乗鞍スキー&スノーシュー合宿二日目

6時に起きた。よく寝た。窓の外を眺めると、吹雪いている。昨日と変わって今日は冬型が決まっている。そしてここ数年間で最強レベルの寒気が入ってきているらしい。これじゃあ今日の山スキーは上まで行くのは到底無理で、せいぜい樹林限界付近までだなぁと思った。まぁ悩んでもしょうがない。
朝食まで時間があったので、朝風呂に入りに行く。硫黄の香り漂う白濁した湯を独占し、ポカポカと温まる。白骨温泉と同じ泉質とのこと。ちょうど一年ほど前、その時の仕事が結構大変だった時もここに来て、この温泉に浸かり、今この瞬間は平穏が漂うなぁと感じていたひとときがあった。そんなことを思い出しながら、窓の外の降りしきる雪を眺めつつ、さてどうするか、と頭の中に計画を張り巡らせていた。
7時から朝食を頂く。鶏挽肉、ショウガ、シイタケ、ニンジンの入った鶏そぼろが美味しかった。今日は、スノーシュー隊は乗鞍高原周辺の散策しつつ、チーズ&チョコフォンデューの豪華な昼食を食べるという計画、一方の山スキー隊は、標高1990mのリフト終点まで行き、そこからスキーで登っていき、行けるところまで行って後は下ってくるという計画。昨年は非常に寒い思いをして反省したこともあり、昼食は各人テルモスを持って行ってカップラーメンを食べることとした。山スキー隊の参加者は、カジさん、アリヤマさん、ムラカミさん、Kさん、ケビンセキグチ夫妻(まりりんと旦那さん)、ニッタ君エナさん、僕の計10名。この天気で上に行くの?と宿の主人に訊かれて、おそらく樹林限界の2400m付近で引き返すことになります、と答えた。準備をあたふたと進めて、8時半を過ぎて鈴蘭小屋を出発。
スキー場で回数券を買ってリフトに乗る。雪交じりの強い風が冷たくて、早くも目出帽がないと辛い。1990mのリフト終点まで行くと、既に何名かが登っていく準備をしているところだった。上からワカンで下ってくるパーティーもいたが、今日の悪天候では流石に頂上に行くことは諦めたのだろう(から早く下りてきたのだと思われる)。シールを張って出発の準備を整える。今回ニッタ君だけはスノーシュー&ゲレンデスキーという出で立ち。他は各々山スキーか、テレマークスキー。この日初めて会ったKさんは、K2のファットスキーにTLTビンディングを着け、ホグロフスのヤッケを着てビシッと決めていた。かっこいい。
さて、9:50にようやく出発。
[f:id:seishu:20130224095204j:image:w360]
雪が降り続く中、トレースを辿る。と、10分も歩かないうちに早速ニッタ君から、この様子だと(力が)持つ気がしないのでここで引き返したいとの申し出があった。でもいくらなんでもそりゃないだろうとついてきてもらうことになった。結果的には最初が少々しんどかっただけで問題なしだった模様。ほ。毎年(山スキーに慣れていない人が)苦労している最初の急登は、今年は雪がフカフカと積もっていることもあって全く消耗しなかった。ただ早速シールトラブルが出て、ケビンの張り流しのシールが両方ともベリッと剥がれて用をなさなくなる。テーピングテープを出して貼り付けるが、シール本体に雪が付く&低気温ということがあって全然粘着力はない。ちなみにこの日標高1470m付近にある鈴蘭小屋付近で最低気温が−17℃になったらしく、標高2000mを越えるこの場所もかなり寒かった。テーピングテープはそれぞれ三か所ずつ巻いたのだが、結局剥がれてしまったので、もう一本テープを持ってきておいてグルグル巻きにしておけばよかったなぁと後悔した。一昨日の準備の際に転がったテーピングテープのことがまざまざ頭をよぎった。このシールトラブルで結構時間が取られた。スキー山行ではシールトラブルは時に命取りになりかねないもの。とりわけ初めて一緒に行く人が多い時には、もっと余裕を持ってたくさん持ってくるようにしよう(そもそもと言えばいつもの装備表(例:先々週の[file:seishu:会津駒スキー山行装備表.pdf])には個人装備にテーピングテープ入っているのだが、今回作った簡易な装備表には書き忘れていたのが致命的だったのです…反省)。
そんなことで時間がかかり、その後もごまかしごまかし登っていたが、急斜になると板とくっついていないシールが全く用をなさずに大消耗。ケビンはつぼ足(←何も付けずに靴だけで歩くこと)で歩くことも試していたけど、何人も通ったトレースの上とはいえ、スキーやスノーシューがないと時折太ももまで埋まってこれまた大消耗。時刻は11:10。標高2180m。残念ながらケビンはここで撤退の決意。残念だけど仕方がない。(あまり一緒に行ったことのない人を含む)大人数でパーティーを組む際には、やっぱり予備スノーシュー(かワカン)も一つぐらいあった方がいいなぁと反省した。
