勘七ノ沢

朝、五時に目が覚める。二時間ほどしか寝られなかったが、割と熟睡できた。簡単な朝食を済ませ、準備する。天気予報は晴れだったが、空にはまだ雲がかかっていた。ここで初めてダブルエイトノットを教える。今回二人だけで、僕が先に登ってしまうと面倒を見る人がいなくなるから、この結びだけは絶対に確実に覚えてもらわないと困る。何度もやってもらった。他には、セルフビレイと、登るときの手順を説明。一通り準備を済ませて、六時過ぎに出発。入渓。
勘七ノ沢は、一昨年前の6月に来て以来だ。あの時も沢の初心者を連れて行ったっけ。歩いていくとすぐに堰堤。左から越えて、またしばらく歩くと、小草平ノ沢が分かれ、そのすぐ先に、F1(5m)が早速登場。前に比べて水量は少なめ。威圧感はない。結構ビビッているちょろさんにいろいろ登り方を説明し、その後取り付く。久々の沢だから、緊張するかな、と思ったけど、楽勝だった。上からロープを出して、確保。慣れないと初めの一歩が難しめなのだけど、案の定、そこで随分苦労していた。
すぐに出てくるF2(7m)は右のもろい岩を登る。上から確保して、後続を上げる。堰堤を巻いてしばらく歩くと、F3(8m)。滝は簡単だけど、取り付くまでのへつりが楽しい滝だ。ここはロープは出さずに登る。登る途中、ちょろさんは初心者らしく地図を落としてしまったので、拾いに戻ったりもした。
F4(2段15m)の前で休憩。プロテクションを出すのがちょっと面倒な滝だ。いろいろ悩んだのだけど、下段と途中のトラバースは何もなしで、上段だけ確保することにして進む。上段の手前でハーケンを一本残置して、セルフビレイに使ってもらう。上段はホールド・スタンスは豊富だけど、傾斜が割とあって、高度感もあるので慣れないと気をつけた方がいい。上に登ってから、ロープで確保。思っていたよりもスムーズに片付けることが出来た。
堰堤をいくつか越え、F5(10m)に到着。記念撮影。巻いて上からロープを出して、ちょろさんには直登してもらう。登り甲斐のある滝だ。ここにきて、ほっと一息つく。
その上流は、小さなゴルジュ帯と、登って楽しい小滝と。規模は小さいのだけど、何度来ても楽しいところだ。途中からちょろさんに先に行ってもらう。果敢に小滝に挑戦していたけど、一ヶ所ずり落ちて釜にはまっていた。残念、でも愉快。晴れてきて、陽が差し、気持ちがいい。ヤマツツジのピンクが山の斜面に映え、新緑の中でアクセントとなって、美しい。ふと、かつて別の沢で見たツツジと滝とを思い出し、彼(彼女?)らは元気だろうかと、歩きながら感慨にふける。
1010mのあたりで水が涸れ、水汲み。少し上のほうでは鹿が一頭死んでいた。1060mの三俣で真ん中の沢に入り、その先の涸棚(丹沢は滝のことを棚という)で、懸垂下降の練習。初めてのちょろさんは流石にぎこちない。ハーケンの打ち方もちょっとだけ教えた。
沢はだんだんとガレてきて、ゆっくり急な沢筋を登っていく。詰めの最後は笹原。陽はさんさんと照り、気持ちがいいの一言。花折に無事到着。寝っ転がる。沢タビを脱いだら、三月に痛めた右足人差し指の爪が剥れてしまった。沢の道具を片付け、靴を履き替える。
せっかくなので、塔ノ岳まで足を延ばす。たくさんの人。逃げない鹿。ちょろさんが捕まえたニホントカゲ。まだ雪に覆われた富士山の頂。見下ろせば、遠く相模の海が見える。山の裾野から緑が帯になって頂を目指している。山頂に着き、オイルサーディンをバーナーで温めて食べる。チャーハンのおにぎりも食べた。美味しかった。
下りは長い階段道を下りる。暑くて、かき氷が食べたいと言っていたら、花立の小屋でかき氷が売っていた。感動。一杯400円もするのだけど、思わず買ってしまう。かき氷食べるなんて何年ぶりだろう?美味しかった。
ゆっくり下り、沢筋で休憩し、ちょろさんがヤマカガシ(一応毒ヘビ)の子供を捕まえ、降りてきた。毒ヘビは掴んだことがなかったので、掴んでみたが、やっぱり恐れてきただけに、僕には恐ろしい。入渓点に着いて、無事終了。
帰りのバイクの運転は、無茶苦茶眠かった。信号待ちでリポDを少しずつ飲み、騙し騙し帰ってくる。研究室に寄り、いた人々と話をして、机に座るともう力尽きて、三時間ぐらいパソコンの前で寝てしまった。起きてバイクに乗って、家を目指す。風呂に入ってから机に座っているといつの間にか寝てしまい、後でよろよろと起きて、布団に包まって寝た。

タイム(沢の中だけ)
6:00@入渓点 〜7:05@F4下 7:15〜7:30@F4上 〜8:25@F5上 8:40〜9:35@1010m 水汲み 10:00@涸棚(懸垂下降の練習)〜11:05@花折