尾瀬 中ノ岐沢小渕沢 沢登り

先月久しぶりに一緒に沢に行ったミズサキ沢登りを企画してくれたのでついていくことになった。場所は尾瀬の中ノ岐沢小渕(おぶち)沢。遡行図を見るとナメ滝の続く穏やかな癒し系の沢とある。楽しみなのだけど、金曜日の夜に出発ということから、仕事の状況次第では参加できない可能性も高かったので、参加できるか出来ないか、かなりヤキモキしながら日々を過ごすこととなった。今週に入りようやく大丈夫そうだということになって、遅ればせながら火曜日にようやくエントリーしたのだけど、その直後に金曜日の夜は仕事でかなり忙しくなりそうだということが発覚し、さらに気を揉むことになった。
行けないかもしれないけど最善は尽くそうと思い、パッキングは早々に済ませて、出発当日の金曜日は職場にザックを持っていく。今晩遅くなるか否か、そのことに最大限神経を集中させる。来た仕事は遅くならないように、受けずに済むものは受けないように調整した。また受けざる得ないものはとにかく急いで処理した。夕方5時ごろはとにかく緊張感が漂っていた。
しかしながら、結局のところ、奇跡的(?)にもそれほどヘヴィーなものにはならず、参加出来ることになった。職場で着替えて荷物を職場にデポし、新宿に向かう。そして、22時新宿発尾瀬行の夜行バスに乗った。

今回のメンバーは、ミズサキ、先月一緒に沢に行ったまりりん先月一緒に沢に行ったツージーさん、去年2回一緒に沢に行ったカナハナさん、今回沢デビューを果たすガッキーさん、そして僕の計6名で男女比1:2という構成。ちなみにミズサキは、彼の奥様から「女性も参加するのか?」質問され、女性も参加するが青州さんも参加するとその時想定された事実を淡々と回答していたようなのだけど、僕が参加できなければ男性は危うく(?)彼一人になるところだったので、彼と奥様の関係を考えてもつくづく参加できてよかったなと思った。
さて、夜行バスとあってバスは休憩時間を多く取りながらのんびりと進む。2シートがペアになった一列4シートなので結構狭く眠れない。やっぱり空気枕を持ってくるべきだった。途中であまりに眠れないのでビールをあけて飲んだ。3時を過ぎて眠くなり、うとうととしたと思ったら、3時50分にバスは尾瀬の入口、大清水に到着した。
流石に眠いがしょうがない。バスの外に出るとひんやりした空気。ザックをバスから下ろし、パンを齧り、トイレを済ませる。見上げると満天の星空。ペガスス座から、おうし座、オリオン座まで揃っている。スバルとアンドロメダ大星雲がぼんやりと輝き、そしてアルデバランの横には木星が、オリオン座の左には明けの明星が輝いていた。こんな美しい星空は久しぶりだ。先日購入したばかりの単眼鏡、モノビットを取りだし、アンドロメダ大星雲に向ける。そこには銀河の形がはっきりと見て取れた。続いてすばるを見る。輝く星団の青白い星の群れ。口径の大きな双眼鏡のように明るくは見えないけど、それでも感動。買ってよかった。そして、東の空がうっすらと青味を帯び、夜が明け始めた。
まだ暗いが4:20を過ぎて出発。奥鬼怒林道をテクテクと歩く。20分ほど歩くとヘッドランプが必要なくなった。途中、小さなスクーターに乗った釣人が追い抜いていく。シカ除ネットが林道沿いに延々と張られている。左手にあるオモジロ沢の滝が美しい。小渕沢合流点で10分ほど休憩。それから傾斜のきつい左の林道に入る。すっかりと明るくなる。5:45に小渕沢出合に到着。沢の装備を整え、6:15に出発。今回が初めての沢登りというガッキーさんからは緊張感が漂っている。
出合は貧弱な様相。少し歩くとすぐにナメが出てくる。この沢の岩盤は赤茶けている。寒いというほどではないが涼しくて、また沢を流れる水は冷たかった。15分ほどで小滝とナメが連続する場所(YouTube)に着く。美しい、そして心が癒される。その先の3m幅広滝は、皆が左から巻き気味に登る中、僕はど真ん中を水を浴びながら登ったのだけど、登り終えると手とズボンにびっしりと(30匹ぐらい)芋虫型の水生昆虫が付着していた。なんだったかな、これ、と思いながら流れの中で手を洗う。3mスダレ状の滝は、先頭を行ったツージーさんは右壁を、僕は真ん中を登った。他のみなさんは思い思いの場所を登る。そしてその先6mスダレ状の滝が出てきた。時刻は6:40。幅広のきれいな滝だ。
