釧路川カヌー(塘路湖〜岩保木水門)

所長転覆後、夕暮れの釧路川を行く・・

昨晩は疲れていて、家にたどり着りつくとすぐに寝込んでしまった。ここ数日は来週月曜日の検討会の資料作りで深夜まで作業を続けていた。そうそう、誕生からの26年後のちょうどその瞬間(AM1:00)は、タナベさんと仕事の話をしていた。あ、1時過ぎてしまった、それが、26歳になったことの自覚となった。それで、朝早く起きて準備を進める。そして、朝8時に職場近くのコンビニに集合して、出発。
今日のカヌーは、所長に一月以上前から頼まれていたものだ。元部下が来るので、この三連休にいろいろ連れて行く予定なのだが、一日はカヌーをさせたいと。せっかくなので、10月から羅臼事務所に来て、僕と同じカヌー(アルフェック:ボイジャー450)を持っているワカマツさんと、10月から釧路湿原の事務所にいるツユキさんも誘うことにした。
岩保木水門にツユキさんの車をデポして、塘路湖畔のキャンプ場へ。カヌーを組み立てている間、西表で一度だけカヌーをしたことがある、というツユキさんにポリ艇に乗ってもらい練習してもらった。そして、ワカマツさんがやってきて、その後、所長と元部下のオオサキさんもやってきた。
カヌーを組み立てる。今年の6月に中古で買ったというワカマツさんの船は、それは大変ピカピカしていて、同じ船なのに、年季の入り方が違うなぁと思った。要するに自分の船は比較してみると随分ぼろくなってきているということ。まだ組み立て慣れないワカマツさんに効率的な組み立て方をレクチャー。持っているパドルはワーナーのカマノのカーボンモデルで、ブレード角度が変えられる最高級品でびっくり。いいなぁ。
十時半を過ぎて、パドリングの仕方をレクチャーしてから出発。乗り合わせは、所長がポリ艇に一人で乗り、ワカマツ艇にワカマツさんとオオサキさん、僕の船の前にはツユキさんが乗った。
みんな、はしゃいでいた。カヌーの自由さ。水面の近さ。空に舞うはオジロワシ。そして二羽のタンチョウが悠々と飛んでいく。空は晴れ渡っていた。空気は冷たいけど、穏やかな日だった。カヌーをしている人は、自分たち以外にはいなかった。
塘路湖を漕ぎ、アレキナイ川に入る。小鳥が舞う。アカゲラがいた。オオアカゲラだったかもしれない。カモがたくさんいた。秋の湿原は、葉が落ちて見通しが良かった。そこをのんびり下っていく。ツユキさんがカヌーがこんなにいいものだと思わなかった、と早くも感心している。ワカマツ艇ではそれはそれは大変会話が弾み、フフフっ若いお二人はいいなぁと、一人勝手に作ったシナリオにニンマリしながら、下っていった。
本流に合流。合流地点には青くきらめく二羽のカワセミがいた。ぐっと広くなって、流れも出てくる。ガイド付のカヌーツアーに参加すると、とにかく漕がされがちなのだが、今日は時間が許される範囲で、極力漕がなかった。パドリングしない時間に聞こえてくる風の音、木々のざわめき、水の流れの揺らぎ、そして鳥の声。これは本当に上質な時間だと思うんだ。他の方は飲まなかったが、ノンアルコールビールを開けて、いや〜いいなぁと悦に浸る。
河岸には釣り人がそこそこいた。右岸側は特別保護地区なのだが、ここにも多数入り込んでいる。法的に立ち入りが規制されているわけではないのだが、いずれ自粛をお願いするのだろうなと思う。カヌーガイドには右岸に上陸しないよう要請していて、皆さんよく守ってくれている(感謝)のだけど、釣り人はお構いなしだ。必要以上の規制は要らない。遊べる空間を保ちたい。でも、人数が人数なだけに、考える必要があるのは確か。特に春先、タンチョウの繁殖期に歩き回るのは避けて欲しいなぁ。入るなとは言えなくても、気をつけるべき場所があるはず。
今日はオジロワシをたくさん見た(8〜9羽程)。木にとまり、じっとこちらを伺う。癖毛のような頭、鋭い眼光、キリリと尖った嘴。距離10〜15mで見るオジロワシは威厳が漂っている。ノスリも2羽いた。つぶらな瞳を持つきれいな猛禽だが、オジロワシの威厳には勝てないものがある。
孤高に漕ぎ、時折双眼鏡で鳥を眺める所長と、若いお二人を横に見ながら、のんびり下る。細岡までの区間は、4月に下ったときには1時間40分で下ったが、今日は2時間20分かけた。一時を過ぎて、細岡カヌーポートに到着し、そこで上陸。昼ごはんを食べる。今日は一月前に漬けたイクラ(冷凍してあった)を持ってきたので、昼から豪華いくら丼を食べる。「いくらでも食べてください」と言おうと思っていたのだけど、所長を前に照れてしまって結局言えなかった。ダメだなぁ。いくら丼、野菜たっぷり味噌汁、温めたオイルサーディン、ソーセージを食べ、大満足。
