休日(土曜日) Park national d'Oka スノーシュー + 駐車場の雪かき

事の始まりは、金曜日夜21時を過ぎてかかってきた電話だった。一度取りそこねて、誰だろうと思ったのだけど、その後また掛かってきて、出ると「Are you Mr. Okuda?(アーユー ミスタオクーダ?)」と聞かれたので、Yesと答えると、「(カーシェアリングの)Communatoです。明日朝7時から予約しているはずだけど、駐車場が雪に埋もれてそこに返却できなかったので、代わりにシャルブロック通りの北側に置いているので、そこで車をピックアップしてほしい」とのこと。車がいつもの場所にないことはわかったが、イマイチ正確な場所がよく分からない。グーグルマップを見ながら話すので待って、と話をして、場所を確認すると、アトウォーター通り沿いで、シャルブロック通りと交わったところの20m北側とのこと。3回ほど聞いてようやく正確に理解した。ごめんね、金曜日の夜だから酔っ払っていて何度も聞いちゃった、と話すと、はははっ、そりゃそうだよね、とのこと。ちなみにどこに戻せばいいかを聞くと、駐車場に駐められればいいけど、無理ならまた電話してください、とのこと。了解、と言って電話を切った。
その後は、明日の朝困らないように、赤ワインと芋焼酎とスコッチウィスキーで若干火照った体で、言われた場所を見に出かけた。無事発見。自分の理解が間違っていなかったことに満足して、戻って、準備をしてから寝た。
さて、翌日の今日は朝7時前に起きて、いそいそと準備を済ませ、ザックを背負って家を出る。今日は、11月に一度訪れたオカ州立公園(Parc national d'Oka)スノーシューに行く計画を立てた。引越し荷物と一緒に持ち込んだMSRのスノーシューで、公園の中を散策する予定。ちなみにスノーシューをするのは実は二回目。はじめは、かれこれ4年前に相方と一緒に出かけた、信州富士見にある入笠山。南アルプス八ヶ岳の展望に富んだスノーシューのメジャースポット。スノーシューなるものを使いこなしてみようとその直前に購入してみたものの、結局雪山は歩き(ワカンを含む)か山スキーばかりで、後にも先にも自分がスノーシューを使ったのはその時だけだった。
小一時間車を走らせて、オカ州立公園の入り口に到着。7.5ドル払って地図ももらった。天候は曇り。小雪が舞っている。10時前に出発。道路を横切って、11月にも歩いた道をたどっていく。
夏道は一つの割と幅広のトレッキングルートに、ハイカー、トレールランナー、マウンテンバイカーが混在していたけど、冬道は道が分けられていて、クロスカントリースキー用、スノーシュー用と別々のルートがあった。太いタイヤを付けた冬季仕様のマウンテンバイク(ファットバイク)に乗っている人もいた。
トレールには三角形の目印が付いていて、無積雪期はその目印が夏道の一部にしか付いていなかったので不思議だったのだけど、冬道はその目印沿いに踏み固められていて、夏道のないところがほとんどだ。なるほど、そういう意味だったのか、と感心しながら歩く。


午前中だからか人は少なめ。礼拝堂のあるピークもたどり着いた時は誰もいなくて、ひっそりとしていた。見下ろしたセントローレンス川は全面が凍りついていて、その雪の積もった川面には、たくさんのテント・簡易小屋が点在していた。アイスフィッシング用の小屋だと思う。夏場フェリーで渡っているところも、冬場は車で凍りついた川を渡るポイントがあるそうな。すごいなぁ。



その後は、さらに裏山部分(北側)に行く。礼拝堂のあるところは数名の方と会ったが、裏山部分は誰にも会わずにひっそりとした木立の中を黙々と歩いた。

裏山部分のベンチとテーブルの置かれた場所で休憩。お茶を飲み、ショートブレッドをかじった。外気温はマイナス15℃程度で、しばらく立ち止まっていると流石に体が冷えて身震いした。

ぐるっと回って再び礼拝堂のある山頂を目指す。動物・鳥は全然見当たらない。見つけたのは、おそらくリスのものと思われる足跡(というより連続した雪のくぼみ)と、キツネと思われる直線的な足跡のみ。

