谷急沢右俣遡行〜裏妙義縦走

7月8月と一緒に沢に行ったミズサキが裏妙義の谷急沢の沢登りを企画してくれたので参加することになった。この山域に行くのは今回が初めてなのだが日本三大奇勝の一つでもあり、楽しみにしていた。
しかしながら前夜は咳がひどく、布団に入ってから2時間近く眠れず、ようやく眠りについたのは2時過ぎ。先週の日曜日の夜から喉が痛くなり、その後水曜日ぐらいに痰が出て落ち着いていたのだが、金曜日に咳が酷くなり、熱はないもののどうしたものかと思っていた。
朝4:50に起きて準備を進める。6:24の長野新幹線あさま号に乗って高崎へ。睡眠不足とあってうつらうつらとしていたら、一人が寝坊で来られなくなったとの連絡が入る。結果今回のメンバーは、ミズサキ隊長、9月に一緒に沢に行ったくっしーとユリアさん、僕の計4名となった。他にも一人エントリーしていたのだが風邪のため不参加となっていた。高崎には7:15に着くので、7:05にアラームをかけておく。アラームが鳴っておおっ、あと10分か、と思った後、記憶がない。
ハッと目が覚めると新幹線は速い速度で進んでいる。高崎はまだかと時計を見ると7:18!最初理解できずにいたが、すぐに状況を把握した。
やってしまった!寝過ごした・・・orz。ショックなのだが、でもなんだか実感がわかない。
ミズサキにお詫びのメールを入れた後、諦めて東京に戻ることを模索し始めたが、ひょっとしたら何とかなるかもしれないと思って、いろいろ調べる。まず軽井沢駅から集合場所の横川駅には何時に着けるか。軽井沢に7:32に着いてそのまま反対ホームにダッシュして7:34の高崎行きに乗れれば、8:03の当初到着予定から一時間遅れての到着となる。流石に遅い。窓の外を見ると妙義山のギザギザが見えている。悲しい。次に軽井沢から横川駅までの距離を調べた。横川駅は軽井沢と高崎の間にあるが、距離的には軽井沢の方が近い(高崎からは信越本線で約30分)。その距離約17km。これならタクシーに乗れば行ける!お金はかかるけど仕方がない。
7:32に予定通り軽井沢駅につく。高崎から軽井沢までの追加料金を払って(T_T)その後タクシーに乗る。結構気温は低くて、周りの山々は紅葉していた。碓氷峠を過ぎてカーブが184箇所ある旧国道18号(中山道の難所)を通って横川へ。紅葉が美しい。眼鏡橋を越えて、無事8:05に横川駅に到着。5,900円なり。痛い出費だが仕方がない。それよりも無事集合場所にほぼ集合時間どおりに着けたことを感謝した。
さて、4名が無事集合して、横川駅から裏妙義国民宿舎にタクシーで向かう。タクシー代は2千円代前半。妙義湖にはワカサギ釣りの釣り客がチラホラいる。15分ほどで到着。国民宿舎では、遭難者救援隊の方がたくさんいて登山指導が行われていた。3日前にも遭難が起こっていて、今年は既に二人の方が亡くなっているというお話を聞く。今や谷川岳を抜いて遭難者数日本一という妙義山。よく晴れ渡った秋の空の下、連なるトンガリを見ながら、気を付けねばと気持ちを引き締めた。
さて、出発。20分ほど歩いて、深沢橋に到着。橋を越えた20m先から沢に降りる(踏跡あり)。沢の装備を整え、9:05に出発。すぐに谷急沢が出てきて、中木沢から谷急沢に入る。水量は少なめ。川床には落ち葉が積もっている。まだ陽は差し込んではいないが明るい沢を行く。水は流石に冷たくて、早速出てきた(深くない)淵も左をへつって濡れないように行く。
5分ほど歩くと早速末広がりの滝6mが出てくる。9:10。遡行図には左壁に取りついて登る、とあり、ミズサキが左壁から登るが、案外怖いよう。ならばと続いて僕が右壁を登るがこちらはホールド・スタンスがしっかりとしていて簡単。くっしー、ユリアさんにはこちらを登ってもらうこととして、ミズサキがロープを出して確保した(YouTube)。9:30に出発。
のっぺりとした静かな沢が続く。柱状節理が美しい。大岩がたくさんある。9:40に二俣に到着。右俣に入る。しばらくナメ床が続き美しい。沢に陽も射してきて気持ちのいい渓相となる。ただコントラストが強過ぎてなかなかきれいな写真にはならないのが残念なところ。河床に降り積もった落ち葉が秋を感じさせる。4m滝から先、沢はゴルジュになり、小滝がいくつも続くがどれも問題なく越えていく。沢が3回目のくっしー、ユリアさんにも特に何も出していない。
標高630mの沢が北向きに変わるところの先に8m滝が出てくる。10:20。見た目は結構大きい。水流右横が階段状になっているが、下から1/3あたりのところだけ少しばかりスタンスが遠そうに見える。ロープ要る?とミズサキに訊くと、大丈夫だと思います、とのこと。早速取りつく。特に問題なく越えていく(YouTube)。ただ高さはあるので流石にくっしーとユリアさんにはロープを出すことにして、待っていると後ろから3名ずつのパーティーが2組の計6名が追い付いてきた。みなさん滝を眺めてどう登るかを議論している。注目の中、ロープを付けてくっしーが登る(YouTube)。続いてユリアさん。1パーティーは時間待ちを惜しんでか、右から巻いていったのだが、9月に東黒沢を遡行している時に会った方々であることに気が付き、声をかける。そうだとのこと。こんなこともあるものだ。ユリアさんのあと、僕は何も付けずに直登。スタンスが遠そうに見えたところも特段の問題なし。若干ぬめってはいるが、ホールド・スタンス共に大きいので問題はない。登り終えた後、休憩していたかつて会った方々のところに行き、ハーネスが一緒だったのを覚えていましたと話をする。八王子オオルリ山の会の方々とのこと。よくわからないけどやたらと嬉しかった。どこの大学ですか?と訊かれて、社会人です、職場の面子で来ています、と応える。よく沢をする人が職場で集まりますね、と言われて確かにそうかもしれないとも思った。
さて、10:45に出発。木漏れ日溢れる沢を歩く。釜のある滝は僕は右をへつって右壁を登る。他は左岸を巻いていたけど巻くのは案外よくなさそう。その先は特に何も問題なく進み、4m滝を登る(YouTube)と15mの大滝が出てくる。11:05。下段は左を、途中で右に移り上段を登るが、階段状で簡単。やや高度感はあるがくっしー、ユリアさんにも特に何も出さずに登ってもらう(YouTube)(写真)。登り切ると奥ノ二俣(730m)。その先はゴルジュに入る(YouTube)。小滝が続いた後、出てきた5m滝は右から巻き気味に登り、トイ状5m、ゴルジュ出口の6mとも問題なし。そして最後の10m滝に到着。11:25。
遡行図には“左壁が簡単そうに見えるが、岩がボロボロで意外と難しい。右壁の方がしっかりしている”との記述がある。が、右壁に取りつくのは少し面倒そう。ということでミズサキが左壁を上がり、最後は中央に向かって登る。簡単でした、とのこと。ロープを出して確保の上で、くっしー、ユリアさんに登ってもらう(YouTube)。ユリアさんはルートを間違え、独自ルートを行きテンションをかけている。後続パーティー×2は、登らずに右から巻いていたが巻くのは結構怖そうだった。さて僕も左壁を何も付けずに登ったが、それほど岩が脆いということもなく、簡単に登る。ここで休憩。水を汲んだ。11:45に出発。
すぐに標高800mの二俣となるが、登山道に早く出るため、涸れた右俣を行く。830m付近で右の尾根に上がると尾根を辿った少し先に登山道があった。12時。沢装備を解いて昼食を食べた。
時間がなければここから登山道を下る予定だったのだが、時間もあるので、三方境から烏帽子岩、赤岩、丁須の頭と縦走して、裏妙義国民宿舎に下山するルートを行くことになった。12:20に出発。12:25に三方境に到着。ここから尾根上を行く。
稜線は風が適度に吹いて気持ちがいい。ミズナラの落ち葉とドングリがたくさん落ちている道を行く。紅葉も進み、きれいな森だった。1050mのピョコに立つと、左から聳え立つ烏帽子岩と赤岩、そして丁須の頭と続く稜線が全て見渡せる(写真)。かっこいい。

