丹沢 源次郎沢 沢登り

源次郎沢に沢初回者2名を連れて行くことになった。先々月、先月と一緒に沢登りにいったミズサキと一緒の部屋にいる面々が「沢登りをやってみたい!」と話をしていて、そのためにミズサキが沢を企画したものの、残念ながら天候が悪く一度流れることとなったのだけど、今後のお散歩観察会(沢登り企画)への参加確率を増やすためにも、早めに1本行ってもらいたいと思っていたので、僕が今回の沢を企画することとなった。
沢は初めてです、という人は、見ていて本当に不安な方から、初めてと言いつつかなりしっかりしているな、と思う人まで様々。一度一緒に行くと、今後とりあえずどの程度の沢になら連れて行ってもいいか、大体だが感触がつかめるもの。来週以降も天気と仕事の都合と面子の都合がつけばいい沢に行きたいと思っているところだったので、沢登りをやりたい!というこの2人の様子を、まずは早く見てみたかったのだった。
が、企画が成り立つかどうかは微妙なところだった。まずは面子がうまく集まらずヤキモキした。さらに天気予報が良くなかった。面子は、ぶっちーが来てくれることになったので、解決した。天気は、前日の昼過ぎまでは午前曇、午後雨の予報だった。夕方になり、午前晴れ、午後雨の予報に変わった。最近は山に行く前には、数日前から天気予報と実際の天気を雨雲レーダーを見ながら時折チェックしているのだが、その天気予報とレーダーの傾向からして、これなら雨が降らない確率が結構高いなと踏んだこともあり、夕方行く決意を固めた。
源次郎沢に行くのは、2回目。初めて行ったのは、もう12年前のこと。当時大学の部活で、沢登りリーダーの養成を受けていて、毎週末沢に出かけて、ロープの出し方、支点の取り方、ルートファインディング等の練習をしていた。養成を受ける者は、トップとしてパーティーを引っ張り、滝が出てくると、ロープを出すかどうか判断し、先輩の沢リーダー(以下「沢L」)の監視の元、ロープをセッティングし、初心者に指示を飛ばし、といったことを繰り返す。もう経験・実力共に大丈夫だろうとなれば、その仕上げとして最後に沢Lとしての認定試験が行われることになるのだが、これは(難しくない沢でいいので)まだ自分が行ったことない沢を企画して、そこに初心者を連れていき、ミスなく無難に沢をこなせるかどうかを試される(それで問題がなければ沢Lとしてカウントされることになる。ちなみに大学の部活では、沢を企画するには沢Lは2名以上いることが必須条件だった)。僕にとっての沢L認定の沢がこの源次郎沢だった。そしてその沢に、沢初回者として参加したのがミズサキだった。そんな思い出の沢なのだけど、記録が散逸していて、実際にどうだったかはよく覚えていない。
前段が長くなった。
朝7時に渋沢駅に無事全員集合。ぶっちーの車に乗って、戸沢入口まで行く。ぶっちーの車は燃費のいいコンパクトカーだが、途中の林道は所々段差はあるものの、そこを慎重に(的確にルートを取って)行けば、車底はすらなかった。天気はいい。若干雲はあるものの、稜線まで見えている。戸沢山荘の手前の河川敷の駐車場に駐車した。
今回のメンバーは、7月に一緒に沢にいったぶっちー先月尾瀬の沢に一緒に行った沢登りが2回目となるガッキーさん、今回沢登りデビューを果たすくっしー、ユリアさん、そして僕の計5名。入渓の準備を進める。みんなで沢道具を買いに行ったというガッキーさん、くっしー、ユリアさんの3名は同じ沢タビを履いている。くっしーのスリングには値札が貼られたままだった。まさに今から始まる沢登り。7:55に駐車場を出発した。
10分ほど歩いて、源次郎沢入口の看板に到着。その先砂防堰堤が二つ続く手前で降りる。砂防堰堤は、その縁を右から簡単に巻ける。が、何ということだ、早速足にヒルが一匹くっついているのを発見した。ヒルが増えたとは聞いたがこれほどまでとは。
ゴーロ帯を歩く。しばらくするとF1・4m滝が出てくる。源次郎沢は滝には看板がついている。ただ、看板を掛け替えたようで、さらに追加になったようで、F3までは同じだが、その先は過去の看板の番号と一つずつずれている(この記録では、かつての看板番号(遡行図上もそうなっている)で記載)。F1はガッキーさん、くっしー、ユリアさんともロープなしで水流の左を快適に登る。ぶっちーは水流中を冷たいっ!と言いながらサクサクと登ってくる(YouTube)。F2多段8m滝は下段を左から、上段は右から回り込むように登る。その先の5m滝は、右巻き気味に登るのだが、苔むしていて慣れていないと怖いかもしれないと思い、どうしようか悩んだが、結局何も出さずに通過してもらった。F3までは全てそんな感じで何も出さずに登ってもらった。
