西丹沢 白石沢モロクボ沢 沢登り

沢登りもそろそろシーズン収めだなぁと思いつつ、紅葉の沢に行きたいと思っていた。先日カナハナさんと話をしていた際に、10日か11日ぐらいに沢に行きますかねぇという話になり、濡れずに済む簡単な沢を探していた。いくつか候補はあったのだけど、“美しい釜滝と大滝を秘めた癒し系の沢”ということで西丹沢にある白石沢モロクボ沢に決定した。近くだと12年前に鬼石沢に行ったことがあるのだけれど、花崗岩で構成された明るいきれいな沢、という印象があって、モロクボ沢もそんな感じ何だろうなと想像を膨らませていた。
小田急線新宿発5:46の小田原行の急行に乗る。天気は最高。電車の中は登山客が多数いる。新松田駅に7:04に到着。今回の参加者であるカナハナさん、そしてユリアさんも無事集合。改札を出てバス停を見ると既に長蛇の列・・・これはバスに乗れないなぁと思っていたら、次のバスが来る。臨時増便らしい。並んだタイミングが良く座ることが出来た。予定通り7:20のバスに乗る。そして、西丹沢へ。バスの中から時折冠雪した富士山が良く見えた。1時間20分ほどバスに揺られて、終点の西丹沢自然教室に到着。標高550mの地点だが既に紅葉が美しい。多数の駐車があり、紅葉狩りの登山客が多数いた。山ガールもチラホラ。でも沢登り装備を背負った人は他には見当たらなかった。登山届提出を呼び掛ける方がいて提出する。
8:50に西丹沢自然教室を出発。林道を歩く。高くまで透き通った真っ青な空と色とりどりの紅葉。西丹沢の落ち着いた雰囲気。花崗岩の明るい沢。少々寒かったけれど、来てよかったなぁと思いながら歩く。9:15に林道にある車両止めのゲートを越え、9:25に白石沢キャンプ場跡に到着。キャンプ場跡の中の道をすり抜けて、9:30頃標高700mの堰上の入渓点に到着。沢装備を整え、9:45に出発。
花崗岩真砂からなる白い河床が輝いている。目を凝らすと時折ヤマメが泳いでいるのがわかる。河原をテクテク歩いて行くと、10:00に大滝30mに到着(YouTube)。標高は770m付近。大きい。登るには人工登攀が必要とのことだが、夏なら面白いかもしれない。大滝の釜は滑っていて滑りやすい。一段上がるのにカナハナさんとユリアさんは案外苦労していて、お助け紐を出して手がかりにした。
さて、巻きは滝の左壁に向かって左を登って行くと、半分ほどから上がチムニー上の岩場となっている。二段からなっていてまず下段を登る。それぞれで確保すれば10mのお助け紐で長さが足りそうだったので、二回に分けて確保することにした。きれいなクラックがあった(潅木等はない)ので、ここにカムを効かせたのだが、リンクカムの#2ギリギリの細さのクラックだったので抜けなくなり焦る。おいおいこんなところに2万円弱のカムを残置するのは勘弁!とゴリゴリと外していたら何とか外れてホッとする。リンクカムの#0.5と#1でアンカーを取っててお助け紐で確保した。カナハナさんが案外苦労している。上段は、最後に残置ロープがあるチムニー上の岩を登る。こちらは立木をアンカーにして上げる。その先の滝の落ち口に向かってのトラバースは立派な踏み跡が付いていて何も問題なかった。
滝の上はこの沢のハイライト。5×5m滝(YouTube)7×5m滝(YouTube)、3m滝、4m滝と続くが、美しい釜を持った登りやすい滝ばかりで心が癒される。夏なら釜で水浴びを楽しむのだろうけど、今日は泳ぐには寒過ぎた。でもあまり濡れることなく進む事が出来た。沢の美しさを噛みしめながら歩く。
10:45に標高800mの石積み堰堤に到着。懸垂下降の練習をしてみたいというカナハナさんとユリアさんのリクエストに応えて、この堰堤で懸垂下降の練習をしてもらう。3回ずつ降りてもらった。ともに初めての懸垂下降とのこと。最初は流石にぎこちないものだと思う。でもいい練習になったと思う。
11:10に出発。この先はひたすらゴーロ歩きが続く。白い河床に癒され続ける。11:20に水晶沢に到着。支沢が多い沢なので、一つ一つの支流を確かめながら歩く。倒木が重なって出来た淵にヤマメがいて心がときめく(YouTube)。標高を上げるにつれて紅葉が鮮やかさを増してくる。900mの支沢のあたりから、コケが豊富なゴーロ歩きになる(写真)。時々ナメもあって、美しい。途中には幾年も前に倒れたであろう朽ちかけている大きな倒木が沢を寸断していた。苔むす倒木の下には積み重なる大きな岩。絵になる風景だった。
