厳冬の会津駒ヶ岳山スキー 二日目


夜半2時半ごろに目が覚める。よく寝た。時折強い風は吹いたが雪はそれほど降っていない。雪下ろしをしなくて済んだことに感謝した。朝は準備に結構時間がかかるだろうと思って4時起床にしていたのだけれど、目が覚めた以降はなかなか眠りにつくことが出来なくて、そのままぼんやりとした思考のまま起きていた。
4時にシュラフから抜け出して、手早くシュラフ類を片づけ靴を履き、そして朝ごはんの準備をする。お湯を沸かして、一つの鍋ではラーメンを煮込み、もう一つの鍋でテルモス用の熱湯を作った。割と早めに準備が出来て、5時を過ぎてテントの外に出る。満天の星空。美しかった。
今日はここ1350mに荷物をデポして、2133mの会津駒ヶ岳のピークまで行き、その後スキーで下ってくる計画。会津高原尾瀬口駅に行くバスは15時がラストなので、少し余裕を持って10時を前進リミットとして設定した。6時出発と言っていたのだけれども、思いのほか早く準備が整ったので、まだ暗闇の中、5:40に出発した。
昨日のトレースは時々埋まっているところもあるものの、そこそこしっかりと残っていて、それを頼りに暗闇の雪の斜面を登る。トレースの上についているウサギの足跡を見て、昨晩ここを通り過ぎて行ったんだなぁとほのぼのとした気持ちに浸る。10分ほど登ると東の空が少し白んでくる。昨日バテバテだったカナハナさんも元気を取り戻していてホッとする。今日は1時間で200m以上は高度を上げて行かないとたどり着けないので、元気なうちに出来るだけ早めに高度を稼いでおきたいと思っていた。
6:20に1570m付近で最初の休憩。なかなかいいペース。だいぶ明るくなり、ヘッドランプを外した。10分ほど休憩した後、出発。6:38に日の出となる。森が、雪面が赤色に染まる。絵になる光景だ。何枚も写真を撮った。ウサギの足跡も芸術的だ(写真)。空気はきりりと寒いのだけれども、太陽の赤い光が射し始めるとしっかりと温かさを感じることができた。拝みたくなる気持ちが良く分かるひととき。
7:10を過ぎると雪が舞い始める。ガスがかかりあっという間に視界が悪くなる。7:20に休憩。この先はオオシラビソの森の中を歩く。雪が段々と激しくなる。1800m付近で雪洞泊をしているパーティーに出会う。まだ出発はしていなくて、この先は(それほど大したことはないのだが)ラッセルとなった。1900mまでの区間は僕がラッセルして、その先はコイケ君に代わってもらった。1950mで休憩。8:00。カナハナさんが少し疲れ始めている。症状を見るに水分不足。お湯をたくさん飲んでもらった。やっぱり病み上がりは辛いみたい。休憩していると、先ほど雪洞泊していた4人のパーティーが追い付いてくる。2人が山スキーで2人がスノーボードだった。関西から来られたそうな駒ヶ岳の先に縦走する予定と聞いて、今登っている斜面は自分たちが一番先に滑ることになると確信し、嬉しくなった。
その先は樹林限界になる。かつて引き返したところだ。視界は悪く、あたり一面真っ白で、雪面だけを見ていると酔いそうになる(写真)が、30m先を先行パーティーが歩いていることもありその意味では楽だった。
風雪は強くて目出帽がないと辛い状態。ゆっくり登って標高2060mの駒ノ小屋には8:50に到着。これなら会津駒のピークを打つこともできそうだ、と嬉しくなる。その先も視界が悪く、風も強かったが、ゆっくりと登って、9:10に無事会津駒ヶ岳山頂に到着!嬉しかった!先行パーティーに集合写真を取って頂く。あんまりのんびりもしていられないので、早々に出発。お気を付けてと話をしてから、引き返した。
駒ノ小屋まではシールを付けたまま下る。吹雪でガスもかかっているので視界が悪く滑りながら酔いそうになる。駒ノ小屋の横でフライシートに包まって休憩。僕はここでテルモスを失くしかけたが、出発時に雪に埋もれているのを見つけて回収。ホッとする。
ゴーグルを付けて、シールを剥がして、10:05に駒ノ小屋を出発。吹雪の中だが、期待以上のパウダーとなっていて最高!一人スノーシューラッセルするエナさんを置いてスキーで快適に滑っていく。楽しい!1990mのピョコの先は樹林が出てきて、ようやく視界が悪いところから戻ってきたとホッとする。その先も最高の雪質!フカフカで快適にターンが出来る。まだ他のパーティーに全く滑られていない斜面にシュプールを思いのままに描きながら快適に滑る!楽しくて滑りながら撮影してみた(YouTube)。本当に来てよかったと思った。みな楽しそうに滑っている(YouTube)。
ただ楽しければ楽しいほど、スキーでサクサク滑る中、黙々とスノーシューで歩いているエナさん(YouTube)には悪いなと思った。。まあでもこれが山スキー購入意欲につながるかもしれないから、こういう経験もあってもいいのだとは思うのだけれど。

