空知川

On the river 祝福の時

朝五時に起きて、出発の準備。六時半前に宿舎を出た。加賀谷先生が起きてきて見送り。バイクを駆って、根室本線幾寅駅の近くの道の駅まで行く。そこでカヌー他、いろいろ下ろして、巨大なザックに詰め込み、それを背負って、幾寅駅まで1㎞ほど歩いた。
幾寅駅は、映画「鉄道員(ぽっぽや)(高倉健主演、広末涼子も出演)」のロケ地。展示物やら、ポスターやらがある。列車に乗ったのは僕一人だったが、幾人かやってきて電車をフィルムに収めていた。
一駅乗って、落合で下車。そこから歩いて、空知川の川縁に立つ。本当はもう少し下流からスタートとガイドブックには書いてあったのだけど、その少し上流のスラロームカヌーの国体コースも下りたいと思い、少しだけ上流に行く。なかなか激しそうな流れ。水はきれいだ。今回のカヌーは先日購入した初使用のインフレータブルカヌー。空気を入れて形を整えるホワイトウォーター(激流)向けのモデル。どんな漕ぎ心地かもわからないが、とにかくクラッシュ&バーン(当たって砕けろ)で突っ込んでみるのである。
漕ぎ始めて、いきなり瀬に入っていった。回転性能は高いが、水を突き切って進む漕ぎ心地はない。1mほどの落ち込みに漕ぎ始めて三十秒後に突っ込んだ。沈せずにうまくクリアーする。
いい川だ。淵を覗くとアメマスか、ニジマスか、はたまたヤマメか、よくわからなかったけどたくさん泳いでいた。その後も忙しく瀬が続く。
いい気分だ。漕ぎ始めて五分後には新しいカヌーの操作にも慣れ、河畔林に囲まれた美しい川を軽やかに下っていく。夏の渇水で、水は多くないはずだが、ダッキー(インフレータブルカヌーの俗称)なら問題なくスルスルと滑っていった。
これまでカヌーをしてきたけど、日本の川は中下流部は汚れている場合が多いから、きれいな上流部でもっと遊びたいと考えていた。もう一艇のカヌーは、中下流部、湖、海ではいいのだけど、ホワイトウォーターは厳しい。その点このダッキーはいい感じだ。ポテンシャルの高さを感じる。うまく使い分けできれば楽しそうだ。水のきれいなこんな場所でカヌーをしたかった。何だか嬉しくて、はしゃいでいた。
ちょうど半分ほど来た所に、噴水の瀬と呼ばれる落ち込みがある。気がつかずに偵察もせずにそのまま突っ込んでしまった。白く泡立つ水が渦巻く。U字型になっていて、真ん中を突っ込めば問題ないのだけど、左寄りを行き過ぎた。カヌーが右にツイストしてひっくり返りそうになったが、何とか耐えて、無事クリアー。ホッと一息つく。
カヌーを停めて岸辺に目をやるとたくさんの稚魚や、カジカの仲間が泳いでいた。
下っていくと一隻のラフティングのボートに追いついた。ガイドの人と少しだけ話をする。その下流にカヌーが引っかかりやすいポイントがあるのだけど、そこは無事クリアー。カヌーの上に寝そべりつつ、あとはのんびり行く。
いい天気だ。暑い。かなやま湖の手前で上陸して、バイクを取りに行った。カヌーをたたんで、演習林の宿舎に戻る。加賀谷先生と山辺ドライブインのラーメンを食べ、その後荷物を積みなおして、演習林とようやくおさらば。今夜は西神楽にあるキャンプ場に行く。
キャンプ場に着き、テントを張ってから食材を買いに行く。戻ってきて、ポトフスープを作る。炊事場所は、炭の点け方も知らない若者数名のグループと、あと、最近の若者は火のつけ方も知らない、と横の若者グループを見て話をし、こうやって点けるのだよ、とお節介をしていたおじさんおばさん数名のグループがいた。僕は、栃木から来て子供が生まれたため今回が最後のツーリングだ、と言っているおじさんと話をしていた。
スープができるころ、昨年このキャンプ場で知り合った御姉さまがやってきた。同じセローに乗っている。北海道には毎年ツーリングに来ている方。今度また行きます、と言っていたら会いに来てくれた。旅先で知り合った人と再び旅先で出会えるのは楽しい。飯を食べながら、いろいろ話をして、二時間ほどして、滞在している別のキャンプ場に帰っていった。
夜、そのキャンプ場の中にあるホタル池に行く。たくさんのヘイケボタルがきらめいていた。暗闇にチカチカと淡い黄色とも緑ともとれる光が点滅する。本当に美しい。
明日もカヌーに乗るので、10時を過ぎて早々と寝た。