この先鎖場がちょこちょこと出てくる。すれ違う人も何名もいたがハーネスを付けている人も結構いた。そそり立つ烏帽子岩、赤岩を下から眺めるが威圧感十分。たくさん付いている鎖は割と重くてしかも滑りやすい。道は分からなくなるほどではないが少しばかり目印を探すところもあった。赤岩の下のトラバースは垂直に切れ落ちた岩壁に頼りなさげな足場が組んであり、そこを鎖を伝って進む(YouTube)。見た目の迫力は満点だが、案外怖くないというのが感想。その先も鎖場がちょこちょこあった。そして丁須の頭に随分と近づいたところにある20mのチムニー(煙突上の細い岩場)にたどり着く。ほぼ垂直に近い岩場を鎖を持ちつつ20m登る。まずミズサキが登り、その後ユリアさんと続く(YouTube)が、ユリアさんは途中で腕力が力尽き、鎖場を3/4ほど登ったところでしばらく休憩。くっしーと僕は途中まで登ってきていたのだけど、ユリアさんの休憩に合わせて休憩。最後のところの鎖の付け方が案外良くない。岩の途中で鎖を掴んで長い時間待っていたので結構腕が疲れていた。最後は見た目以上に高度感があった。慣れない人であればロープを出して確保してもいい場所だ。
14:40に丁須の頭に到着。先行パーティーのおじさん×2、おばさん×2の4人組のパーティーがこれから丁須の頭に取りつくところだった。時間もないしどうする?と話したのだけど、ミズサキが以前来た時は登らず、今回せっかくだから是非登ってみたいということで待っていた。先頭を行くおじさんは何も付けずに登っていく。見ていて恐ろしい。その後ロープ確保を受けながらおばさん2名とおじさん1名が登り、ロープ確保を受けながら鎖を伝って下りてくる。最初に登ったおじさんは最後は懸垂下降で降りてきていた。よくロープも何も付けずに良く登りますね、と話しかけると、もう何度も来ているから、とのこと。しかし、この鎖場では何人も死んでいる場所なので、よく行くなぁというのが率直な感想。15:20頃にようやく空いてようやく取りつく。
まず、ミズサキが行く。と言ってもリードで登る。まず基部まで行き、そこでアンザイレンして登攀開始。登攀、と言っても鎖を伝って登るだけなのだが、高度感は結構あるし、最初はハング気味であるし、恐怖感が出てしまっては登れない場所。手の届く一番先の鎖にスリングをかけて、その先の1.5m程上にもスリングをかけてランナーを取り、無事頂上にミズサキが到達!続いて、くっしー、ユリアさんに登ってもらおうとしたが、ミズサキ確保でロープは付けているものの高度感から来る恐怖心とと腕の疲労感からくっしー、ユリアさんとも途中で断念し、降りてきた。その後、僕が登る。

