釧路川カヌー

朝五時半に起きて準備をする。今日はカヌーショップヒライワの平岩さんと釧路川を下る日だ。平岩さんガイドのツアーに同行させてもらえることとなった。朝からカヌーを組み上げ、平岩さんの家へ。カヌーの積み込みに手間取り、5分遅刻してしまった。車で岩保木水門に行き、そこに車を置いて、カヌーも平岩さんの車に積み替え、塘路湖へ。道すがら、パトカーのよく待機している場所の情報などを聞く。塘路湖のユースホテルで、川崎から来た一家5人と合流。そして塘路湖畔に行く。カヌーを下ろして準備をする。木立の中からアカゲラの木を突く音が響く。
この場所はカヌーのスタート地点として最適。トイレもある。他のガイドさんも来ていてカヌーを下ろしていたが、赤ちゃんを背負ったお母さんも一緒に車の屋根からカヌーを下ろしていて、びっくりした。強いなぁ。
さて、出発。平岩さんの奥さんに見送られて岸を離れる。時刻は9:30.平岩さんの乗るカヌーは3人乗りカナディアンカヌーを二隻つなげたもの。6人が漕ぐと思いの他速くてボーっとしているといつの間にか置いていかれるので、割とまじめに漕いだ。塘路湖の水は茶色く濁っている。これは釧路川の本流にに行っても同じだった。雨が降ったため、水位は高く、岸際の植生は沈んでいた。鉄橋と道路をくぐってアレキナイ川に入る。流れはあまりない。岸際には柳の花が咲く。それ以外に華はない。川の色も岸際も茶色。空も曇っていて、灰色だった。しっとりとした空気の中を20分ほど漕ぎ抜け、釧路川の本流に合流した。両サイドに釣り人の影。川幅は20〜30m。茶色く枯れた荒涼とした中を漕ぐ。流速は遅く、危険性は何もない。
岸際にエゾシカの遺体があった。それに集るカラス。エゾシカの遺体は3体目撃した。河畔林の中に大きく舞う鳥はオジロワシ。下る間に7〜8羽見かけた。
淀みでカヌーを停め、船の上でお菓子を食べてしばらく休憩。オジロワシが対岸の木にとまっていて、それを双眼鏡を使ってデジカメ写真に収める。
蛇行を繰り返しながら川は流れる。時折魚が跳ねる。河岸にはハンノキがたくさん生えている。昔はなかったのだとか。乾燥化が進んでハンノキ林が広がっているという話は聞いていたが、こんなに広がっているのかとやや驚き。空は相変わらず曇天。その中を吹き抜ける風。ちょっと寒かった。
細岡駅の近くに上陸して休憩。駅まで100mほど歩けばトイレがある。先ほどあった別のガイドの方が、タープを張って昼食の準備をしていた。コールマンの上にはダッヂオーブンが置かれていた。なかなか贅沢なガイド川下りもあるものだと思った。ダッヂオーブンを見ると思い出すのは大学1年の秋、ワンゲル+元ワンゲルの面子5人でMOCの一泊二日の那珂川のカヌーツアーに参加した時のこと。晩飯にダッヂオーブンで調理された鶏の丸焼きが出てきて、美味しくて感動した。いつかまたああいう料理を食べたいものだ。気の合う面子でね。みんな元気かな?
再出発。雨が降ってきて、寒い。スプレースカートを付けた。ちょっと暖かくなった。
増水しているので、カヌーで湿原の中の沼地に入ることが出来た。場所は久著呂川の合流点。水平的な景観が360度広がる。この湿原は確かに経済活動には役に立たないかもしれない。でも、ここにはどこか優しさを感じる雄大さと美しさがあった。
下っていくと、右岸の草原の中にタンチョウのつがい。営巣中だろう。二羽動かず遠くからこちらを窺っている。パドルを漕ぐのをやめて、静かに通り過ぎる。荒涼とした湿原の中で、そこには暖かさがあった。
タンチョウを目撃してから200mほど下ると右岸には釣り人が多数。この部分は釧路国立公園の特別保護地区。立ち入り規制を法的に位置付けている訳ではないのだけど、カヌーツアーのガイドさんには右岸側に立ち入らないように要請がかかっているという。釣り人は河岸を歩き回り、ゴミも多々残っていた。これでは野生動物も出てこないし、タンチョウにも影響必須、という話も納得できる。平岩さんはタンチョウが上流で営巣中だから、これ以上上に行かないように、と釣り人に声をかけていく。
釣りは楽しい。きれいごとの自然保護よりも、そこにあるものを食べ、楽しむこと、それが何より自然を護りたいという気持ちにつながるものと考えている。が、自粛すべき部分もあるとあらためて思った。
雨の中、12:45に岩保木水門に到着。カヌーを引き上げ、解散。カヌーを車に積んで、家まで戻る。家の前でカヌーを分解して、片付け、シャワーを浴びて、飯を食べ、ふぅ〜と一息ついた。久々のカヌーだったし、朝から準備で大童だったから、大した距離じゃないのに、やたらと疲れてしまった。区間は短いとはいえ釧路川にとりあえず行ってみて、そこで見たのは湿原の持つ野性の雰囲気と、現実だった。