休日 Tadoussacへ 岸辺からホエールウォッチング

朝4時過ぎに起きて準備を進める。昨晩早く寝たとはいえ眠い。4:45に家を出る。まだ真っ暗。季節は随分と進んだものだ。カーシェアリングのCommunatoの車(今回はPrius C(日本名:アクア))に乗って出発。目指すは、モントリオールから北東方向に直線距離で約450km離れたところにあるタドゥサックTadoussac)という小さな町。ここはサグネ川the Saguenay river)というセントローレンス湾に注ぐ大きな支流の河口にあり、この流量豊富な川からもたらされる栄養塩でプランクトンが大発生して、それを求めてクジラが集まる場所になっている。またこのサグネ川の河口から100kmはフィヨルド地形になっていて、切り立った岸壁が続く。そうした風景が広がる場所とのこと。職場でタドゥサックに行こうと思っているのですが、と話をすると、半分ぐらいの方が、いいところだよ行くべし、ベルーガ(シロイルカ)に会えるよ、誰々が最近行ってホエールウォッチングを楽しんできたらしい、等といったアドバイスをくれた。7日の月曜日はカナダは勤労感謝の日でお休み。三日間あるこの連休を利用して、この場所を目指すことになった。
タドゥサック全体の地図はこちら。

高速道路40号に乗って進む。夜明け前だけあってまだ渋滞も始まっておらず快適に進む。ケベックティーには8時に到着。昨年訪れたモンモランシーの滝を横目に見ながら運転していたら、急に相方のことをいろいろ思い出していろいろな思いがこみ上げてきたりした。ケベックティーから先は高速道路ではなくなるのだけど、この国道138号線は、急な登り下りが続くのだけど、とても雰囲気が良くて、運転していて楽しかった。
10時を過ぎてSaint-Fidèleにあるカナダ国立公園局(Parks Canada)の案内所に立ち寄る。レンジャーの方がパンフレット(PDF)を渡してくれ、どこに行けば良いか教えてくれた。保護区の種類はいろいろ混在しているのだけど、それはともかうとしてこの先はどこでもクジラを見ることができる可能性があるそうな。ちなみにこの施設はSaguenay-St. Lawrence Marine Parkの一環。期待を膨らませつつ、さらに先へと進む。
11時前にタドゥサックに渡るフェリーポートの近くに到着。そうこのサグネ川の河口には橋がかかっていなくて、毎日24時間運行している無料のフェリーに乗ることになる。
その手前1分のところに、先ほどの案内所で訪れるべし、と教えてくれたPointe Noireの展望ポイントがあるのでそこに立ち寄る。5.8ドルを払って中へ。サグネ川河口のビューポイント。サグネ川とセントローレンス湾の狭間の波立ち、潮のざわめきが良くわかる場所だ。遠くを眺めるとクジラ観察のクルーザーやゾディアックと呼ばれる船外機付のゴムボートが集まっている場所がある。きっとクジラがいるのだろう。でも望遠鏡・双眼鏡で眺めたけれどもよくわからなかった。

さて、フェリーに向かう。お昼前のこの時間は3隻のフェリーが行き来していた。フェリー自体は15分もかからない。そしてタドゥサックに12時前に到着。

三連休かつ夏最後の連休とあって流石に混んでいる。観光案内所に寄ろうと思っていたのだけど、たくさんの車と人に気を取られているうちに通り過ぎてしまった。まずは、職場の方から訪れると良いよ、と言われたLes Dunesと呼ばれる町から2kmほど離れたところにある砂丘地帯を目指したのだけど、そこにたどり着いたのだけど、そこがデューンズなのかどうか確信が持てないまま、一旦町の方に戻る。
街中はとにかく車・人・車・人だった。ちょうどお昼時でレストランが混雑している時間だったのも良くなかったのかもしれない。500km運転してきた後に混雑した通りをそろそろと通るのは結構ストレスで、早くどこかに車を止めたく、Centre d'Interprétation des Mammifères Marinsというクジラ博物館の前の駐車場に停めると6ドル取られた。博物館には入らずに、Pointe de l'Isletという岬についている散策道を歩きに行く。サグネ川の河口部分。ベルーガはいないかと眺めたけれど、残念ながら見かけなかった。このタドゥサックは干満の差が激しくて、干潮と満潮では3−4m水位が異なるのだけど、それもあって岩場のかなり高い位置に海藻がくっついているのが印象的だった。タイドプールにはオキアミのようなヨコエビのようなものがわんさかいる。これらがきっとクジラたちの格好の餌になっているのだろう。あとはそこらじゅうにカモメがいた。

