西部地域:半山トレッキング

事務所に行き、地図をコピーして、事務補佐の方と長話(人工衛星は何故落ちてこないのかから始まり、軌道エレベータ、果ては相対性理論まで)をしてから、出発。バイクを駆って住んでいる安房の反対側にある西部地域の半山まで行く。手元には某エコツー会社の案内図。それを参考に1/2万5千地形図にルートを書き込み、それを参考に行くことにした。バイクを停めて入り口を探す。大体この辺りだろうというところから林道を外れ、海を目指して尾根筋を降りていく。屋久島の照葉樹の森。下草はほとんどないので、どこでも歩ける。
踏み跡がどれか全然わからなかったので、テキトーに進む。どこでも歩けるのだけど、進む先に覆いかぶさる枯れ枝を見ていると、踏み跡から外れているのだなと感じる。地形図とGPSで確認しながら進むと、住居跡に出る。ガラス瓶。たくさん飲んだんだろうな。石垣と、若干の割れた陶器の破片と、ガラス瓶と。この場所にどんな生活があったのだろうかと思う。空は曇りなのだけど、雨はまだ降ってきていなかった。誰もいないひっそりとした照葉樹の森の中に一人たたずむ。
予定していたルートの北側を進み、海岸に出た。花崗岩の巨岩だらけの海岸を、テトラポットを飛び移る感覚で移動する。何でもないことなのだけど、これが楽しい。台風のうねりが屋久島には来ていて、激しい波が打ち付けていた。遠くにはどんよりと霞む口永良部島。小川の河口に到着。その少し遡ったところにある名前のない巨岩(かなりでかい)に回り込んでよじ登る。眼前に広がるは、海から標高1000mを越える中央部まで途切れることなく続いている森。森の中に花崗岩の白い岩肌がアクセントとなり、その景観を豊かなものとしている。世界遺産に登録されたのは、この森の連続性が高く評価されたことが大きい。実際には林道が横切っているのだが、一車線の林道であるので林道の上は樹冠に覆われ、遠くからだと望見できない。そして眼下には白く波しぶきを上げる海。花崗岩の巨岩の海岸だが、南に見える小さな岬は堆積岩で出来ていて、これも海岸景観にアクセントを加えている。
気温が高く、喉がすごく渇いていた。水筒の水を1/4ほど一気に飲み干す。しばらくのんびりしてから、別ルートで林道まで戻る。帰りの森の中も歩きやすかった。シカを何頭も見る。全然逃げていかない。そんな場所。下草は全然ない。シカたちは何を食べているのだろうと思う。そして元々下草が少ない照葉樹の森の下草をシカたちが食べつくしてしまったのだなと思う。最近はサルの下にシカがいて、サルが落とす葉っぱや葉を食べたサルの糞をシカが食べているという話も聞く。なかなか林道以外に来る機会のなかった西部地域なのだが、今日は半日とはいえ、森の中をじっくり歩き回れて良かった。
林道にたどり着き、バイクを停めてあった場所に戻る。そこから南下して屋久島を一周する形で家に戻ってきた。屋久島でサーファーを見ることが多い浜は中間浜なのだけど、今日は巨大な波が立ち(浮かんでいるサーファーから見て2.5〜3m以上)、横目に見ながらサーファーたちのときめきと不安を感じていた。途中から雨に打たれ全身濡れ鼠になる。家に帰り着いてシャワーを浴びてから、食材を買いに近くのスーパーに行った。