巡視一日目(大川林道終点〜鹿之沢小屋〜永田岳〜鹿之沢小屋泊)

朝六時半に事務所を出発した。今回は大川林道終点から永田岳に登り、花山歩道を降りてくる巡視となる。面子はフジイ君とペアだが、大川林道終点まではフカダさんに送ってもらうことになった。
天気はあんまり良くない。南海に発生した台風の影響下があるためか、いつもは天気がいい屋久島南西部が、今日は天気が優れないみたい。
県道を一時間ほど走り、その後すっかり色づいた大川林道を行く。紅葉が美しい。セレナに乗った僕は、底を擦らないように慎重に運転した。花山歩道入口でセレナをデポして、その先はサーフに乗っていく。長い林道。わずか二週間前は行方不明騒ぎであたふたしたっけ。あの時通った道を、別の気持ちで通る。小雨が降る。暖かい空気なので雪にはならないと思うが、山頂付近での悪天候を憂えた。
大川林道終点から歩き始める。今回は今月初めに買った登山靴を履いてきた。先週末の登山で破れていたところを杭に引っ掛け穴を大きくしてしまっていたから、前の登山靴は引退となった。沢筋を歩き、尾根に出て、美しい森の中を歩く。雨具を着ているので暑い。途中から急登が続く。結構しんどい。永田歩道との合流点にたどり着き、休憩。その先は現在地を確認しながら歩いていった。
鹿之沢小屋には、登山道工事を行っている人がいて、天気が悪いので一端帰ります、とのことだった。雨降る中、小屋の中で休憩。寒い。まだ十一時だが早めの昼食とした。
荷物の一部をデポしてから、雨の中永田岳へと向かう。今回も地形図上の詳細な位置を把握するためのもの。雨に濡れて持っていた地形図はすぐにボロボロになった。仕方がないので予備を出し、ナイロン袋に入れて濡れないように工夫する。鹿之沢小屋からロウソク岩展望台までは、地図上の道と実際の道が結構ずれていた。先月歩いた時に感じた地形図との不一致の違和感を思い出し、その正しさを実感した。
ロウソク岩は霧の中に姿を現し、すごく神々しかった。深山幽谷とはこのことか。屋久島は森が深い。でも山頂にたどり着くとぐるっと海が見渡せ、そこが島であることを気付かされる。今日は雲が広がり海も覆って無限にのび、花崗岩の特徴的な岩塊が霧の中から聳え、樹林限界上の笹が広がる別世界に、谷筋から雲が上がってきていた。小雨は降り続く。でもその雰囲気はものすごく良かった。
永田岳まで樹林限界上を歩き、その後焼野三叉路に向かう途中のコルまで地形図上の詳細位置を調査していった。霧の中から顔を出した宮之浦岳が美しい。久しぶりに降った雨のためか、先週末よりも緑が活き活きとしていた。焼野三叉路まで行くと時間がかかるので、そこから引き返す。雨も降っているし、フジイ君の登山靴は穴が空いて濡れているし、寒いので仕方がないこと。永田岳の山頂から事務所に電話を入れる。いつもはのんびり過ごす永田岳の山頂も、雨と吹き付ける風で寒く、さっさと下ることにした。鹿之沢小屋に戻ってきたのが14:30。寒いのでお茶を飲んでから、夕食の準備に取り掛かる。
いつも通り米を炊き、カレーを食べる。その後はいろいろつまみながら、ビールとウォッカを飲んだ。
気がつけば夕方になり、闇が迫ってきた。しっとりとした雨が相変わらず降り続く。焚き火の匂いが沁み付いた鹿之沢小屋。壁には古い落書きが残っている。その落書き記録を興味を持って読んでいく。夜七時を過ぎて、眠りについた。