踏み固められてツボ足(ワカン・スノーシューなし)でもサクサク歩けそうな踏み跡を辿るだけではつまらないので、時々脱線して新雪・深雪の中をブホブホと歩く。
礼拝堂のある山頂に着くと、先ほどよりは幾分人が増えて賑わっていた。その後、人気のないスノーシュールートをたどって入り口に戻ってきた。入り口付近では、夫婦の方から、(首に下げているのは)大きいカメラですね、何か動物はいましたか?と質問されたのだけど、残念ながら何も見つけられませんでした、と話をした。ぐるりとのんびり回って、3時間弱。いい運動になった。
公園散策の様子はこちら(YouTube)

13時頃、車に乗って帰路につく。ガソリンを入れた後、14時にこのカーシェアリングの車の本来の駐車場にたどり着く。雪でしっかりと覆われた駐車場。この駐車場を復活させてやろうと思ってここにやってきた。

黙々と雪かきを開始する。車を駐めるべき部分も雪で覆われているが、そもそも論として、駐車場所と通路部分との段差が30〜35cm程あって、これでは車は駐められない。表面はふわふわとした雪だが下側はガリガリと凍りついていて、相当硬く、一筋縄ではいかない。それを根気よく除雪していった。掘り進むこと小1時間。段差部分は均して傾斜をつつけただけではなく、ブレードでギザギザの溝を掘って、タイヤが引っかかりやすくした。これなら車をなんとか駐められるだろう、とほぼ確信するに至り、近くに駐めてあった車に乗り込み、駐車スペースに向かう。
勢いをつけて前から突っ込み、段差部分を乗り切る。その瞬間、警報音が鳴り、乗り切ったところでブレーキ。なんだ、と思うと、シートベルト未着用の警報だった。なんだ、かなりどきっとしたぞ、と思いつつも、段差を越えることには無事成功。ただ、車が少し斜めになっていたので、これをせめて少しまっすぐにしておこう、と思って少しだけバックしたのがいけなかった。後輪が段差部分から下に落ちてしまい、通路部分に車が大きくはみ出した(他の車が通れない)状態になり、しまった・・・と思う。が既に手遅れ状態だった。
前に進もうにも後ろに戻ろうにも、駆動輪の前輪がスリップ。やってしまった・・・、でもここで、こんなこともあろうかと、と取り出したのが毛布。ちょうど2年ほど前にアズマさんと一緒に上越にスキーに行った際に、スタックした全く知らない方の車を大分苦労して引っ張り出したことがあったのだけど、その際、アズマさんが「こういう時のために、シャベルの他に古い毛布とか積んで置かないといけないんだよ」と話されていたのをよく覚えていて、Communautoを使う際には、必ずコンパクトな毛布を忍ばせてあった。駆動輪の下に咬ませてバックすると無事車は抜け出すことが出来た。アズマさんに感謝。しかし、これでは、駐めるは駐めたとしても、次の人が困るなぁ・・・しかも、かなり危なかったし・・・
ということで、敗北宣言を出して、Communautoに電話する。「借りた車を元の場所に戻そうとしたのですけど、まだ厚い雪に覆われていて、一時間ほど除雪を頑張りましたが、戻せませんでした。あっ、ちなみに今朝はこの場所ではなく他の場所からピックアップしました。どこに戻せばいいですか?」と聞くと、声から想像するに若そうなお姉さまが、そっか、まだ戻せなかったかぁ、じゃあ道路沿いでどこか駐められる場所に駐めて、その場所を後で電話で教えて、と言われ、車に乗って駐車スペースを探し始める。
が、土曜日の午後の時間帯は、厳しいものがあった。近所の道路を5〜6周したのだけど、駐車スペースがあっても他の車に取られてしまったり、微妙な幅で駐車が難しかったり、雪に覆われていて、駐めようものなら悲劇が待ち受けていることが明白な場所だけが残っていたり、と散々。30分ほどドライブしても、結局見つからずに元の駐車場に戻ってきた。仕方がない、こうなったら意地でも何とかしてやる。
頭の中には、コモンズの悲劇、というよく知られた単語が思い浮かんでは消えていた。環境問題を議論する際に使われる単語なのだけど、カーシェアリングという共有物でもまた別の形でそれが浮かび上がってきていて、もちろん元々のものとは意味合いは違うのだけど、このカーシェアリングを使用する人が、駐車場に積もった雪を放置し続けた結果、通路から30cm以上凍りつき、車を戻せなくなり、それでも放置され続けた結果がこれだ。こうしたものは、やはりしっかりとした管理者を置くか、もしくは、雪を除去すると言ったことに対して利用者に何らかのインセンティブを持たせるべきなのだと思う。ちなみに僕がこの駐車場に駐められているこの車を使うのは2回目。前回は全く雪に埋もれていなかったから、罪意識は全くない。ただ、単純に次の方のために役に立つかもしれないということだけで、なんとなく動いていた。
さて、反省を活かして、車をより奥まで突っ込めるように駐車スペースの奥行きを深くするように雪を掘った。その後、滑り止めに砂をまいてやろうと思い、DIYショップに行き、砂を探したところ、ICE SALTと書かれたパッケージを見て、何故か砂と塩を勘違いして、よしよしいいものが見つかった、とこれを20kg買って店を出る。撒く直前に、これ塩(融雪剤)じゃんと気がついたが、それはそれで重要(まだ25cm程の氷で覆われている)なので、これを満遍なく駐車スペースに撒いた。20kgの岩塩。世界標準だと11年分の塩分、日本人平均だと5年分の塩分だ。塩が5mm角程で、雪・氷が溶け始める前は、砂のように抵抗が増やせような気もした。
何度かイメージトレーニングを済ませた後、車に乗って(シートベルト着用警報がならないように最初にシートベルトをつけておいた後)、勢いをつけて段差を超え、奥まで入り込み、切り返して車をまっすぐにしておいた。無事成功。ほ。若干の傾斜を残してあるので、車を出す際に余程ヘマをしなければスタックすることはないだろう。

