嵐の後の釧路川源流部カヌー

釧路川を行く私(撮影:ヒライ)

朝起きると、天候は回復傾向にあった。週末三連休に道東を襲った低気圧。台風ではないのだが強力で、根室支庁舎の屋根が飛ばされる、河川の氾濫、道路が寸断、堤防が剥がされる、漁船が沈む等各地で大きな被害が出た。各地の定置網にも被害が出て、定置網横に設置予定だった観測機器を十月初めにつけていたらなくなっていただろうな、とも考えてしまう。
その嵐が、まだ残ってはいたのだが、強いのは風だけで雨は止んだので、釧路川源流部(屈斜路湖美留和橋)に行くことにした。前日カヌーショップヒライワで平岩さんと話をしていて、源流部はちょっとやちょっとの雨では増水しないので、大雨の後は源流部にガイドツアーに行く事がある、という話を聞き、このコースなら大丈夫かもという期待。預けてあるカヤックを取りに行き、出発。道沿いに見える釧路川は大きく増水していたが、天気は良かった。が、天候は北に向かうにつれ、悪くなっていた。途中、平岩さんの車とすれ違う。どうやら今日釧路川源流部に行くと言っていたガイドツアーは諦めた模様。源流部も増水しているかもな、そう考えながら運転した。
手前の美留和橋で偵察。増水している。30cmぐらいだろうか?ここがこんなに増水するのは珍しいらしい。が、釧路川源流部は瀬がある川ではないので、大丈夫そうだった。
コタンの駐車場で、一つ上の先輩であるウトロの事務所のヒライさんと合流。屈斜路湖は風速10m以上の風が吹き、激しく波立っていた。その風向きは、釧路川源流部に向かっていて、入り口の珊瑚橋のところは、集まってきた追い波が、そのまま釧路川に吸い込まれていた。いや〜、すごい波風だねぇ、と話をする。
カナディアンカヌーをやったことがあって、去年はシーカヤックをやったことがある、というヒライさんだが、川で一人でカヌーに乗ったことがない。う〜ん、と悩んだのだけど、川に入ってしまいさえすれば、後は普段より増水した釧路川は、逆にフラットで楽かもしれない、そう考え、本人の意思を確かめた後、釧路川を下ることにした。
美留和橋に車を一台置きに行き、珊瑚橋に戻って準備。今回使用する船は、ダッキー(インフレータブルカヌー:エアー トムキャットソロ)とポリ艇(オールドタウン オッター)。ダッキーに空気を入れて膨らませていたら、強風のため飛んでしまった。慌てて押さえる。波立ち強風の吹く屈斜路湖で組み立ての間平井さんにはカヌーの練習してもらっていたが、全然前に進まず、風上を向いて波に揺られながらその場に停滞し続けていた。
準備を整え、正午に出発。出発時間を遅くしていたので、朝来た時よりは気持ち少しばかり穏やかになっている気がした。
ダッキーでの離岸は苦労した。風に煽られ、なかなか進まない。漕ぎ出して50mで釧路川の入り口へ。平水時でもそんなに高さのある橋ではないのだけど、この日はさらに高さがなかった。ダッキーは水面からのポジションが高いので、吸い込まれるようにして接近した橋の下を仰け反って通過した。後で平岩さんに、そんな時は橋の下流側からカヌーを下ろして、あの橋は通過しないんだよ、とコメントをもらった。橋を抜けると釧路川、快速で流れていく。
釧路川源流部は普段は澄んでいて非常に透明度が高いのだけど、この日は流石に濁っていた。河畔は色づき始め、曇天の空の下、それでも美しい川の中を流れていく。
釧路川に入ると、案の定、全然難しくなかった。ヒライさんはカナディアンカヌー、シーカヤックをやったことがある、と言っていただけあって、上手くカヤックを操って、そしてはしゃいでいた。来てよかったと思った。
釧路川源流部は、瀬は最後のところだけなのだけど、平水時も本流には瀞場がなく流れ続けるので、休憩はたまにある川の横の瀞場で休憩する。今日の瀞場は増水していて、倒木のコケの上までカヌーで乗り入れてみた。魚は全然確認できず。夏はその美しさにはしゃいで、カヌーから飛び込み泳ぎながら川を下ったから、今日それが出来ないのはちょっと残念だった。でも、天気が良く、増水していなくてももう泳がないかな。合羽を着て下ったが、濡れると寒く、これからの季節海なり川なり下るなら、ドライスーツがほしいなと思った。
さすがに嵐の後だし、時期がもう時期なので下っている間は他のカヌーイスト、カヤッカー、ガイドツアーには会わなかった。河畔の木には大きなナラタケがなっていた。鳥はカモを十数羽見た程度。今日の釧路川を下るカモは速かった。
途中、木が川を覆っている場所で、増水のため木の葉、枝をカヌーと体に擦らせる。そんな場所が二箇所ほどあった。それ以外は危ない場所(そこも大して危なくないけど)はなかった。でも、今回割とカヌーに慣れている人を連れてきてよかったなと思った。最初の計画だと、事務所職員4人で下る(うち初心者3名)予定だった。昨日の時点で二名は断った。ヒライさんは自然には慣れているから大丈夫だと思った。そして実際結構上手かった。良かった。
緑橋で休憩し、その後も流れていく。出発してしばらくしてはるか後方にちらりと見えていた青空が追いついてきて、そして追い越していった。川が急に輝き美しくなる。
秋のひっそりとした川の美しさは、何と表現したらいいのだろうか。物寂しくあり、夕焼けが良く似合う。初夏の全てが輝き始める川は、最も美しいのだけど、秋の川も悪くないな。
ゴール手前、最後にある瀬は、普段より増水していてパワーはあったが、テクニック的に大したことはなく、素直に川の左寄りのメインカレントを真っ直ぐ行けば何も問題なかった。楽しい時間はすぐに終わってしまう。ほとんど漕がず進んできたのに、午後2時には終点美留和橋。ここで上陸。車をスタート地点まで取りに行き、戻ってきてからカヌーを片付けた。
今日、カヌーが出来ないときも考え、イクラをクーラーに入れて持ってきていた。ここ一週間あまりの間に三回もイクラを漬けていた。自分で作ると売っているものの1/4以下の値段で作れるし、味がいろいろ調整できるのが楽しく美味しいところ。今日持ってきたのは昨日漬けたもの。レトルトのご飯を温め、イクラ丼をつくる。イクラも我ながらなかなかいい感じで、カヌーが終わって冷えた体にイクラが染み渡った。美味しかった。
パン屋さんに寄ってから家に帰る。体が冷えたので疲れてしまって、夜は早々と就寝。
嵐の後も釧路川の中に入ってしまえば、大したことなかった。秋の美しい川を下った楽しい一日だった。