ミズサキが左から巻き気味に登り、ロープを出します、とのこと。待っている間に石をひっくり返すと中から4cmほどのサンショウウオが出てきた。かわいい。ツージーさん、ガッキーさん、カナハナさんとロープを付けて登る(YouTube)。ロープを付けて初めての滝登りとなるガッキーさんもサクサクと登っていた。その後まりりん、僕とロープなしで登る。若干ヌメリはあるけれど、ホールド・スタンス豊富で快適に登れる滝だった。
7時に6mスダレ状の滝の上を出発。沢のリーダーを目指し目下修業中のツージーさんがちょくちょく先頭を行くようになる。小滝・淵・ナメをサクサク進む。淵ではミズサキが黄色い声援の元、泳ぐ。寒いのに。僕はラッコ泳ぎしたら濡れないよ、と言ってラッコ泳ぎしたのだが、結果としてはずぶ濡れになった。寒い寒い。女性陣はみな右岸を巻いている。
7:25に15mスダレ状滝に到着。ミズサキが水流のすぐ左側を登る。簡単だけど、ロープを出します、との合図。待っている間は寒くて雨具を着た。ツージーさん、カナハナさん、ガッキーさんとロープを付けて登る(YouTube)。滝がきれいで高さもあるので登っている様子は非常にさまになる。最後にまりりんと僕がロープなしで登った。中間部で少々水を浴びるのと、高さはあるので、初心者にはロープ確保が無難なところ。でもホールド・スタンスは豊富なのでこれも快適に登れる滝だった。7:50に15mスダレ状滝の上を出発。
しばらく歩くと日が沢の中にも差し込んできた、寒かったので嬉しい。8:05に日の当たる川原で休憩。空を見上げると高いところに筋雲がかかっている。秋の空だ。パンを齧る。美しい尾瀬の森。トンボがたくさん飛んでいる。その中で沢登りをしているという幸せがあった。
10分ほど休憩して出発。8:25に多段の滝に着く。絵になる風景だ。この沢は広く開けた解放感はないけれど、一つ一つが割と絵になる滝が多くて、しかも簡単に登れることもあって沢の魅力に触れたい初心者にはいい沢だと思う。下段の3段5mは簡単。上段の2段10mスダレ状の滝も簡単だが、ここはミズサキとツージーさんがロープなしで上がって、ツージーさんの確保のもと、ガッキーさん、カナハナさんが滝の中央部をロープを付けて登る(YouTube)。階段状で何も難しくはない。ただシャワークライムとなるので水量が多い時はど真ん中を行くのは厳しいのかもしれない(写真)。滝の上で確保の形を解説する。僕が部活で習った確保の形は、一種独特の部分があった。それに気がついてから、一般的な確保の形とどっちがいいのだろうといろいろ考えた時があったのだけど、結論から言えばどちらにもメリットがあるので、両方覚えておけばよりよい安全な確保ができるのだと思う。そのあたりのことはいずれしっかりとペーパーにまとめたいと思っている。
相変わらず快適なナメとナメ小滝が続く。6m滝は右壁を行くが、ここはツージーさんが先頭を行き、ミズサキが登った後、念のためお助け紐で手がかりを出した。その先のゴーロを少し歩くと、3条10m直滝が見えてくる。9:25。
この3条10m直滝は、遡行図やネットの記録ではことごとく左岸を巻いているのだけど、近くに来て見上げると、結構斜度はきついものの、割とホールド・スタンスがあり、登れそう。せっかくだから登りましょう、とミズサキと僕で結論が出たので、ミズサキがリード、僕がビレイヤーで、滝の中央やや右寄りの凹部分に取りつく(YouTube)
下段の凹部分の乗り越しにややてこずっている。水を浴びながらずりずりと登ってせり出した岩の下に着く。その先の上段は、滝をくぐり右に行くルートと、左に延びるバンドを伝って左から登るルートがある。ミズサキは前者を行く。滝をくぐる(というより水を浴びる場所)では女性陣から黄色い声援が飛ぶ。その先の直登ルートにはスタンスがなくて、落ち口には直接は抜けられないので右に巻き、1段上がり、笹の根を掴みながら左にトラバースして落ち口に至る。無事リード完了。結局一か所もランナーを取らずにミズサキは登って行った。勇気あるなぁ。
2番手はまりりんが行く。上段の左ルートにトライしてもらうかと思っていたが、バンドに移る手前が斜めっていてしかもかなり滑っていて怖いとのことで、ミズサキと同じ右ルートで辿ってもらう。笹の根トラバースは力技+ロープがのびていて落ちると振られるので、登り終えたまりりんに、落ち口に直登ためのお助け紐を出してもらった。
