田貫湖へ〜研修初日

品川で新幹線に乗り込む。本を読みたかった。カラマーゾフの兄弟を読み終えてから、やたらとゲーテファウストを読みたくなり、品川駅の本屋さんで探したが上巻が見つからなかった。仕方がないので新書を買って読み込む。トヨタの上司は部下にどのような話をしているか、といった内容の本であっと言う間に読み終わったが、非常に示唆に富んでいて僕には大変面白かった。この本に出会っただけでも研修に来た意味があったかなと考えたりしていた。三島で新幹線を降りて電車で富士に向かう。昨年度の知り合いの人とすごく良く似たシルエットの方がいて、今静岡にいるはずだったと思い、ひょっとして電車に乗っていますか?と久々メールしてみたのだけど、後で人違いであることがわかった。富士からはさらに乗り換え特急に乗った。ザックを背負った人が増え始め、きっと同じ研修を受ける人なんだろうなと想像する。富士宮からはバスに乗った。気がつけばバスの中は同じ研修を受ける人たちでいっぱいになっていた。
今回受けることになったのは、自然解説指導者研修という研修の中の「専科研修企画担当者コース」というもの。研修参加の希望も何も出していなかったのだけど、行ってこいとの指示を受けて参加することになった。企画の立て方を学ぶ研修となる。
さて、田貫湖に到着。大学三年生の時に一度学生実習で訪れたことがある。あの頃はデジカメなんかを持っていなかったから、残っている写真はそんなに多くないので、そういえばこんな場所だったっけ、と思いながらバスを降りる。
受付までの時間、田貫湖ふれあい自然塾の中を見学する。
13時から受付が始まり、13時半前に開講式が始まった。知っている人は一人もいない。気楽でいい感じだ。
まずアイスブレイキングの時間があった。お互いの緊張を解きほぐす時間だ。じゃんけんをして負けた人が勝った人の後ろに連なり、研修でじゃんけんが一番強い人をまずは探す「じゃんけんイモムシ」、その連なった人間が輪になり、今度は誕生日順に並び替えたりしている。「フォレストガンプ」と名づけられたものも面白かった。6名ほどで輪になり、鳥の羽(今回はアトリだった)を上から落として、息を吹いて、床に置いたお皿の上に載せるというもの。大の大人(?)が立ったり、しゃがんだり、寝そべったりしながら、フーフー息を吹きながらはしゃいでいる。ワカイズミさんがフーフーと吹き続けて息が尽き、その後近づいてきた羽をうっかり吸い込んで飲み込んでしまった(胃まで行ってしまった)のは、みんな爆笑を超えて流石に心配になった。
それから野外に出ていくつかのプログラムをこなす。示された自然物と同じものを探してくるもの、その後、自然物をモチーフにした「家紋」作りをやった。
僕は綿毛をモチーフにして「秋枯冬舞春待紋」を作った。その気持ちは「枯れてしまった後、冬空に舞い、春を待つわけですが、その冬空に舞う綿毛の美しさが気になりました。ひょっとしたら春を待って風の吹くまま彷徨っている時が、一番きれいなのかもしれません」なーんて説明をしてみたりする。
いろいろやっていると確かに面白い。ちょっとした工夫。家紋作りも、日本には自然物をモチーフにした様々な家紋があって、同じように家紋を作ってみましょうというもの。そこには自然の中で気になるものを探し、自然物の造形への観察力があり、そしてそれを抽象化して表現していく楽しさ。
夕方からは講義だった。その前にゴールモニタリンググループというものを作る。研修の一日が終わるたびに集まり、その日得たもの、わかったこと、疑問などを話し合うグループだ。ここは属性が同じような人が集められた。僕は同じ国の職員であるアリヤマさん、ヒラノ君と同じグループになった。ちなみに今回の研修は、3人ほどが自然保護官、7名ほどがアクティブレンジャー、残りの18名ほどが県、市町村、団体の方々だった。
今回の研修では、事あるごとにいろいろなグループが作られた。それはいろいろなところの方がいた。そしてグループが変わるごとに話をする人が変わり、それが飽きなかった。でも、一日を振り返るゴールモニタリンググループだけは変わらずで、そこには同じ属性であるゆえに共通して把握したいことがいっぱいあって、話をして、意見をもらい、そのうちさらにアイディアが思い浮かんで為になった。
夜は懇親会。一番南から来たということで乾杯の音頭を取らせていただく。休暇村富士のバイキング料理に舌鼓を打ち、ビールを飲み、いろいろ話をした。
講義室に戻ってきてからも情報交換会。意外や意外、加賀谷先生を知っている人がいて、びっくりした。世の中狭いなと思う。僕の持ってきた三岳を喜んでもらったのは幸い。やっぱり屋久島、というと食いつき具合がどこか違う。そして、高知から来た方が栗焼酎ダバダ火振を持ってきてくれていたのが嬉しかった。懐かしい味を頂く。忘れもしない、このお酒を飲みながらどこかちょっぴりほろ苦さを共有した大学院生の日々。
日付が回ってから解散となり、立派なコテージで眠りに付く。布団がふわふわで気持ちよかった。