釧路川源流部カヌー

出発直後、橋脚に激突する瞬間・・・

朝9時屈斜路湖畔集合で待ち合わせ。ドライスーツを買ったこともあり、嵐から三週間が過ぎ、濁りの取れた晩秋の釧路川源流部を半分泳ぎ下ろうと思っていた。それで昨日ウトロ事務所のヒライさんに電話。と、同じ事務所のチバさんも誘っていいかとのことだったので、今日は、男三人で釧路川源流部(屈斜路湖畔→ミドリ橋→美留和橋)を堪能することとなった。いい川は本当に心癒される。ちょっと寒いけど、僕はドライスーツを着るから関係ない。川沿いを車で走っていると、倒木が見えた。これは要注意だな、と心に留めておいた。
少し早く集合場所に行き、カヌーを組み立てていた。今日使用するのは、ファルトボート(アルフェック:ボイジャー450)、インフレータブルカヌー(エアー:トムキャットソロ)、ポリ艇(オールドタウン:オッター)だ。3隻で自由に川を流れる予定だ。今日の屈斜路湖は穏やかで、湖には白鳥が来ていた。グワグワとした鳴声が響く。ひんやりとした空気の中で、時折、魚が跳ね、湖面にアクセントをつけていた。
ヒライさん、チバさんが到着して、カヌーを組み立てている間、練習してもらう。それから、美留和橋に車を一台置きに行く。美留和橋では、車が何台も停まり、川の上にポールをたくさん立てて、スラロームを興じている人が多数いた。
組み立てが終わり、出発。しばらく湖でのんびり漕ぐ。ヒライさんは釣竿を出し、トローリングしていた。そして十時半に出発。珊瑚橋のところは、左側をくぐるがちょっと狭く、なれない人にはちょっと注意が必要だ。が、あまり心配せずに突入した。橋を抜けると釧路川は時速5kmでぐんぐん流れていく。今回川でのカヌーが初めてというチバさんはポリ艇に乗ってもらっていたが、無事クリアー。と、今回インフレータブルカヌーに乗ってもらったヒライさんが、橋脚に接近し、そのまま衝突!やばいな、あの衝突・・・と思っていたら、「穴開いた!!!・・・」との声と共に、コントロール不能となったカヌーとヒライさんが流れてきた。出発1分後の喜劇(悲劇)である。カヌーを岸に着け、ジャブジャブと水の中に入り、ヒライさんのカヌーを確保する。岸に上げて見てみると、約20cmずっぱり裂けていた。橋脚の出っ張った鉄筋にぶつかったらしい。これでは、応急修理が効くレベルではないなぁ・・・。
これまで、自分のカヌーで、自分が乗っているときに穴を開けたことはない。他の人が、那珂川だったり、四万十川で沈、そして船に穴が開く・・・(同一人物・・・)という悲劇は見てきたけど、自分では体験してこなかった。それはテクニックはともかくとして、船体布自体が丈夫なためだった。そして、インフレータブルカヌーの方は、フレームを伴わない一人艇としては大変重い(生地が厚く丈夫)なので、川原で引き摺っても全然平気だし、ぶつかっても跳ね返るのでまず大丈夫だと考えていた。でも、やっぱり尖ったものには弱いのが良くわかった。
そして、インフレータブルカヌーを初心者が使う時の注意点を、きちっとしつこいほど説明しなかったことを反省した。この船は回転性が高く、また安定性も大変高いので、初心者が使うには非常にいいのだが、流れを突ききって進む直進性はない。早め早めに対処して、正念場ではその回転性能を駆使してひっくり返らないようにする船だ。早め早めの対処が必要なことは長良川で身をもって体験したのだが、その説明をしっかりすべきだった。失敗だった。
一応、修理してみたが、空気が漏れる。どうしようかと一瞬悩んだが、まだ出発地点から50mも離れていないので、戻って、ファルトボートを二人艇に変更して二艇で出発することとした。組み立て直し、僕、チバさんがファルトに、ヒライさんがポリ艇に乗って十一時半に再出発。よく喋るヒライさんの口数がいつもの1/2になっていたのだが、川は美しく、きっと心は癒されていくに違いない。先ほどはやや曇り気味でもあったのだが、日が差し込み始め、気持ちがいい。「いや〜、出発が遅くなったおかげで日が差し込んで気持ちいいですねぇ」と、時々ジャブを入れつつ、ノンアルコールビールを飲みながら、フクロウパンを食べながら、楽しく下っていった。
木の葉はもうすっかり落ちていた。夏は森のトンネルなのだけど、今日は空が良く見える。空高く舞うのはオジロワシの若鳥。淵には和製クレソン(名前忘れた)がたくさん生えていた。水は澄んでいて、時たま、魚を発見しながら、蛇行した川を下っていく。
普段あまり見ない鶏冠のついた白い中型の鳥が突き抜けていった。残像を解析すると、それはヤマセミだったことがわかった。
ミドリ橋で休憩。今日の流れは速かった。ここで、ヒライさんとチバさんがチェンジ。川でのカヌーが初めてだというチバさんが一人艇で軽やかに出発。
ミドリ橋の先に、倒木があり、よくよく注意して右端を通るように説明してあった。その場所にたどり着く。その少し手前で水中の倒木に気づかずひっくり返りかけたチバさんに、再度注意を促してからそこを抜ける。振り返ると、「うわー」と言いながら木に引っかかり、転覆していくチバさんがいた。あらららら・・・寒いのに・・・
すぐに岸にカヌーをつけて上陸。船の水を出す。化繊の下着を着てもらっているので、大丈夫だという。実際、今日は南西の風が吹き、最近の中では暖かい日だった。でもきっと寒いのはわかっているので、持っていた服に加えて、僕の漁師ガッパを着てもらった。
そして、再出発。アクシデントがあったものの、楽しく下る。淵に入り、鳥を観察。アカゲラとシマエナガがいた。シマエナガは、白い頭のなかなかかわいいエナガで、月光仮面のような顔をしている。群れでわーっとやってきて、通り過ぎていった。その先には澄んだ空があった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。ゴール手前の瀬。今日の水量では、これまでの中では一番迫力のある瀬となっていた。中央やや左寄りを下ります、後ろを着いてきてください。流れの中では、とにかく前に漕ぐことが安定のコツです、と話してから突入。何でもない瀬なのだけど、やっぱり初めてだと緊張したよう。瀬を無事下り終えた後には、満足した顔があった。
ゴールの美留和橋では、ポールを片付けているところだった。上に上がり、車を取りに戻った。北西の風が吹き始め、急に寒くなり始める。カヌーを片付けている間、味噌汁、甘酒、オイルサーディン、ソーセージを食べて体を温める。片付けてから、三人で「ちゅっぷ」という川湯のカレー屋さんに行く。ここの「フクロウぱん」は美味しい。カレーは初めて食べたが美味しかった。
そして、帰ってきた。早く行って、早く帰ってくる予定だったが、結局遅くなった。家に帰ってきてから、穴の開いたインフレータブルカヌーの修理。パッチを切って、接着剤で貼り付ける。カヌーに、ごめんね、ちょっと不注意だった。でもこれからも宜しくね、と言って修理した。修理が終わってからヒライさんに直ったことを連絡。急に明るくなった声が電話の向こうにあった。
アクシデントあり、結局、泳ぎ下る余裕はなくなったけど、楽しいカヌーだった。