美瑛川

美瑛川を行く

朝、五時半に起きて、出発の準備。キャンプ場からすぐの所に西神楽の駅がある。そこに行き、そこから電車に乗って、美瑛駅に向かう。朝は霧がかかっていて、少しだけ肌寒かった。
美瑛駅で下車。川まで1km強の距離を歩く。カヌーはアプローチが辛い。車が二台あれば楽なのだけど、そうしたカヌーをするのは僕はまだ当分ないだろう。
美瑛橋で川岸に近寄る場所を探すのだけど、なかなか見つからず。橋の100m弱上流の、堤防から河川敷に降りる道の付いている付近の林の中にわりといい踏み跡。川沿いに河原はなく、林の中でカヌーを膨らませて、浅瀬に下ろして、荷物を積んだ。出発。
水は白濁している。上流部で硫黄が入っているのが理由という人もいる。少し浅いところもあるが、いい感じである。川は森の中を進む。面白い瀬が適度に続く。気持ちがいい。川縁に牛の群れがいて、水を飲みつつ、こちらをじっと見ていた。
川の中央に張り出した枝からつるが伸びていて、見るとサルナシだった。まだ青い。熟していれば喜んで食べたのに。サルナシは美味しい果実だ。小さいキュウイフルーツ。味はサルナシが上。
ダッキーは今日も軽やかに流れていく。安定性は非常に高く、バランスを保ちながらだと立つことも出来た。行く先に不穏な瀬を感じると、立って確認してみる。
のんびりと流されていくと、堰堤が出現。ガイドブックには手間で上陸。ポーテージ(カヌーを降りて担いで運ぶこと)。下流の橋から再出発が良い。と書かれている。が、下流の橋まで500m以上ある。そんなに歩くのは面倒だ。ということで、堰をライニングダウンすることにする。堰の左端にカヌーをつける。ここで吸い込まれないように注意。左の方はカヌーをつけることはできるが、カヌーを下流に落とすことは出来ない。その後、カヌーを降りて、ロープをつけ、水の流れる堰堤上を歩いて進み、そこからロープでカヌーを横向きに堰の1/5まで引っ張る。その後、カヌーだけ堰から落とす。そして、一ヶ所だけ水面にコンクリートが出ているところをうまく伝って降りて、堰のバックウォッシュに引っ張られて堰に張り付いているカヌーを引っ張り出し、そこからカヌーに飛び乗り、何とかクリアーする。あまりまねしないことをお勧めする。川慣れしている人だったら平気です。
堰の下流すぐのところにはカワセミのつがいがいた。
時折、川の上には牛さんのほんわかした香りが漂ってきた。
流れは少し穏やかになり、のんびり流されていく。途中カップルのフライフィッシャーがいた。流され続けて、のんびりのんびり進む。でも瀬は所々あって、飽きる感じではない。ずっと行くと、気がつかない間にブロックの堰堤のところに来ていて、慌ててカヌーの向きを変える。ここはカヌーを堰堤の上に引き上げて担ぎつつ、引きずりつつ、ごりごり下ろす。その下をしばらく行くとまた堰堤があったが、ここは開いていたので、偵察してから、慎重に堰堤の開いている部分を進んだ。
その後は空が広くなったが、瀬は所々にあって、ちょっとばかりヒヤッとするものもあった。
新開墾橋で上陸。ここから1km強歩いて、西神楽の駅に行き、バイクを回収。そしてカヌーを折りたたむ。いい天気だ。肌がじりじりと焼けた。
コンビニでカヌーを宅急便で送り、キャンプ場に戻って、荷物をまとめる。昨年会ったゼネコンに勤めるおじさんがいて、覚えていたので少し話をする。昨年、雨の日にこのキャンプ場のあずまやで、昨夜会った御姉さまと一緒に、このおじさん、その奥さん四人で四時間余りも話していた。このおじさん、このキャンプ場によく現れるらしいが、昨年のあれで味を占めたに違いない、と昨夜話していた。
バイクを駆って、美馬牛に向かう。途中、美瑛のパッチワークの丘を走ってきた。美馬牛には友人お勧めのオープンサンドの店「ラマルタ」に行く。オープンサンドは大きかった。後で聞くと、フォークで切って食べるらしいが、僕は食べ方がわからず、とにかく口を大きく開いてかぶりついた。時間が時間だっただけに、客が他にいなかったのが幸いだ。なかなか美味しかった。
今夜のフェリーに乗るから、苫小牧に向かうのだけど、一度通ってみたかった夕張国道、夕張経由で向かう。少々遠回りになるけど。中富良野でガソリンを入れ、飛ばす。夕張国道ではほとんど車にあわなかった。快適な道を疾走する。夕暮れが美しい。森が美しい。夕日に輝く夕張岳も無茶苦茶美しかった。
夕張では、直売所の一つで、夕張メロンを買う。ミニチュアブルテリアを飼っているのだけど、その名前がメロンで(メスである)なかなか愛想よくてかわいかった。犬をふにゃふにゃとなでていると、店のさっきメロンを売ってもらったおじさんがやってきて、犬好きなの?という話から始まり、犬の話をする。
暗くなった道を走り、苫小牧港に着く。フェリーに乗る前はやたらと眠かった。埠頭では見送りの人が集まり、出航したフェリーに向かっていろいろ叫んでいた。オカリナで「蛍の光」ぐらい吹けば、より情感漂ういい出航になったかもしれない。
月が美しく、昨晩会った最後のツーリングおじさんが、今日月夜の羊蹄山を眺めながら最後のツーリングの最後の夜を締めくくる、と言っていたのを思い出す。いい月が出ましたね。何だかほのぼのとした気分になって、部屋に戻って、寝た。