長良川カヌー二日目

カヌーと長良川の激しい流れ

早朝5時半前に起きた。よく寝た。昨日の睡眠不足は解消されたよう。ジャムパンを齧り、牛乳を飲み、野菜たっぷりの味噌汁をすすって、出発の準備をする。川の水位を見ると昨夕と比べて1〜1.5cmほど下がっている。ダムのない川の性質というか。地図を食い入るように眺め、今日のポイントを押えた後、七時半を過ぎて出発。少々の武者震い。そしてこの川を旅できるということへのときめき。
軽い瀬を下っていく。昨日よりも目が慣れ、石にあまり引っかかることなく下っていく。そして深い淵。底まで見え、そして魚。川を右にカーブすると日がよく当たり始める。光の揺らめき。満足感。緊張感はあるのだけど、つくづく来て良かったなぁと感じていた。
さて、最初のポイントであるコンクリート塀の瀬。川の中での人工物の恐怖。どうしてこうも危ないものばかり人は作りたがるのか。手前の瀬から既にカヌーは行き辛く、一旦下りて偵察。コンクリート塀に当たりながら沿っている流れを越えた後に、少々大きな波が続く。その下流にあるというアンダーカットロックは一目瞭然。でもそれは通常に行く限り余程のことがなければうまくかわせ、大丈夫そうだ。ルートが非常に狭いため、悩んだ末、ライニングダウンすることにした。ロープを引っ掛けて流れの中を流し、横から引っ張った。コンクリート塀の抜けたところから乗り込み、アンダーカットロックの右を通過し、先に進むが、その先の瀬もなかなかのものな気がして、再びカヌーを降りて、偵察に行く。今日は偵察の努力を惜しまないんだ。
案の定、なかなかの流れ。白く泡立つ流れを見て、ルートを慎重に考えていく。今乗っているカヌーはインフレータブルカヌーで、流れを突きっ切る直進性はない。だから大きな流れにはなかなか逆らえないのだけど、その大きな流れの中でどう岩を危険を回避していくのをしっかり考える必要がある。しばらく眺めてルートを決め、戻る。釣師三人のグループと話をする。出身はどこだと聞くので三重県だと答えると、熊野川には行ったことあるかとの事。もちろんと答える。
さて、釣師の興味津々の視線の中、出発。うまく流れを読んで無事クリアー。インフレータブルカヌーのルート取りのコツが今更ながら少しわかってきたかも。深い淵を越え、すぐに今度はオーナーばりの瀬がある。偵察。流れの中の大岩の左後方に水柱が跳ね上がっている。その水柱目掛けて瀬の左側を一直線に下る。全身に水を浴びながらも、なかなか爽快な瀬だった。その瀬が終わった少し下流で、釣り人の一人がもごもごと何やら文句を言っていた。姿格好といいあれはきっと都会の人だ。
しばらくの間、ゆったりとした淵、割と穏やかな瀬といった落ち着く区間が続く。釣り人が多くなってきた。タチタチの瀬は、流れが右の岩に向かうが、左側を強く漕ぎぬければ問題ない。新美並橋を越え、すぐに相戸の堰堤。左岸に上陸。偵察。左岸側の落ち込みの直前までカヌーで行き、それからライニングダウン。最後は荷物を少し降ろして無理やりカヌーを引き摺り下ろす、という作戦で行く。無事成功。右岸にはこれからカヌーをする人々が多数。この堰堤はどうするつもりなのだろう?スモークチーズを食べた後、出発。釣竿のトンネルをくぐっていく。
すぐ下の講和橋のところにラフティングの群れ。その下流にある三段の瀬の偵察に行き、戻ってくるとラフティング3隻が出発したので、その後ろをついていく。釣り人がいても有無も言わさず歓声を上げながら下っていくラフティングボートを見て、そのぐらいの図太さも必要かもしれないとつくづくと感じた。何はともあれ、この下流は釣り人もラフティング慣れしているだろうとのことで、あまり遠慮なく下っていけると思うとホッとした。
さて三段の瀬は、ルート自体はそんなに気を使わなくても大丈夫だが、特に三段目がなかなか大きい波が立ち、迫力があった。その先の淵で、ラフティングの人々はボートから飛び込み、はしゃいでいる。僕と僕のカヌーを見て、すごい荷物だと言い、一体この人はどこまで行くのだろう?という視線でみんな見ていたが、普通にキャンプして過ごすには、このぐらいの荷物で驚かれては困る、ひょっとしてキャンプしたことないんですか?と喉まで出かかったが止めておいた。
新三日月橋を越え、ぶつかりの瀬。ロデオプレイを楽しむ人々がいた。なかなか激しい流れだが、無事クリアー。そこから少し行った先の、円空ホールなのか、はっきりとはわからないのだけど、そのホールの手前の落ち込みで、パワフルなバックウォッシュにカヌーが回転し、そのままひっくり返って沈んだ。やられた。浮かび上がって、カヌーまで泳ぎ着き、ひっくり返して、上に這い上がる。ふぅ。一人カヌーで近づいてきて、大丈夫でしたかと、話をする。その先のホールにはたくさんのカヌーイストがいて、ロデオプレイを楽しんでいる。ここは無事クリアー。その先にもバックウォッシュの強いホールがあったが、ここは何とか漕ぎ抜けた。ふぅ。
