巡視二日目(鹿之沢小屋〜永田歩道〜永田歩道入り口)

朝五時前に起きる。夜空に輝く満天の星。オリオン座があんなにも高くなった。シリウスも輝く。移り行く季節。朝はスープを作って簡単な朝食。水を汲みに行くと冷たくて手が凍えた。明るくなり始めた六時過ぎに出発。
途中沢を二箇所ほど渡渉する。花崗岩ののっぺりとした一枚岩の上を水が薄く流れ、浅い瀞となり、美しい。飛び石伝いに靴を濡らさずに進めたが、増水している時はちょっと危険かも。森が美しい。森全体が少し黒っぽいのは、杉が多いためだ。巨大なヤマグルマの木が何本も。曲がりくねりながら生えている。見上げるとハリギリの大木。朝焼けの森の中を進む。東側の斜面を行くところでは、木の葉の間から永田岳、障子岳の岩峰、岩壁が望めた。
倒木や、藪が張り出して登山道を防いでいるところは、処理しながら進んだ。多いわけではないが、登山口までに10箇所ぐらいは作業を行ってきた。大川林道からの緊急避難路との合流点の先は、この三人で歩いたことがある者はいなかったので、新鮮な気持ちで進む。西側斜面はハイノキが被っているところが結構あった。姥ヶ岩屋という岩屋は大きくてなかなか立派だった。古くは姥が住んでいたのだろうか?
登山道の脇にヤクシマツチトリモチというキノコのような赤い植物がチラホラ出てきた。地図上の「竹の辻」手前の水場は、水はあるがそんなにたくさん出ているわけではなく新鮮な水は期待しない方がいい。歩いていて、森が美しいなと何度も感じた。大きなヒメシャラ。色づき始めたナナカマド。大きな杉も何本も。西側にあるだけあって、午前中なのにどこか午後の空気が漂う。
国割岳が間近に迫り始め、七本杉にたどり着く。大きな木の上に7本(?)の若い杉が倒木更新しているところ。休憩。その先、国割岳との分岐の尾根を越え、登山道は急速に高度を下げ始める。下りだからいいものの、登りはきつそうだ。森の感じが変わった。杉がなくなり、照葉樹の森へと変化していく。
展望があまりない歩道だったが、少しぐらいは永田岳を望めるところがある。双眼鏡を使ってのぞくと、永田岳の祠のある岩屋の後ろから光が入りトンネル上に見え、その位置を確認することができた。さらに下って水呑谷は水を確認できず。ここは谷をかなり下らないと水はないのではないかと思う。ずっと下って標高670mのところで昼飯休憩。そこから下も延々と歩く。森の感じがまた変わった。奥多摩みたい、とナガオカさん。そうかもしれない。どんぐりの種類が変わった。谷筋ではオオタニワタリが木に着生している。登山道の先からシカが顔を出して、こちらの様子を伺っていた。
最後は植林地を抜けて、午後二時過ぎに無事登山道入り口に到着。意外と早かった。ここは標高約100m。随分と下った。暑い。置きに来てもらった車に乗って戻る。途中永田の集落でジュースを買う。冷えていて美味い!事務所までの道は、運転している僕以外は疲れて転寝していた。事務所に無事帰り着き、疲れた体で若干のデスクワークをした。