニュアル。マニュアルを運転するのは久々だったので、しかもこのレガシーを借りるのは初めてだったので少々の不安はあったが、乗ってみると平気だった。運転するのを横から見ていると、低回転域ではトルクが弱いのかな?と考えていたが、実家にあるトラックに比べてこちらの方がずっと強い。ターボの付いていないモデルとはいえ、流石レガシー、なかなかよく走る。家まで乗って帰って、カヌーの準備。カヌー2隻とキャンプ道具、そしてMTBを積み込む。いい天気で、自分の部屋のある四階までを荷物をたくさん持って往復していたら汗だくになった。11時過ぎにようやく準備を終え、相方を迎えに行く。一緒にカヌーに行くのは約2年半ぶりになる。
関越道に乗り、藤岡Jct上信越道に移る。ついついスピードを出してしまいがちだが、10月になるまでは捕まるわけには行かないので心にブレーキ。結構空いていて、快適だった。佐久平PAで休憩。少々遅い昼食。ざる蕎麦を食べたけどなかなか美味しかった。ここのPAは変わっていて、スキー場がくっついている。高速道路を降りなくてもスキー場に行けるというのはなかなか新しいかもしれない。興味深かった。二日酔いの軽い頭痛はもうかなり改善されていたが、水分をたくさん取って、緩和した。
更埴Jctで長野自動車道に乗り換え。そこからしばらく走って、豊科ICで降りる。今回目指す川は犀川。水量豊かで、初心者向けの軽いホワイトウォーター入門コースと言われるが、まあ、普通にカヌーを楽しむのに適した川というイメージでやって来た。相方はカヌーを数回経験しているとはいえ、一人でカヌーに乗るのが今回が初めてなのでちょうど良さそう。国道19号を北に向かい、明科駅の前の大きなスーパーマーケットで買い物。水、食料品を買い込む。横に時折見える犀川は上流にダムがあるとはいえ、ダムの位置もかなり上流なので豊科辺りは結構澄んだ流れであった。でも、やがて生坂ダム、平ダムに分断されて、その水は死んでしまった。悲しい。日本の川を眺めて、ダムに分断されて濁った水になってしまった川を見るのはただ悲しい。そうしたものがない澄んだ流れを知っているだけに尚更。そしてそうした美しい川はもう数えるほどもないことも、益々悲しさを引き立てる。豊かさの中で失ってしまった美しく、豊かなもの。いつか再びそうした場所を増やして、そしてその場所での、遊び、文化を取り戻したいな。そう、日本の川を眺める時は、気持ちの半分は悲しみだ。幸運なことに(?)、相方はそんな川であっても無条件にきれいだとはしゃいでいる。川の美しさ、美しい川を知っている人が絶滅する前に、何とかしないと、本当にやばいと痛感する瞬間だ。
スタート地点である瀬口集落、大八橋の上流をまず偵察。もう夕方だったので、ちょっと急ぎ気味。狭い道で車を慎重に動かしていたら、その集落の小さい男の子が話し掛けてきてくれた。それから下流に向かう。児玉橋では車を停めて橋の上から偵察。この犀川で一番パワーのあるという瀬だ。水量豊かなだけあって、橋の上から眺めると割と迫力のある流れに見えた。ただ、コース取りはそんなに難しくなさそう。右岸に消波ブロックが並んでいるので右に寄り過ぎずにメインカレントを行けば大丈夫そうだ。その後、ゴール予定地の大原橋に行く。橋を渡ってすぐに右に曲ると川原に続く道。広い川原。ここに自転車をデポする。バスも走っているには走っているが、何せ昼間の時間帯はほとんどない。うろ覚えだが、夕方に一本あり、それはこの直近の場所で17:50ぐらい(バス停は近い)。これを使うのはあまり現実的でないから、今回は自転車を用意してみた。カヌーが終わった後、自転車でスタート地点に戻り、車を取ってくるという作戦だ。
暗くなり始めた道を戻る。道の駅で水を頂く。瀬口の集落の川原に車で降り、荷物を出した後、堤防の横にある数台の駐車スペースに停めておく。
晩飯は、紆余曲折の末(?)、チャーハンを作ることになった。他には八宝菜。春に買った中華鍋を持っていったのだけど、これがなかなか大活躍。たき火を起こして、その強烈な火力で持って料理をすると、これが実に美味いのだ。薪は豊富にあって、割と派手なたき火を心行くまで楽しむ。夕刻には非常にたくさんの川虫(カゲロウ、トビケラ)が舞っていたが、たき火をするとどんどんいなくなった。蚊はいなくて快適そのもの。帆立貝を焼いて食す。美味しい。今夜はほぼ満月で、山間から遅くに現れた月明かりが、眩しい。照らし出される影。空に還っていく炎。ヨタカがキョ、キョと鳴きながら羽音を立てずに夜空を駆け抜ける。ほのぼのとした時間だった。