郡上八幡にて

郡上八幡には昔から憧れがあった。野田知佑のエッセイにも登場したし、あとNHKの番組等でもたまに放映されて、その川と接した人々の暮らしに強く憧れを抱いてきた。駅を出て、カヌーの出発点となる吉田川との合流地点に行き、テントを張り、荷物を中に詰め込んで、身軽になって街へ出掛ける。地元のおばさんにスーパーの位置を聞き、そちらに歩いていく。
吉田川沿いに流れる用水路には鮎が十匹程群れになり泳いでいる。川もこげ茶色のケイ藻が生え、流れる水は美しく、いい感じだ。街中を歩くが、ちょっと観光慣れしている雰囲気も否めない。ただそれでも街の中を流れる用水路で鯉を飼っていたりと、街には水が溢れ、水の街の情緒を醸し出してはいる。宗祇水という、日本百名水の一つであるらしい湧き水で喉を潤す。
吉田川にかかる橋から川を眺める。子供たちがよく橋から飛び込む構図があるが、その橋の上にも行く。高さ12m。よくそんなに高いところから、というニュアンスで言われるが、実際に覗いてみて大したことないことに気がつく。飛び込んだ先の水深も深いし。今の自分なら何の躊躇もなく飛び込める高さだなと思った。もっとも、小学生のときにそう感じるかと言われれば、そんなことはないと答えるけど。川を見ていると泳ぎたくてうずうずしてきた。街中への興味は薄れ、早く川で遊びたいという衝動に駆られ始める。
郡上八幡の地酒の他、数点御土産を買い、街中のスーパーで食料、飲料を買い込む。街中の古びた薬局で日焼け止めを買ったが、なかなか品数の薄い店で、店のお婆さんもよろめきがちで少々不安になる。東京の他、ギラギラとしたドラッグストアーを見慣れた目からは、それはある意味新鮮でもあった。川原に戻って、飯を食べた後、カヌーを膨らませて出発の準備を始める。