その先、しばらくゴーロ帯がある。左の斜面が崩れていて日当たりがいい。そして出てきたF4・10m滝(現F5)。時刻は8:40。この滝は記憶に残っていた。左のリッジの部分を僕が登って、少し奥の岩をアンカーにしてロープを出す。滝の下ではぶっちーがロープのハーネスへの結び方を教えてくれていた(写真)。ガッキーさん、くっしー、ユリアさん、そしてぶっちーの順で登る。ロープが付いているしどこ登ってもいいよと話をしていたら、みな左のリッジではなく、それより難しい水流すぐ横のラインにトライしている。3/4程登ったところはホールド・スタンスとも滑りやすいようで、ガッキーさんはここで一度テンションをかけていた。くっしー、ユリアさんもここで詰まり、実質引っ張り上げたような感すらあったが、そこそこ楽しい滝の登攀が出来た模様。ぶっちーはさっくり登っていた。登りの一回一回に時間がかかり滝の通過には30分を要した。
少し歩くと二俣になり、右俣に入るとすぐにF5・3段12m滝(現F6)が出てくる。9:15。1段目、2段目は簡単で何も出さずに三段目の取りつきに集合する。この滝はかつては僕が左から巻いて、上からロープを出した滝だ。せっかくなので登ってみたかった。
さて登攀開始。ロープも何も付けずにF6看板の50cm程右のラインに取りつく。看板と同じ高さから先はやや傾斜がきつく、また使おうとしたホールドは脆く剥がれかけていた。さてどうしようかと思ってしばし張り付いていたが、看板の斜め右上50cmのところにあるスタンスを見つけて左足をかければ素直に登れる。その先は看板の上のラインを行くが簡単。残置ハーケンがたくさんあったので、リードの練習には最適な気がした。
アンカーをしっかりと埋め込まれたボルト、そしてバックアップとして立木からも一つ取ってロープを出す。くっしー、ガッキーさん、ユリアさんの順で同じルートを辿る。最後に登ったぶっちーは、水流すぐ左のラインを直登する。最後の岩がせり出しているところはホールド・スタンスが乏しいようで、岩にしがみつくようにして登りきる。9:45再出発。ここも何だかんだで30分ほどかかった。
ゴーロ歩き、適度な小滝を登りながら先へと進む(YouTube)。F6(現F7)手前で水が涸れたのでそこで水を汲む。少し手前で汲んだ方が美味しい水になるかも。F6は大岩の下を抜けるときにザックがひっかかるということで初心者・初回者の3名は先頭を行ったぶっちーに受け渡していた。水が涸れ暑くなった沢を進むと、F8(現F9)の5m・4mチムニー滝が出てくる。10:15。
右から巻ける滝だが、そんなことをしても面白くないのでチムニー部分を行く。まず5m滝。突っ張りも使いながら登る。ホールドがやや尖っている。最後の岩を右によけるところで岩ににザックが当たり、少し押し戻された。ハーケンでアンカーを取って、お助け紐(7mm×10m)で確保する。くっしー、ガッキーさん、ユリアさん、ぶっちーの順で登る。みな割とサクサク登っている。登り終えた後、ハーケンの使い方を教えてみた。ハーケンが効いてくると音が高くなることに感心している。こればっかりは打った数・経験がものをいう世界。
続く4m滝も上からお助け紐を出すことにした。くっしー、ガッキー、ユリアさんの順で確保する。くっしーは僕が登ったルートよりも右側を行く(YouTube)。こちらの方が簡単そう。ユリアさんは膝をゴリゴリ(?)使いながら登っていた(YouTube)。ぶっちーはロープなしでサクッと登る。適度な快適な登りで楽しかった。10:55に再度出発。
しばらく歩くとF9・8mチョックストーン滝(現F10)。過去どうしたか覚えていない。ただおそらくは僕が左から巻いて、残置スリングがぶら下がっている左壁をロープを出して確保した気がする滝。遡行図によれば右壁の方が良いという。右壁を登るとして、傾斜・高さもあるのでリードで登ることにした。
僕リード、ぶっちービレイ。アンカーなし。やや手前のリッジ状に取りつき、左上気味に登る。残置ハーケン・ボルトは豊富。ただボルトは腐りかけたものもあってどこまで信頼できるのは不明。滝の2/3程登ったところから今度は右上気味に登る。少し先にしっかりとしたホールドがある。それを掴んだら落ち口と同じぐらいの高さまで体を引き上げ、岩の上端に登り、そこを左に簡単にトラバースし、最後の落ち口へは、一段下がり至る。ランナー(中間支点)は左上が終わるところまで3箇所、落ち口に一段下がるところで1箇所取った。いずれも残置ハーケン・残置ボルト。終了点のアンカーは残置ハーケン・残置ボルト合計3つ使った。傾斜と高さはある滝なので登りきった満足感はある。難しくはないが、何もないと不安になりそうな滝だ。ここは登るならリードはした方がいいと思う。
