7月

台風の七月。台風により、いろいろ話が動くこととなる。

7/1 起きると九時前。すごく中途半端な時間。どうするか悩んだが、4月に行ったもののまったく展望のなかったモッチョム岳に再挑戦することにした。セミの鳴声が響き渡り、登り口からしばらくの間は風がなく気温が高く、汗が滴り落ちる。登り二時間弱で山頂に付く。山頂からは素晴らしい眺め。凡そ900m下に見える町並みは、手が届きそうで、届かないここは、別世界。吹き抜ける風が気持ちよかった。山を下り、原漁港に寄った後、家に帰る。それからは原漁港へ戻ってきて、釣りをする。屋久島に来てからルアーフィッシングに手を出そうと思った。キャッチ&リリースには基本的には興味はないので、ルアーと聞くとそれだけで毛嫌いしていたのだが、海のルアーフィッシングは様々な魚種を釣り上げることが出来、食べる獲物を獲るためにやるものだということを知り、急に興味しんしんになり、釣りの本を読み漁り、道具を五月末に買い始めた。が、所詮ルアー初心者、全然釣れない。かつて、父、僕ともに渓流釣りをまったく知らないまま渓流釣りを始めて、初めてアマゴ(渓流魚)を僕が手にするまでに三年ぐらいかかった。あの時の再来か?(笑)この日は結局種類のよくわからない魚をソフトルアーで釣り上げた。種類がわからないのでどう調理したらいいものかわからず冷凍庫に入れて、今も凍り続けている。
7/3 田代海岸ウミガメ調査。夜中十二時半頃まで調査をして、3頭上陸し、どれもタグが付いていなかったので、タグを取り付けた。静かな浜辺で産卵するカメは神秘的だった。少しでもその保護に役に立てばと思う。
7/6 調査研究の中間報告で、東京に出張。屋久島を朝一で出ても、霞ヶ関に着くのは昼の一時半過ぎになる。久々吸う東京の空気。午後、打ち合わせの後、夕方中間報告。時間がない中、これまでの研究成果を発表する。はったりでも何とかなると思えるようになったのは、去年の釧路での経験だと思う。釧路の時にお世話になった方々が来ていて、ご無沙汰しています、元気ですか、と話をする。夜は、馬車道でみんなで飲んだ後、人数を絞って近くの店に行く。みんな元気そう。みんなに会えたのが嬉しかった。それぞれの地で仕事をしているけど、それぞれの場所で頑張っていこう、そう思った時だった。
7/7 せっかく東京に来たので、水族館に行った。八景島シーパラダイス。かなり期待して行ったのだけど、展示が古くて、あんまりよくなかった。残念無念。ただ、イルカと鰯を一緒に入れている水槽があって、イルカの捕食の様子が見られたのは面白かった。東京に来たついでに、キャンプ道具の店に行き、クライミングロープをはじめ各種道具を(ほとんどクライミング用具)を大量購入。5万円も使っちゃった…でも大満足。
7/8 KUA `AINAクアアイナ)のアボガドバーガーを食べる。1030円もするハンバーガーだが激ウマだった。値段相応の味に納得。午後の便で東京を発ち、屋久島に戻ろうとするも、屋久島地方大雨(一時間に60〜80mm程降っていた)のため、鹿児島空港で足止めになった。仕方なく、空港ホテルに素泊まりで泊まることにしたが、高かった…少しでもお金を浮かせるため、近くのスーパーで惣菜を買ってそれで晩飯とした。雨降り頻る中、明日の朝一便の飛行機が飛ぶことを祈った。
7/9 朝一便が無事飛んで屋久島に戻ってきた。ほ。
7/11 7月10日の夜というか、7月11日の早朝というか、深夜1時から4時過ぎまで田代海岸ウミガメ調査。時折スコールのような激しい雨が打ちつける中待ち続けたが、結局一頭も上陸しないまま、調査を終える。朝三時に食べたおやつが体にしみわたり、疲労感だけが残った調査だった。
7/13 大型で非常に強い台風4号が接近。中心気圧が930hPaとか言っている。ウミガメの卵が流出している、との連絡を受け、ARに現場を見てきてもらった。この時期のこの規模の台風。いろいろ心配になる。帰宅してから庭においてあるフォールディングカヤック2隻を家の中に入れ、一隻のポリカヤックをブロックでしっかりと固定した。強まる風雨に嵐の接近をひしひしと感じた夜だった。
