犀川カヌー

犀川を行く

朝五時半過ぎに起きて、出発の準備。軽い朝食を取る。川原の目の前は釣り専用区で、朝早くからおじさん5〜6名が集まり、長い竿で釣りをしている。水中に沈めてある網を見ると大きな魚。何を釣っているのか尋ねると、コイを釣っていると教えてくれた。そう言えば昨日スーパーでコイのぶつ切りが売っていた。普段食べない魚だから、馴染みが薄いが、川魚にあってあのボリュームはなかなか。でも、あんまり美味しいとは思わないけど。やっぱり美味しいのは、アユ、アマゴ、ヤマメ、イワナ、そしてウナギ、ドジョウ、テナガエビナマズも悪くないけど、旨味はそんなにない。オイカワ、ウグイも昔食べたけど、あんまり。でも、燻製にしたらなかなかだったのは覚えている。
さて、準備を整え、カヌーを釣り専用区の下流まで運ぶ。スタート地点でちょっとだけ練習。大丈夫そうだ。九時前に出発。空は青く、日差しがきつい。川の水量は豊富。所々白く泡立つ。でも透明度はそんなにない。川幅広く流れる犀川。すぐに大八橋をくぐり抜ける。快適な流れ。怖さを感じずに波の流れを快適に感じられるぐらいのいい流れだ。2kmほど進むと川は大きく右に曲る。深そうな淵。そして瀬が続く。少々岩はあるが、寝てない限り大丈夫。すぐに左手に「さざなみ」という温泉施設。ここをスタートにする人も多いらしく、出発の準備を進めるカヌーイストがたくさんいた。さざなみの瀬、テトラの瀬は問題なし。この川は非常に消波ブロックが多い。もっとも、あるのは岸沿いなので、そういう意味では恐怖感はあまりない。川の底に散在しているのがもっとも神経を使うから。にしても、こんなにも多いのは、この川の地質と、ダムが上流、下流にたくさんあることだと思う。土砂が削られてしまっては、すぐにダムは埋まってしまうから。悲しいかな、ダムの影響する範囲はバックウォーターまでではない。その上流にも、砂防堰堤やら何やら、たくさん。それゆえ、ダムの建設は土建業者にはドル箱だ。
蛇行する川を快適に通り過ぎ、児玉橋にかかる。児玉橋の瀬だ。上流側はカヌーに乗ってみると驚くほど静か。偵察通り、川の中央やや右寄りにある岩と、右岸の消波ブロックのちょうど真ん中ぐらいを行く。橋の下に、そのルートでいうとやや左側に岩があるので、それは上手く避ける。難しくはない。波は結構立っていて、波を被り濡れながら快適に通り過ぎる。なかなか。初心者向けというだけあって、その最難関と言われる瀬も、確かにパワーはあったが、問題ではなかった。
児玉橋を過ぎると、左手に大きな斜面崩壊が見える。崩れた場所を伝う水が描く線。川を通過する分には何の問題もないが、近寄りすぎているときにもし崩れたりしたら、それは結構大変かもしれない。さぎり荘を左手に見つつ通り過ぎ、クジラの瀬、橋木橋付近の瀬は問題なし。ただ、川口橋の手前にある瀬は、思いのほか流れが速くて、問題ないが、相方は波にポンポンと跳ねていた。ゆったりとした淵で、スモークチーズを食べる。温かくなるとスモークチーズは非常に柔らかくなり、これがなかなか美味しかった。適度な瀬を越え、淵を越え、ほとんど漕がずにゆっくり下っていく。時折FRPリバーカヤック数隻が上流から流れてきて、懸命にこいで、追い抜いていく。幾名かと挨拶。本当にいい天気だ。腕の半分を水につけて進む。