ゆったりとした淵が続く。ただ、ただ美しいの一言。左にカーヴする淵では、ラフティングを楽しむ人々が岩に登り、飛び込みを楽しんでいた。高砂遊遊ふれあい広場(三城橋手前)からは、ラフティングの数が増え、カヌーも2隻程いた。やがて瀬に突入。1級の瀬は、右寄りを行くが、石に詰まりやすいので要注意だ。そのさきの高原ヤナ前の瀬は何の問題もなかった。郡南橋を越え、上陸して偵察。そのすぐ先の瀬が最初はケムシの瀬だと勘違いしていた。偵察を終え、突入。右側の水深があるルートを取り、淵に入ると左に頑張って逃げる。釣り人一人に文句を言われたが、気にしない。その先の淵の傍に上陸。水中眼鏡をつけて潜る。調子に乗って防水バッグにいれたカメラを深いところまで持っていったら、浸水してしまった。あらららら。慌てて水面に出し、カメラを出して乾かした。
さて、その先にケムシの瀬。ルートは左寄りをほぼ一直線に抜ける。これが偵察なしで行ってしまったのだけど、波の高さでは今回一番大きかったものの一つ。カヌーがポンポン跳ねる。目の前にそそり立つ波に、ああっ確実に沈する!と思いつつ、何とか堪えて、無事切り抜ける。いやぁ、迫力あった。結構結構。
福原農道橋を越え、下田橋までの区間は、割と落ち着いた場所。ライフジャケットを外し、水中眼鏡をつけて、カヌーから飛び込み、カヌーと一緒に流れていく。深い淵を潜ると大きなコイ。その群れ。水面近くで集まってくる雑魚。水面をゆったりと流れるカヌーに合わせて、潜りつつ流されていく。いい時間だ。
下田橋を越え、僕を眺める一家にウィンクし、そして、上陸。この先にはザンゲの瀬がある。名前からして恐ろしそう。結構長い瀬で、白く泡立つ瀬の中に岩が3点ほど。それらを全て左側から通過するようにルートを練る。最後に激しい落ち込み。なかなか。見た目の迫力はNo.1だ。ただ、流れ自体は割と素直そう。この手前までに沈することもなく、最後もちゃんとルート通りに突入できれば、何とかなりそうだ。カヌーに戻る途中、釣師のおじさんに話し掛けられる。昨年の台風の話をしてくれたのだが、道路まで水が来たという。それはすごい。その影響でこのザンゲの瀬も流れが変わったというのだが、それはよくわからなかった。ではお気をつけてと見送られる。さて、出発。
少々左側を行き過ぎたため、瀬の一番最初で石に張り付いたが、ずりずりと進み、前に行く。三つほどの岩を全て左から通る。激しい瀬を行きつつ、波を被りつつ、最後の落ち込みに備えて息を整える。あれよという間に最後の落ち込み、大きく息を吸って漕ぎ抜ける。流れ自体は結構素直で、全身に水は浴びたが無事漕ぎ抜けられた。ふぅ。
その先は、流れは速いが穏やかな、素直な瀬をいくつか越えていく。そして気がつけばゴール地点に予定している勝原橋が遠くに見える。振り返ればあっという間だったなぁ。このまま上陸するのも惜しいので、手前の右岸にカヌーをつけ、その淵で泳いだ。水深は6〜7mといったところか、底まで潜る。ニゴイがいた。もしかしたらヤゴイかもしれないけど。ウグイがいた。アユの群れもチラホラ。ちょっと遠い水面。底を蹴って水面に戻ると流れに押し流される。それを岸壁に寄り、また上流に向かって、深く潜る。アユは無茶苦茶大きいわけではないが、まあまあの大きさはあった。ラフティングボートが流れてきて、にょきっと顔を出すと、皆さん笑っていた。水中から眺めるラフティングボートのシルエット。魚たちはどういう目で見ているのだろうか。
カヌーに戻って、道具を出し、お湯を沸かしてカップラーメンを食べる。冷えた体にカップラーメンは美味い。体が温まると、また泳ぎに行った。1時間半ほどのんびりする。
最後に勝原橋の下、左岸に上陸。橋桁の下にテントを張って、荷物をデポする。着替えを持って、10分弱で着く「日本まん真ん中温泉子宝の湯」に行く。ぽかぽかと温まる。ふぅぅぅっと。温泉上がりに牛乳を飲む。美味しい。こればっかりは何度やっても美味しい。
川岸の土手を歩き、戻る。長良川鉄道の鉄橋の橋脚の一番上に多数の流木が引っかかっている。昨年の台風はここまで来たらしい。その凄まじさに驚く。
サイトでは薪を集め、川を眺める。いい川だったな。遠くに輝く雲。今日は曇りだと天気予報は言っていたのに、結局終日晴れていた。日が暮れ、染まりながら輝く雲。引き上げる釣師。たき火をしつつ、ご飯を作り、食べる。平和な、ひととき。
九時を過ぎて、眠りについた。