続いて、くっしー、ガッキーさん、ユリアさんと登る。登り方は三者三様だったが、みな上手く登っていた(YouTube)。最後に登ったぶっちーにランナーを回収してもらった。F9に登っている途中、人の声が聞こえ、別パーティーが来るのかなぁと話していたのだけど、別の沢なのか、尾根筋なのか、結局追い付かれることはなかった。
11:40に出発。この先はガッキーさんが先頭を行く。いくつか小滝を越えていく。曇ってはいるが天気は持ちそうだ。涸れた沢の登りで暑い。ヤマホトトギスの花がきれい。沢筋が不明瞭になり始めたので左に逃げ気味に登る。と、ヒルがいた〜!ヒル嫌い(そもそも好きな人なんていないでしょうが・・・)のガッキーさんはドン引き。結局詰め上がるまでに5〜6匹のヒルを見つけた。最後は人工林の中を上がり、12:15に花立山荘に出た。源次郎沢遡行無事終了。
立山荘で沢装を解く。ぶっちーの沢タビにはヒルが付いていた。ミントオイルをかけて処刑する。これより上と東側はガスがかかって霞んでいるが、下界は晴れている模様。天気が持って本当に良かった。昼ごはんを食べる。山荘に出ているかき氷の旗に惹かれ、イチゴ味のかき氷を400円出して買った。美味しい。みなかき氷を買って食べていた。ただあんなに暑かったのに、かき氷を食べ終わることには体が冷え、ガスバーナーを出してお茶を沸かした。平和なひととき。緊急連絡先にしている相方に無事沢が終了した旨連絡を入れる。ついでに仕事が忙しく昨晩遅くに今回の沢をドタキャンしたツージーさんに電話をかける。眠そうな声。今起きたとのこと。本当にお疲れ様です。
13:00に出発。大倉尾根を下り、分岐から天神尾根を下る。天神尾根はヒノキ林で土壌浸食が進んだ非常に荒れたところだが、11年前にはなかった丸太を使った登山道整備がなされていた。滑りやすく単調なのでみな疲労感が漂っている。一度休憩。戸沢の駐車場には14:05に戻ってきた。
駐車場には、沢登りの装備を持った人たちが多数いる。どこの団体だろうと思っていたのだけど、「シキシマさんの車で来た人は・・・」という会話が聞こえ、ひょっとして沢の遡行図集を出している敷島悦朗さんではないだろうかと思って眺めていた。家に帰ってきてから調べると、水無川本谷で初級沢登り講習会をしていた模様。話をしてみたかったなぁと思った。
駐車場横の水無川の本流で沢タビを洗う。洗っていると手に一匹小さなヒルが付いた。やっぱりこの流域はヒルの活動が収まる秋以降がいいみたい。と、左足フクロハギに血の跡があることに気が付いた。一か所ヒルに吸われていたらしい。
車に乗って林道を戻る。林道入口から10分かからないぐらいのところにある湯花楽というスーパー銭湯に行く。いろいろなお風呂・人工温泉・サウナがあって快適だった。風呂上りにはまず瓶牛乳を一本。その後生ビールをゴクゴクと飲み干す。美味しかった。
渋沢駅まで送ってもらって解散。車を出してくれたぶっちーありがとう。16:11の新宿行急行電車に乗って帰京する。電車の中では携帯電話にメッセージが入り、部活同期の結婚式への招待を受ける。おめでとう!幸せな気分になった。18時ごろ家について、ロープ・確保用具を干し、洗濯をした。
相方が帰ってくるのが20時頃になってしまうということで、時間もあるので料理を作ることにした。スーパーに買い出しに行く。旬の戻りガツオ、好物の鰹のたたきともに譲り難く、両方買うことにした。その後料理開始。1)ご飯、2)なめことネギのみそ汁、3)戻りガツオの刺身、4)生ホタテ(+岩塩)、5)ネギと自家製ゴーヤの野菜オムレツとろけるチーズ添え、6)もずく紅白なます、7)フリルレタスと大根とニンジンと黄色のミニトマトとショウガと鰹のたたき(サイコロ切り)の和風サラダを作って、プレミアムモルツで乾杯した。我ながら手早くたくさんの料理を作れるようになったものだと思う。その後は今日の沢の報告会をやった。
久々訪れた源次郎沢。丹沢の初心者の沢で景色は地味なところではあるが、全部登るとそこそこ楽しかった。その点、この沢がメジャーであることが良く分かる。ただヒルがいたので、行くならもっと遅い季節がいい。葉が落ちればもっと明るいだろうし。あとは、簡単とは言え、また計画・メンバー構成に自信を持っているとはいえど、沢L1人、割と慣れた人1名、初心者1名、初回者2名の構成で怪我などが何もなくて本当に良かったとホッとした。次回以降もずっと無事故であり続けたいと思う。
※遡行図は「東京起点沢登りルート120」を使用


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)