パウダーが続くので、全然消耗せずにあっという間に下っていく。そのうち登ってくるパーティーとすれ違い始める(YouTube)。その横をジグザグとシュプールを刻み込みながら滑り降りて行く優越感!皆羨ましそうに見ている。スノーシューを履いた単独行の若い女性もいた。一人ですか?と聞くと、そうです、とのこと。逞しいなと思った。
途中一度休憩して、その先も快適に下る。1550m付近は風が強かった。コイケ君は登山靴スキー(プラスチックブーツ)なのだけれども、アグレッシブに滑って時折派手にクラッシュしている。ムービーを撮っていたら最後の最後に回転してこける、というなかなかできない芸当も見せてくれた(YouTube)。あっという間に滑り降りて、11:15に1350mのサイト場に到着した。
素早く撤収して、11:40に出発。テントの詰まった本ザックスキーとなり、ターンがしんどくなる。その先は行きと異なり1250m付近まで尾根上を下り、その後、谷筋を下る。11:55。谷筋は上部が急だが快適。でも雪が重くなり始めたのでカナハナさんが消耗し始める。バタバタとコケながらも何とか滑り、12:15に林道に出る。少し休憩した後で、出発。この上では僕は一度もコケていなかったのだけれど、最後の最後のターンでバランスを崩し手をついてしまった。あ〜あ。
12:40に登山口に到着。デポした荷物を回収。無事終わってホッとした。温泉まで歩くと遠いなぁと話をしていたら、ちょうどバスがやってきて、慌てて荷物をまとめて乗せてもらった。森の温泉館アルザ尾瀬の郷まで乗せてもらう。歩くとそこそこの距離があるので、本当にタイミングが良かったなと思った。
森の温泉館アルザ尾瀬の郷で、露天風呂に入り、ポカポカと温まる。身も心もくつろぐひととき。温泉を出た後は、その横にあるお食事処でビールで乾杯!五臓六腑にしみわたる。その後はお蕎麦を食べた。山から日常に戻っていくひととき。15:04発のバスに乗って会津高原尾瀬口駅へ。16:30に駅に着いたのだが、もう17:08発の浅草行きの電車は停まっていて、さっさと乗り込んで場所を確保してから、買い出しに行った。
17:08発の電車は出発の時には満員になり、立っている人もいた。そのまま電車に揺られ続け、20:42に北千住で降りて、電車を乗り継いで帰宅した。
厳冬期の会津駒ヶ岳山スキーは、視界は悪かったけど、最高の雪質に恵まれ、またピークも打つことが出来て大満足な山行となった。楽しかった!企画してくれたコイケ君ありがとう。今後も安全には気を付けながら、楽しい山スキーが出来ればと思う。


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