7/14 屋久島は台風の影響下にあった。屋久島の各地で電気が止まったとのこと。幸い安房の町は大丈夫だったが、PHSアンテナがやられたようで、エアエッジを使っている僕はネットにアスセスできなくなった。手元の気圧計がどんどん下がり、969hPaまで下がった。こんなに下がるのは初めて。昼、ギシギシいう音が外から聞こえ、見に行くと車を停めている前のアルミの蛇腹門が強風で引き千切られていた。ついでに電気メーターのケースが破壊されていた。やられた。夕方、勢力圏から抜けた後、町を見回りに行く。思ったほどの影響はなかったが…
7/15 台風から一夜明けた屋久島をバイクで回った。田代海岸はハマユウの群落の中まで波が来たよう。40cmほど砂がなくなっていた。永田浜はごっそり砂がなくなっていた。びっくりだ。西部林道は通行止め。今回の台風は砂を持っていく台風だったよう。夜、ヤマサキ夫妻と散歩亭で飲んでいたら(カクテルばかり飲んでいたら三人で18,000円!!)、県の方もやってきて、話をしていたら、縄文杉登山の主要入り口である荒川登山口に至る町道荒川線の入り口で道路崩壊が起こり、その対策を考えているとのことを聞く。これは大変、と翌日一緒に見に行くことになった。
7/16 昨日の居酒屋での話を受け、午前中非公式に県の建設課長と現場をあらかじめ見に行った。道路の端からごっそり落ちていた。昨日この道路を通り過ぎて荒川登山口に行ったガイドがいるとかいないとか。どういう対策がいいか、話をした。午後は原漁港にヤマサキ夫妻と行き、カヤックでトローキ滝まで行く予定だったが、波風強く、原漁港出口ですぐに引き返し、その後はいそもん採りとシュノーケリングに興じた。ここで僕のオリンパスの防水デジカメに水が入って壊れた。ショック。買ったばかりなのに、ちゃんとパッキンに気を使っていたのに…メーカーに修理依頼を出すことにした。
7/17 関係機関と町道荒川線の道路崩壊、ヤクスギランドでの道路崩壊の確認・現地協議に行った。今後の対策を話し合う。しばらくの間はシャトルバスになるか…いっそずっとシャトルバスになれば…
7/18 屋久島のメジロはシマメジロと呼ばれ鳴声がいいことで有名だがそれゆえ密猟もあった。それで関係機関でその対策を考える事前打ち合わせを行った。夕方、熊本からきたアンドウさんと一緒に飲みにいった。まんてん橋から見た夕焼けが美しかった。
7/19 アンドウさんと島を一周し、屋久島の鳥獣問題を話した。いつもたくさんいる西部林道のヤクシカは、殺気を感じたのか一頭も現れず、ヤクシカがたくさんいて大変、という現実を知りたかったアンドウさんは肩透かしをくらうこととなった。
7/20 マイカー規制の作業部会。でも全然駄目だった。参加者はその関係団体の代表としてちゃんと意見をまとめてきているのだろうか?毎回個人の意見を言って話を延ばされるのは…屋久島はこんなのばかりだ。がっくり。夜は午前二時まで田代海岸でウミガメ調査。近くのライダーハウスからやってきた観光客三名がライトをちらつかせながらやってきたので、ライトを消すようにお願いする。ウミガメは光には敏感だ。ただ一般の予想と違い、音には非常に鈍く、少々音をたてたところで逃げるものではないのだが、騒ぐと必然的に音以外の要素でかく乱するので、ウミガメは静かにしないと逃げます、と騒がず静かにしていただくよう、話をしている。嘘も方便。7/3に上陸してタグをつけた個体が再上陸、そして産卵。嬉しいな。やたらとキラキラと夜光虫が光る個体もやってきて、甲羅を触ると海藻がびっしりついていた。屋久島夜の浜辺のきらめき。
7/21 昼前に起きた。これまで行っていなかった白谷雲水峡に行くことにした。原生林歩道、白谷山荘、もののけの森、太鼓岩、戻って弥生杉、と回った。屋久島の気軽な散策コース+縄文杉登山は、若者が多い。日本の山に登っていると中高年の登山客が多くて、若い子には全然会わないのだけど、その点屋久島の山は若者が多くて嬉しくなる(何にだ?)。夜、豪華絢爛なサンドウィッチ(KUA `AINAのサンドウィッチをイメージ)を作る。美味しく出来て嬉しかった。