細岡カヌーポートでは、サビキでワカサギを釣っている人が多数いた。見ていると15〜20秒に一匹(時折二匹)ずつ釣り上げていて、バケツ一杯ワカサギが入っていた。夏場はウチダザリガニを釣っている家族連れが多いところだけど、今の時期はワカサギが入れ食いだった。
再出発。少し遅くなって二時半となる。日は随分傾いてきた。四時には上陸したい。先ほどまでよりも、少し一生懸命漕ぐことにした。
塘路湖〜細岡間は4月、8月とカヌーで下っているが、細岡〜岩保木間は、4月以来だ。4月の時は雨の中、一生懸命漕いでいたので、そんなにいいイメージはなかったのだけど、今日、あらためて下ってみて、良さを痛感した。細岡までは河畔には木があるのだけど、この先は木がなくなり、湿原の中となる。
ワカマツ艇がジグザグと進んでいるので、スターンラダーのテクニックを教える。まだ不慣れだけど、割と真っ直ぐ進むようになった。
久著呂川を少し遡る。360゜の展望があった。そこには広大な湿原があった。素晴らしいなぁ。
その先は、細岡展望台から見えている蛇行区間だ。いい流れだ。双眼鏡で細岡展望台を見ると、人がいて、カメラを構えていた。手を振ったけど、彼の写真に写っただろうか。
日がどんどん傾く。湿原ははっきりとした夕暮れとなった。葉の落ちた木にとまったオジロワシの背後に沈んでいく太陽。いい構図の写真が撮れた。白い月も上がってきて、湿原の表情を豊かにしていた。
ゴールまで1km弱。このまま平和裏に終わるかと思った矢先に、アクシデントは起こった。左カーブのところで、カーブギリギリに通っていた所長が川に張り出ていた木に引っかかって、転覆!!!寒いのに・・・
急いで、横に行く。カヌーに掴まってもらう。しかし、河岸は、70〜80cm程高くなっているので、上陸できる場所がない。低体温症のことを考えると、10分も浸からせると危険だ。早く上陸できる場所を、とあたりを見るが、なかなかなかった。仕方なく、反対岸に漕いでいって、しばらく行った先で上に上がってもらった。長く感じた。5分ぐらいは水に浸かっていたかもしれない。
カヌーをそこでは上陸されられなかったので、さらに下流に行き、上陸。まさかここで転覆するとは思わなかったな。反省すべき点もあった。今回の状況下でベストな方法を取れたとは思った。それでも不備はあった。
一つは、普段はデッキに乗せているロープをカヌーの中に仕舞っていたことだった。この区間ではまず大丈夫という慢心がさせたものだった。それもすぐに出せたのだが、手を伸ばしてすぐに出せることと、出すのに10秒かかり、その後、延ばしたり、長さを調整したりする必要があることとの違いは大きい気がした。これは気持ちの問題。準備してある、ということから来る安心感。その点で、やっぱり今回は不備があった。常に最悪の事態も考えておかないと。反省。
所長の乗っていたカヌーの確保は前に座っていたツユキさんにやってもらったが、ロープを使えばもっと楽だったかもしれないと思った。ただ、体に沈んだカヌーを結びつけて漕ぐことは危険も伴うので、一人だったらやるが、今回はツユキさんが乗っていたから、結局ロープは出したものの、やめた。その判断は良かったと思った。
ゴール間近なので、再乗船してもらって、ゴールを目指した。右カーブを曲がった時に見えた地平線に沈む夕日、すっごく美しかった。10分経たずゴール。すぐにテントをたてて着替えてもらった。テントを持ってきておいて良かったなと思った。このあたりの準備は我ながらいいなと思った。
塘路湖に車を取りに行く。その間、所長とオオサキさんはテントでバーナーで暖を取りつつ、甘酒を暖めてもらっていた。戻ってきて、カヌーの片付け。そして、帰る。
帰りにみんなで回転寿司に行った。美味しかった。
ハプニングあったが、無事終わった。安全だからと慢心はいけないことを痛感した。大事に至らなくて良かった。ひっくり返ること自体は大したことじゃないのだけど、時期が時期だけに、水に浸かる時間が長くなると命取りになる。
帰ってくると流石にヘトヘトになっていて、すぐに熟睡。
最後のトラブルを除けば、のんびりとした湿原、晩秋の釧路川、その美しさは堪能できたと思う。僕にも楽しい時だった。