その後、雨具を着込んだツージーさん、カナハナさん、ガッキーさんと続く。みな下段の部分でテンションをかけていた。上段は力技なのでそれぞれに気合を入れながら気合で登り切っていた(YouTube)
最後に僕が登る。下段は簡単。上段はやっぱり左ルートが気になったのでそちらに行く。バンドに移る手前の一歩は、岩が全体的にかなりヌルヌルしていてそれが斜めになっているので、少し怖い。ただ、左足を置くいいスタンスがあったのでそれに左足を乗せて、やや甘めのホールドをしっかりと握りながら体重を移動させる。バンドに乗るところでロープで引っ張られ過ぎて動けなくなり、ロープを緩めてもらった。その後は簡単にバンドを辿って左から巻き登る。滝の上からはいい眺め。巻くつもりの滝を直登できたという確かな満足感に浸りながらロープの片づけを手伝う。楽しかった。10:15過ぎて3条10m直滝の上を出発。
その先は、平凡なゴーロ歩き。だんだんと木が被ってくる。地形図がやや分かりにくいが1850mの下あたりで1:2程度で合流する支沢のところで水を汲み、それから支沢に入る。水が涸れ、最後はわずかに左にトラバース気味のササ藪漕ぎになるが、支沢に入ったところから5分ちょっと、10分も行かないうちに登山道に出る。地形図上の1860〜70m付近か。そこから5分も歩かないうちに小渕沢田代に到着。素晴らしい天気。のどかな湿原。平和な風景がそこにはあった。湿原の中の池の傍の木道で大休止。11:10。沢装備を解き、軽く昼食を食べた。湿原の先の遠くには、日光白根山、四郎岳、燕巣山が良く見える。トンボが舞う。風は爽やかだが、日差しはきつかった。他の人は数名程度行き来しただけ。尾瀬にも静かな場所はあるよう。30分休んで11:40に出発。尾瀬沼へ。
尾瀬沼に来るのは7年ぶり。久々見た尾瀬は、いろいろ参考になるものがあった。まずキャンプサイトが木のデッキの上にあって、それが一張りずつ分かれているのは面白いと思った。人が多いところだとこんな整備の仕方もあるのだと。また小屋の前には靴洗い場があるのも面白かった。缶ビールを買って尾瀬沼ほとりでいただく。五臓六腑にしみわたる。久々見た尾瀬沼は美しかった。アサギマダラが舞う。アオサギ尾瀬沼の流れ込みで獲物をうかがう。燧岳の山頂には豆粒のような人が見えた。尾瀬尾瀬たる理由がわかった気もした。
12:35に出発。モクモクと黒く登る入道雲に焦りを覚えつつ、木道を黙々と歩く。三平峠を越え、サクサク下る。岩清水で小休止。湧水は美味しかった。途中の木道が壊れていたので、簡易補修。頻繁に山に入っては登山道の補修をやっていた屋久島時代が懐かしい。13:50に林道に出て、14:30に大清水に到着した。カレーライスを食べてから、15:00のバスで戸倉へ。そして温泉に入ってホッと一息。風呂上がりには缶ビールをいただく。今日の沢も無事終わってよかった。
尾瀬にいる職場の同期に連絡すると家にいるとのこと。僕は家が戸倉にあると勘違いしていたのだけど、鎌田というところにあるらしい。時間がないので会えなくて残念と思っていると、手を振るよ、と言ってくれたので、16:20発の新宿行のバスに乗ってから家付近を通過するとバス停にいた!バスも停まってくれて久々の再開。10秒ぐらいだったけど、嬉しかった。お土産もありがとうございました。
帰りのバスは爆睡だった。関越道が渋滞のため、予定より50分遅れて20:50に新宿駅東口に到着した。ここで解散。みなさまお疲れさまでした。
小渕沢は初心者を連れて行っても大丈夫。滝は慎重に登れば問題ない。大きく開いた爽快感はないけれど、ナメもきれいだし、滝も登れるものばかりで、最後の滝を登れたのも面白かった。そして詰め上がった先に静かな湿原があるのも素敵だった。企画してくれたミズサキありがとう。
今シーズンこれまで行った沢は、かつて訪れたことがある沢ばかりだった。自分としては選りすぐりの沢ばかりで、また懐かしさを感じ、さらに変化を見つけて楽しいのだけど、初めて行く沢はやはりまた違った楽しさをひしひしと感じるものだった。今シーズン、まだ2か月は沢に行けるので、時間を作って面子を集め、沢に行ければと思っている。

※遡行図は「東京起点沢登りルート120」を使用


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)