さて、たくさんの人とジリジリとした太陽にヘロヘロになりつつ、次なる場所へと向かう。向かったのは25km離れたところにあるCentre d'Interpretation et d'Observation du Cap-de-Bon-Desirというカナダ国立公園局が運営しているクジラ観察ポイントだ。この場所も案内所でお勧めされたのだけど、よくよく考えれば、カナダ国立公園局の案内所でお勧めしてくれていたのは全部カナダ国立公園局絡みのところだった!料金は7.8ドルなのだけど、Pointe Noireで5.8ドル払っているので差額の2ドルで良いという。車を停めて、500mほど歩いて観察ポイントの岸際の岩場へと向かう。そこそこ人がいて、みな眼前に広がる広大なセントローレンス湾を眺めている。この景色は素晴らしい。とにかく広大で、この大きな大きな景色の中に佇んでいる、という確かな満足感がある場所だ。

岩場に座ってクジラが現れるのを待つ。風は冷たい。寒流がこのセントローレンス湾に流れ込んでいる影響で、湾内は年間を通して非常に水温が低い。今日は波立ってもいた。カヤックが数隻浮かんでいたのだけど、ほとんどの人がドライスーツを着ていた。
レンジャーのエマさんに、今日はベルーガを見ましたか?と質問すると、うーん、昨日は2頭見たけど、今日は一頭も見ていない、とのこと。ちなみに朝早い方がいいとか、夕暮れがいいとかあるか聞くと、いろいろな要因が重なるのでいつがいいとは言えない、とのこと。僕のイメージでは、頻繁にクジラが見られるものだと思っていたのだけど、どうやらそうでもないらしい。しばらく眺めているとひょっこりとアザラシが現れた。ハイイロアザラシとのこと。

その後、1時間半ほど粘ったのだけど、みたのはこれだけ。体が冷えて寒いし諦めて帰ろうとしたところ、黒い背びれが見えた。ミンククジラとのこと。動画に納める。少なくとも1頭のクジラを見た、というのは満足なのだけど、同時にホエールウォッチングはなかなか忍耐が必要だなぁと思ったりもした。
その後は、少し北部にあるMarine Environment Discovery Centreを訪れた後、ガソリンを入れ、引き返して、L'Anse-de-Rocheというサグネ川の河口から18kmの左岸にある小さな港を訪れる。ここはカヤックの出発地点となっているとのこと。ベンチ・東屋の他、レストランとトイレもある。受付のおじさんに話をするが英語は理解してもらえるのだけど全然話せず、ジェスチャーで何とか会話をする。
その後は、キャンプ場のあるフィヨルド・サグネ州立公園(Parc national du Fjord-du-Saguenay)に向かう。入口の受付でこの公園内からカヤックで漕ぎ出せる場所はあるかと訊くと、ベルーガ保護のために公園内からの出発は禁止されていて、カヤックをしたければ(先ほど僕が立ち寄ってきた)10kmほど離れた場所にあるL'Anse-de-Rocheに行ってほしい、とのことだった。手続きを済ませ、薪を買う(朝8時か9時から夜9時まで薪を買うことができます)。そして、入口すぐ横にあるキャンプ場のサイト32に到着。テント・タープを張って一息つく。
時刻は既に夕方の17時半を過ぎていたのだけど、この後、ミル湾(Bay Mill)にベルーガを探しに行くことにした。キャンプ場からは3kmの散策道を歩いて(自転車も可能)いくことになる。急ぎ足で出かける。森の中の散策道はリスがたくさんいた。
30分ほどでミル湾の展望台に到着。美しい木造の展望台がある。数名の方がいて、ベルーガを見たか訊くと、1頭遥か遠くにいるのを見たよ、とのこと。フィヨルドの中の美しい場所だ。うっとりする風景。ただし、ベルーガは出てくる気配がない。後からやってきた若い女性三人組の一人は、どうやらベルーガは最近海に戻ってしまってもうこの季節はこの場所には来ないということが(ここにある掲示板にフランス語で)書いてあるのですけど、とちょっぴり悲しくなることを教えてくれた。

結局小一時間粘って見かけたのは1頭のアザラシのみ。日が傾く中、キャンプ場に戻る。足場らにかける。ハリモミライチョウ(Spruce grouse)のメス2羽を見た。


暗くなる前にキャンプ場に戻ってきた。
その後は焚き火を開始。ソーセージ400gは一人で食べるには少々多過ぎた。サーモンミルクスープを飲みつつ、ビール・ワインを飲みつつ、夜空を眺めながら、焚き火を楽しむ。途中小動物がやってきて、何かと暗闇に目をこらすとそれはウサギだった。10時を過ぎてピクニックテーブルの上に横になって星空を眺めていると、ペガスス座が見えていることに気がついた。この秋の四角形を見ると嬉しくなる。双眼鏡を出して、四角形の先にあるアンドロメダ大星雲を眺める。はるか230万光年先にある隣の銀河系。久々にその姿をはっきりと見ることができて、やたらと嬉しかった。
意気揚々とクジラを見にやってきたものの、1頭のミンククジラを見ただけで終わった初日が幕を閉じた。