7/22 長らくしていなかった沢登りに挑戦。淀川登山口から淀川小屋まで行き、そこから淀川を遡行。ザックには新しく買ったロープが入っている。長い瀞とナメが美しい。腰まで、時には胸まで水に浸かりながら、はしゃぎながら歩く。そうそうこれが沢登りの楽しさだった。ただ寂しいのは屋久島の川の上流には渓流魚がいないこと。もっとも小杉谷には放流された奥多摩産のヤマメがいるのだけど。しばらく何の心配もない瀞+ナメを行くと、やや狭くなりへつる場所が出てきて、その後川幅が狭まり、ミニゴルジュ帯となる。最初のチョックストン滝は左から高巻いて、ゴルジュの途中に下る。その先はゴルジュの中をトラバース、まったくの初心者にはプロテクションを出した方がいいかも。僕も久々の沢登りとあって、沢タビのフリクションへの自信が持てきれず、ちょっと体が強張っていた。そこにはポッドホール。そして沢が大きく二つに分かれる。倒木を越えながら進むと垂直の滝。これは手前の藪を右から巻く。その先、胸まで使ったり進むと、大岩をくぐって先に、大きな倒木の左にちょっとテクニカルな小滝のシャワークライム。出口は岩が挟まり潜り抜けるのだが、最初のバランスのとり方に少しだけ工夫がいる。それを過ぎると割と大きい滝。最初の一段目だけとっつきにくいが滝の左側からバンドと潅木を利用して登り、その上は傾斜が緩くなって簡単に登れる。やがて沢は湯泊歩道と合流してゴール。後は登山道をさくさく下った。久々の沢登り、お手軽コースとは言え、やはり単独行は緊張するもの。でも楽しかった。
7/23 親戚の伯父さん伯母さんがやってきた。昼休みを少しズラして港に迎えに行く。仕事に戻ってからは、ウミガメの卵保護のための看板を設置しに行った。関係団体・機関と合同で総勢25人で柵を設置したが、炎天下の浜辺で汗が噴出し、すぐにへとへとになった。これは辛い。終わってから食べたかき氷が美味しかった。夕食は家近くの焼肉屋に行く。我が家にはエアコンのついている部屋が一つしかないのでふすまを開けて、続きの部屋とつなげて、三人でその部屋に寝た。
7/24 台風四号で全面通行止めになっていた町道荒川線は、今日からシャトルバスが動くことになった。伯父さん伯母さんは今日は縄文杉を見に行くということで、ちょうどいいタイミングだった。朝四時前に起きて、シャトルバスの発車するところまで送っていく。伯父さん伯母さんは夜はウミガメの観察会に行った。朝三時半に起きて、深夜十二時過ぎまで起きているのだから元気だなと思った。僕は翌日の巡視のため、夜九時前に早々と就寝。
7/25 事務所五時発で宮之浦岳巡視。今日はK中学校教諭のシントモ先生が、パワーアップ研修という地域の団体の仕事を体験するという中学校プログラムに則り、巡視に参加。ナガオカARと三人で登る。暑かった。とにかく暑かった。台風後の山は、補修されているところもあり、思ったよりも荒れていない。思うことはいろいろあったのだが、それは良しとして、夕方、山道を20km歩いてヘロヘロになって事務所にたどり着く。夜は伯父さん伯母さんと居酒屋に行った。
7/26 昨日に引き続き、シントモ先生が来て、今日は海岸巡視に行く。天気が良くて無茶苦茶暑かった。いろいろ解説しながら屋久島を一周した。
7/27 シントモ先生研修最終日。早朝四時に集合し、屋久杉自然館前の登山者指導(駐車場整理)を行う。夜、打ち上げ。カラオケでわいわい騒いだ。
7/28 日中、永田の四ツ瀬にシュノーケリングに行った。サンゴは少ないが、白い砂の中に岩があって、そこに群れる魚、サンゴ、砂地に揺れる水面のきらめき、となかなか素晴らしいところだった。時間を忘れて海に浮かぶ。夕方から浜田代海岸ウミガメタグ確認調査の今期最終調査にいった。ウミガメ調査に参加した全員が参加してノンアルコールビールで祝った後、調査開始。無事ウミガメも上陸し、調査も終えた。この浜がずっと残って欲しいと思う。
7/30 龍神杉歩道がようやく供用開始となり(これまでも歩くことは出来たが…)、その安全祈願祭に出席した。神主がハチに刺されるハプニングがあったものの、祈願祭は無事執り行われた。この歩道の先にある様々な思惑。それは魅力でもあった。いろいろな想いを抱きながら、その供用が始まった。