クラッチケーブルが切れる!!

日野橋を駆け抜け、国道20号を走り、途中から東八道路に入る。車の80kmとバイクの80kmは爽快感が違うとかみ締めながら、走る。野川公園を過ぎて、信号を待ち、次に加速し始めたときにアクシデントは起こった。ギアを三速に入れようとしたら、ブチッという感触とともに、クラッチレバーを握る手に握力がかからなくなる。左手と左足の一体化した動きでギアを上げてしまうが、ガリガリいいながらギアが変わる。おかしい・・・・止まろうとしてクラッチレバーを握るがエンスト。クラッチレバーについているワイヤーケーブルが切れていた。げっ・・・・・
時刻は八時半ぐらい。少し戻ったところにガソリンスタンドがあり、話をするが「うちでは直せない」と言われてしまう。道なりに歩いていくと、反対側にオートバックスがあったので、行ってみる。近くにysp(ヤマハバイクショップ)があるが、開いているかどうかはわからないとのこと。ついでにJBR(バイク版のJAF)の電話番号を聞く。電話番号を聞くサービスの番号を忘れていたので家に電話し、番号を聞き、少しばかりの状況説明。104に電話して、ysp三鷹店の電話番号を聞く。電話するがかからない。閉まっているようだ。良くない時間だ。
バイクをもう一度観察する。クラッチのワイヤーケーブルが切れてむき出しになっている。直してみよう。そう思った。もしここがアラスカの僻地だったら、俺はバイクが壊れたらそこで人生を諦めるか?否。今まで、自転車旅行、山登り、沢登り、他、いろいろな場所でトラブルに対応してきた僕ではないか、しかもここは日本だ、何とかしよう。ホームセンター系の店が開いていればそれなりの道具と修理器具を買えるのだけど、時間がまずい。しかし、怪我の功名、オートバックスは九時までの営業だ。中にいき、ビス、ワッシャーを買ってくる。車載工具を使って工作。クラッチレバーの溝にうまくはめようと思っていたが、しかし、うまく行かず、計画を変更。ワイヤーの先をワッシャーとボルトで止め、力をかけられるようにした。解決法は他にも考えられた。しっかり直すなら、ワイヤーを切ってレバー側に延長部分を作って、引っ掛けたかな。
エンジンを切っている状態ではギアチェンジが何とかできた。よし、何とか帰るぞ、そう思い、反対車線にバイクを運ぶ。エンジンをかけ、クラッチケーブルを引っ張り、ギアを入れるとバイクが飛び出した。げっ!!!何度か試した。どうやらワイヤーを引っ張ってもクラッチが切り切らず、良くて半クラ状態のようだ。流石に諦め、JBRに電話。「すみません、バイクのクラッチのワイヤーが切れて・・・・・」話をしていくと、もうバイク屋が閉まっている時間だから家までのレッカーになるという。値段を聞くと、三万円ぐらいになりそう・・・・おいおいそんなお金は持っていないぞ。「今ないんですけど後払いでいいですか」「現金かクレジットカードしかだめなんです。後払いは出来ません」と断られる。今ないんだ、と言うと、コンビニでお金を降ろしてこいという。今もっていてお金が入っているキャッシュカードは郵貯のカードだけだ。銀行用のキャッシュカードにはほとんどお金を入れていない。「今、降ろせないんですけど、だめでしょうか?」「だめですね」「わかりました丁寧にありがとうございます」電話を切る。あ〜あ、非常時にお金を持っていない人は助けないらしい。いや、クレジットカードがあればよかったらしいのだけど。流石「Japan Bourgeoisie Rescue」ちょっと呆れつつ、厭きれつつ。ここでメラメラとアラスカ根性が燃え滾ってきた。ちきしょう、意地でも帰ってやる。
一番妥当な選択肢は、近くのバイク屋の前に停め、電車で帰り、翌日修理に出す、こと。でも、そうしたくなくなってきた。いつも遠くに出掛けるときは寝袋を持っていくのだけど、今回はたまたま置いてきた。いいだろう。何とかしよう。
歩道で少し練習。ギアを入れたとたんに動力がつながるので、信号待ちはニュートラルで、ギアをチェンジする瞬間、エンジンをふかしエンストを食い止める。ギアチェンジはだましだまし。最初は二速までで走る。交差点はエンジンを切り、バイクを降りて渡る。扱っているうちに力の限り引っ張ると何とかクラッチを切れることがわかった。そのとき、持ち方によっても切れるか切れないかということも学習した。力の入り加減が違うのだ。ただ、力の限り引っ張るので上体はギアチェンジの度に仰け反る。半クラなんて高等なことは出来ない。もし固定しているボルトが取れたらひっくり返って死ぬんだろうな。そう思った。
久我山のあたりは道が狭いので降りてひたすらバイクを押す。雨がぱらつき始めて憂鬱だ。高井戸から高速道路沿いに進み、国道20号に合流。この辺は通学路だったから覚えていて、閉まっているが明かりのついているバイク屋を見つけ寄った。店員さんは親切だった。しかし、ここはホンダの専門店。今は直せない。反対車線にあるyspに置いていって、翌日修理に出すことを勧めてくれた。そしてそこの人に電話もしてくれる。時間ももう22時50分。置いて帰るなら今しかない。
が、何とかやって見よう、バイクが動かなければ押して帰ろう、そう思った。店員さんありがとう。井上さんだったかな。話をしていると勇気が、より湧いてきた。何とかやって見る。
その先は、少しばかり扱いの慣れてきたバイクで、四速まで上げ、走る。クラッチ操作のために仰け反るから、まるで馬に乗って鞭を振り上げている気分。クラッチはそれでも二回に一回ぐらいしか切れないから、苦労しながら進む。タクシーの運転手の目が冷たい。警察に合わないことを祈りながら進む。交差点は歩いた。新宿はひたすら歩いた。新宿駅前の坂が苦しい。バイクは100㍑ザックをくくり付け、荷物をたっぷり入れてある。新宿を過ぎ、クラッチ操作に四苦八苦し、交差点はバイクを降りて歩き、だましだましゆっくり走りながら、何とか後楽園にたどり着く。水道橋の駅から、学校近くの交差点までは歩いた。そして0時前に学校に着く。助かった。本当のバイク修理はこれからなんだけどさ。
朝から食べたのは、おにぎり一個、アンパン、チョコ一箱。お腹が空いてコンビニに行き、冷やし中華を買って、食べて、イトーと話をしてから、寝た。
疲れた。