左手に一枚岩を眺めるともうゴールは近い。大原橋の手前に、ものすごい消波ブロック地帯があり、右岸にぎっしりと消波ブロックが並んでいる。ここは大事を取って中州の左側の流れを行く。大原橋を越えてすぐのところで上陸した。まだ十一時半。川で泳いだが、流れは速く、どんどん流される。透明度は高くないから、急に深くなるところに流されると底がまったく見えなくなり、急に恐ろしくなって慌てて岸に向かって泳いだ。カヌーが数隻、流れていく。
テントを立て着替え、昨日デポしておいた自転車に乗り、車を取りに行く。道路の距離は大体13〜14kmぐらい。日差しきつい。道路は結構アップダウンが激しく、楽ではない。でも、時折眼下に犀川が見え、周りの雰囲気も良くて、なかなか。最近あまり自転車に乗っていないが、ちょっとだけかつての自転車小僧の気持ちを取り戻し、頑張ってこいで行く。途中あまりにも暑くて自販機でジュースを買う。生き返った。40分ほどで到着。これから犀川を下る人々に話し掛けられる。車に自転車を積み込み、ゴール地点へと向かう。やっぱり車は楽だな。クーラーも付いているし。運転しながら、自分はいつの間にか軟弱者になったものだと、つくづくと思った。
カヌーを畳み、車に荷物を積み込んで、日帰り温泉「さざなみ」に向かう。日に焼けた腕に温泉がよくしみた。シンプルだけど、割と感じのいい温泉だ。ただ、牛乳が売っていなかったのは玉に傷といったところか。眼下に犀川を見下ろしながら、しばし休憩。ここで改めて気が付いたのだけど、やっぱりダムの放流水直下のスタート地点よりも、約18km下流のゴール地点の方が、行く分、水の濁りが取れていた。流れる水の浄化作用。これで底が見えるぐらいの透明度があれば、石表面の付着藻類によってより浄化されそうなものなのにな。
当初の予定では、今回の旅は犀川を下れればそれでよしと考えていたのだけど、時間があるので、
ついでに万水川(「よろずいがわ」と読む)にも行くことにした。国道19号を戻り、明科駅前のスーパーで買い物。そのすぐ近くの、龍門淵公園のところの土手、川原がなかなかのキャンプ適地。カヌーを積んだ車数台が停まり、テントも張られていた。今夜のキャンプ地、明日のゴール地点をここに決め、スタート地点の偵察に行く。ここ安曇野は、日本の平野部の田舎の雰囲気をよく表している。でも少々車が多い。信号機には日本語の看板の他、英語の看板もあってちょっとびっくり。ここが観光地であることを示している。スタート地点の20m横にある県民運動公園には広い駐車場がある。すぐ横に安曇野わさび田湧水群の公園。日本の名水百選らしい。豊富な湧水が底から勢いよく溢れ、それはなかなかの迫力。そして澄んだ流れ。水を汲む人。野菜を洗うお婆さん。これは一見の価値ありだ。湧水地といえば、富士湧水で有名な柿田川に昔から行きたくて仕方がないのだけど、未だ訪れておらず。機会を見つけて行こうと思う。
戻る途中に大王わさび農園に寄る。駐車場の前にきれいな蓼川。その少し奥の万水川をグラブナーのインフレータブルカヌー「ホリデー」が流れていく。明日はこの蓼川を少し遡る予定だ。大王わさび農園名物「わさびソフト」を食べて大満足。着色料を入れていないのがいい。たしかにほのかにわさびの味がした。
龍門淵公園に戻ってきて、川原にテントを張る。薪を豊富に集めてきて、今夜も豪華なたき火を楽しむ。発砲酒「Slims」で乾杯!そしてチャーハン。昨日美味しかったから、今日もチャーハンになってしまったのだけど、これがまた実に美味しかった。買ってきたエビを焼き、皮を剥いて食べる。今夜も月が明るい。中秋の名月。たき火の音。虫の音。離れた橋の上を渡る車の光。時折どこか遠くから鳴り響く大きな音。ゆっくりと時間が流れていた。