時刻は既に16時をまわっていた。二時間以上かかった。Communatoに電話すると先ほど電話に出られたお姉さまがまた担当され「結局いい場所が見つからなかったので、戻って、さらに雪かきをやって、車を元の場所に入れました!」というと、「本当にありがとうございました!」とお礼を言われる。鼻高々。「ついでに、次の方がスタックしないように融雪剤を買って撒いておきましたよ」と言おうとして、「I bought ice salt and (撒いた) it for the next user so that he/she won’t get stuck」と言おうとして、撒いた、の単語が出てこず、言葉に詰まっていたら、どうかされましたか(What? Are you OK?)と聞かれ、うやむやのまま、まあ何はともあれ、戻しておきましたから、と話して電話を切る。この時この瞬間、撒く−scatterが出てこなかった・・・そして他の単語も出てこなかった・・・こうした積み重ねが大事なんだとは思うけど。
帰宅するとどこか喉に痛みを感じて、念のため、イソジンスプレーを喉にかけて、さらに、喉に痛みを感じた際の愛用の漢方薬である銀翹散を飲んでおいた。おかげで翌朝は何も問題なかった。
人生で二回目となったスノーシュー。スキーほどの深雪走破能力はないけど、スキーとは違ってアップダウンのきついところでは使いやすそうだった。これなら10年前に行った大峰山の積雪期縦走は、スノーシューを持っていくべきだったなぁとつくづくと感じたところ。
そして、カーシェアリングの雪かきの件。こんなに苦労することになるとは思わなかった。次も受付のお姉さまに褒め称えていただけるなら頑張って掘り出します、と言いたいところだけど、率直に感じたのは、雪の時期は借りる駐車場を選ぼうということ。皆が責任感を持って、対処できればいいのだけど、そうでない場合はどうなってしまうのか。本来の意味とは違うけど、共有物の悲劇というものを感じ、ちょっとしたことではあったけど、ハードウェアの共有サービスを考える上で、あらためていろいろと示唆に富む出来事だった。