最初の一歩が割と怖い。ここでもしロープなしで落ちれば20mは落ちるだろうと思うと、たとえロープが付いていて落ちることはないとわかってはいても背筋が寒くなる。その先も鎖を持ちつつスタンスをしっかりととらえながら慎重に登る。登る距離自体は高々5〜6mなのだけど、その下は切れているので高度感は抜群だ。そして無事到着。セルフビレイを取る。岩の上は馬ノ背状であんまりスペースはない。360°の大パノラマが広がり景色は最高。でも時間が推している、という少しの焦りの気持もあって、あんまり写真を撮る気にもなれなかった。ここに登るならロープ・ハーネスは必須だ。下りは懸垂下降で、僕、ミズサキの順で降りる(写真)。途中から空中懸垂になりワイルドな気分に浸れるのは素敵。15:50にようやく下山開始。時間は推している。少し遅くなり過ぎた。相方に電話し、まだ丁須の頭だがあと2時間以内には下山する、と電話で一報を入れておいた。
この先も鎖場が続く。涸れた沢の中を降りて行く。陽の入りは16:45。暗くなる前に降りたい一心で籠沢コースをかけ降りる。が、鎖場が多くてペースが上がらない。途中のそそり立つ岩壁、そして大岩の景観は素晴らしかったが、気持ちが推していて、ほとんど写真を撮らず。標高550m付近で沢を離れてまともな道となり、500mで沢を渡った先は道はさらに随分とよくなり、何とか暗くなる前に間に合ったとホッとした。そして、17:00に林道に出て、薄暗くなった17:05に裏妙義国民宿舎に到着!
日帰り温泉に入れるかフロントに訊くと、17時までですがいいですよ、とのこと。感謝。温泉に入ってポカポカと温まる。温泉上りに缶ビールで乾杯した後、18時に呼んだタクシーに乗る。外は真っ暗。こうなる前に下山出来て本当によかった。
18:31横川駅発の電車に乗る。高崎で乗り換えて帰京。山に登れば咳は治るかと思ったが全然治らずゲホゲホしながら帰ってきた。
行ってみたかった妙義の山。朝は新幹線で乗り過ごしというハプニングがあり、山行中、山行後も咳は止まずに体調には優れなかったけど、谷急沢も全部の滝が登ることが出来たし、森もきれいで素敵だった。そして稜線歩き、最後の丁須の頭の登攀も楽しかった。企画してくれたミズサキありがとう!ただ下山は時間ぎりぎりになったのは反省。結果的に何も問題はなかったのだけど、やっぱり初心者がいるときは無理はできないなと思った。
あとは今回、先週末に購入してしまったMacpacのパーシュートを初めて背負っていったのだが、使い勝手は上々だった。購入したのは50リットル程度のザックがほしかったから。一般受けするザックではないけれど、山慣れた人の評価は高い。詳細はまた後ほど。

※遡行図は東京起点沢登りルート120を使用。


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)