択捉島

朝から今日も非常にいい天気だった。フジタさんがカラフトマスをルアーで二匹釣り上げていた。体表にはサケジラミという寄生虫が付いていた。今回船医として参加したアラカワ先生は、イトウを釣りたくて根室の病院に今年やってきたという釣好きな髭もじゃのお医者さんだ。国後島と昨日の択捉島では全然釣れないと嘆いていたが、今日はカレイを何匹か釣り上げ、ご機嫌だった。船からは排泄物はそのまま垂れ流される。船の周りを見ていると、時折船から排出されたとけたトイレットペーパーと茶色い物体を見ることが出来た。
昨日は気がつかなかったのだが、海岸に砲台があることに気がついた。現役なのかどうかはわからなかった。散布山を双眼鏡で眺めると登山道が確認できた。山としてもいいだろうし、絶好の山スキーフィールドだと思う。
はしけがやってきて、乗り込む。まずは小中学校へ行く。学校の廊下は広かった。入ってすぐのところには水槽があってグッピーが飼われていた。資料室を見学、説明を受けた後、今度は対話集会。
双方の意見交換。
混住の話が出た。そんなに簡単なものじゃない。でも希望も感じた。
でも、無理な気がした。
素直な気持ちはそうだった。
開発の話も出た。そして事前に聞いてはいたが、モスクワから700億円千島列島に投資される話は島民の方の中でもホットな話題だった。
ミカミさんの話は感動的だった。進駐してきてからの話。そこには夢があった。
学校での対話集会の後、今度は別飛にある水産加工場に行く。ギドロストロイという資本の巨大な水産加工場。デンマークアメリカ(だったと思う)から輸入した加工場設備。たくさんのカラフトマスが処理されていた。オフィスはすっごくきれいでびっくりした。相当自慢のオフィスらしい。
移動して、昼食会場へ。川の側のテントで魚スープを食べる。カラフトマスがたくさん遡上していて、写真に収める。放置された魚網に引っかかってもがいているカラフトマス2匹を、魚網を切って逃がしてやった。海辺には牛がのんびりと過ごしていた。
それから孵化場に行き、見学。そして指臼山に行く。ビザなし交流で指臼山に行くのは初めてらしい。ダケカンバ、そしてマツ(エゾマツ?グイマツ?)が広がる。広い未舗装路の高度を上げていくと素晴らしい展望ポイント。森が眼下には広大な森が広がっていた。
ここがなくなるのは嫌だな。残したい。そして、この森を自由に旅したいな。
その後、地熱発電所建設地へ。峠を越えると反対側の海が見えた。温泉がわいている。人が浸かれるように巨大ドラム缶風呂があった。横の川はぬるい温泉。少し歩くとボッケ(泥温泉)があって、ボコボコ沸いていた。泥は洗顔にいいみたい。少し取って手に塗ってみた。なかなか素晴らしいところ。豊かな自然、豊かな温泉。ここに地熱発電所が出来れば、途中の道沿いには送電線が並ぶのだろう。悲しいかな。道路工事の赤土を渓流に流さないような配慮は全然なさそうだ。救いは、開発されているところがまだ少ないということ。
でも、それが現実だった。
行政府前に戻ってきた。しばし川を眺める。飛び跳ねるカラフトマス。そこで泳ぐ少年。
「エトロフ」という紗那のカフェで夕食会。ビール、ウォッカを飲みながら、ジャガイモ、魚、イクラを食べた。美味しかった。
船に戻る。あっという間だったな。はしけ船から見る夕日。カモメの群れ。きれいだったな。
三日月が洋上に上がっていた。何枚も写真に収める。
やがて錨を揚げ、出港。名残惜しくて、ずっと甲板にいて、ずっと眺めていた。
夜は、またビールと日本酒で宴。
夜風を切りながら、船は南へと進んでいった。