沢は一面が落ち葉に覆われている。かつて春秋は研究で奥秩父の沢にこもっていた。その時の風景・音を思い出しながらこの秋の沢を歩く(YouTube)。地図を読みながら歩くんだよ、と話をしていても、たいていの人はあまり読まない。今回も全然ダメだった。途中からユリアさんに支沢が出てきた際にどちらに行くのか訊くと最後の分岐以外は全て別の方向を示していた。もはや占いの世界。本当は地図が読めなければ怒るぐらいの方がいいのかもしれない。そうでないと地図読み能力は育たない。その意味では地図を読み続けた大学のワンゲル時代の教育はよかったのだと思うのだけど、ただ当時は地図ばかり見ていて周りの自然が良く見えなかった。おかげで地図読みには自信があるのだけど、まずは自然を楽しむという意味では、地図読みの訓練をひたすらやらせることには功罪があるのだと思う。
さて、965mの支沢を12:15に過ぎて、ナメくの字滝4mを簡単に登る(YouTube)。1030mの分岐を過ぎて少し行った先で休憩。12:35。ストーヴを出してお湯を沸かす。カナハナさんの持ってきてくれたほうれん草のポタージュスープが美味しかった。ここで水を汲んだが、この先は1100mの支沢の手前まで水はあった。13:00に出発。
この先にあったコケはすごかった。見た目以上にふっかふか(YouTube)。これはすごい!と思った。サワグルミの林を抜け、13:15に標高1100mの分岐に到着。すっかり葉っぱは落ちている。テープは右俣に付いているが、遡行図上は左俣を行くことになっているのでそちらを進む。段々急になり、大岩を越えるところでは落ち葉に埋もれてスタンスが分かりにくくまた少しばかり脆かったので、念のためとお助け紐で確保した。最後は落ち葉の降り積もったザレザレの斜面を慎重に登る。稜線の登山道を歩く登山客が見える。13:45に1275m地点で無事登山道に出て、13:50に畔ヶ丸山に到着した。何名か登山客がいる。ここで休憩。沢装備を解いて下山の準備をした。相方に無事登山道に出たことを告げようと携帯電話を出したが圏外だった。
14:00に畔ヶ丸山を出発。気持ちのいい尾根沿いの登山道を下る。何パーティーか追い越す。ロープ・ハーネス・沢タビ・ハーケン・スリング・カラビナ等の沢装備が詰まった50リットルのザックを見て、すごい荷物だという声が聞こえてきた。二回目の使用となるMacpacのパーシュートだが、今日も使い心地は至極よかった。登山道を進み、大きな沢に降りた本棚の分岐のところでザックを置いて、本棚を見に行く。15:00。大きな滝。丹沢三滝の一つで高さは60mとのこと。この一角はマイナスイオンに溢れていた。そして近くの淵にはヤマメが数匹泳いでいた。
分岐まで戻りその後もサクサク歩く。沢にかかった丸太橋をいくつも渡る。そして15:39に西丹沢自然教室に到着!なんと15:40のバスに間に合った。トイレに寄った後、そのままバスに飛び乗る。ラッキーだった。最初はガラガラだったが、途中からどんどんと登山客が乗ってきて最後は立っている人も何人もいた。途中は爆睡。バスに揺られ続けて約1時間20分、17時を過ぎてようやく新松田の駅に到着。8月に小川谷廊下に行った際にも寄ったバス停前の海鮮居酒屋に寄って軽く打ち上げをする。ビールが五臓六腑にしみわたる。美味しかった。
家には20時前に帰ってきた。相方が晩御飯を作ってくれていたのでありがたくいただく。ホッとするひととき。
初めて訪れたモロクボ沢。沢は簡単でその意味では楽勝だったけれど、懸垂下降の練習もできたし、何よりも紅葉の沢の鮮やかさ、明るさと相まって、花崗岩の西丹沢の美しさと癒しを存分に感じることが出来た。そんな素敵な沢、素敵な休日だった。

※遡行図は「東京起点沢登りルート120」を使用


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)