先行している8名に追い付くべく、足早に進んだが、少し先で5名が休憩していた(&ビンディングの横解放が外れてそれを直すのに手間取っていた)ので、早々に追い付っくことが出来た(残り三名は先に進んでいた)。吹雪は続く。目出帽もカリカリに凍りついている。目尻の下のゴーグルと目出帽の境目が冷たく痛いほどだった。標高2350m付近の急登付近には別パーティーもいて先に進むのを考えているようだった。この急斜を登って(一番上の写真)、標高2420mのところまで行く。この先は樹林が所々にないわけではないが、基本的には吹きっさらしになる。風雪がきつく視界もない。先行していた3名にも追い付いて、今日はここで引き返しましょう、と滑降の準備をした。近くにいた他のパーティーもここで引き返すようだった。
と、エナさんが、(貸した山スキーのビンディングの)先ほど取れてしまったパーツがまた取れちゃった、と話している。見ると踵の上の部分の、固定した兼用靴を外す時に使用するプラスチックパーツが割れてしまっていて、その結果パーツが外れてしまうということになっていた。ガーン(@_@;)。ただ靴の固定にはなんら影響がないパーツなので、これから下るのは問題ないのが幸い。あまり壊れたとは聞かない部分なので、どうやって外れたのか聞くと、兼用靴を外す時にストックで突っついたところ取れてしまったとのこと。そうそう壊れるパーツではないので、おそらく外す時に変な形で力がかかったのだろう。小さな頃から母親には、人にモノを貸すのであれば、それはもうあげるという覚悟を持ちなさい、一旦貸したのなら壊されようと何があろうと文句を言ってはいけない、としつけられてきたので、その意味ではエナさんに対しては素直にまぁしょうがないなぁという気持ちしかないのだけれども、自分自身の説明不足もあって、致命的ではないにせよ壊れてしまうことになってしまった長年の愛用の道具自体に対して申し訳ない気持ちでいっぱいになって凹んだ。まあしかし、靴の固定にはなんら影響なく、スキーで下るのは問題ないのが幸い。その意味では、本当に壊れてはいけない部分はとにかく頑丈に作ってあるジルブレッタ404の信頼性は相当高いと思う。
準備にもたついていると先にこの急斜を滑り降りて行ったカジさんが登り返してきた。元気過ぎる。さすが。途中で引き返したケビンが、無事スキー場のレストハウスに着いたとの連絡が入る。ほ。さて、全体の準備が整い、12:05、吹雪の中を下り始める。時々強い風が吹いて真っ白になり何も見えなくなった。思ったよりも雪が重く、フカフカサラサラのパウダーというわけには行かなかったけれど、そこそこ快適に滑る。ひざ下まで埋まるので急斜をほぼ直滑降で滑ってもスピードが出ずに何とかなる感じだ。逆に傾斜が緩いところでは先に進まず、往きに付けたトレースの上を辿った(YouTube)。ニッタ君とエナさんは何度もこけていたのだが、深雪に埋まって抜けられなくなり結構消耗していた(写真)。他は上手くてサクサク滑っている。
[f:id:seishu:20130224121828j:image:w360]
標高2200mのところで昼食の休憩。12:40。2013年カタログからはついに落ちてしまった(廃版になった)モノポールシェルターを広げ、9名で包まる。やっぱりシェルターの中は温かい。昨年の反省を踏まえて買った甲斐があったと思う。テルモスの湯がある人はそのお湯で、それ以外はガスストーブでお湯を沸かしてカップラーメンを食べた。ついでにぜんざいを作る(写真)。ポカポカと温まってほっと一息つく。シェルターには雪が降り積もる。フロアレスのモノポール構造のシェルターでは、このモンベルのモノポールシェルターが一番安かった。他には、ファイントラックのポットラックブラックダイヤモンドのメガライトがあり、それぞれかっこよくて魅力的なのだけど、少々値が張るのが悩ましいところ。でも一つ持っていると複数名での山スキーの際には結構重宝すると思う。
[f:id:seishu:20130224130100j:image:w360]
13:20に撤収し、残りもサクサク下って、最後の急斜も一名転がり落ちて行った以外は問題なく、あっという間にスキー場についた。今回は天気が悪過ぎてあまり先へは進めなかったけれども、そこそこの深雪を滑ることが出来たのは嬉しかった。
スキー場も吹雪いていて真っ白で、斜面が何も見えなかった。回数券が余っていたので、レストハウスの前に荷物をデポしてリフトに乗って滑る。やっぱりスキー場は快適だ。その後スキー場を下って行って、鈴蘭小屋には14時半ごろ無事到着した。今回も誰も怪我なく済んだことにほっと一息つく。
スノーシュー隊に参加してたアサハさんが戻ってきていて、吹雪であまりにも寒く、持っていった食材も凍りついていたのでチーズフォンデュー・チョコフォンデューは途中で諦めたこと、他のみなさんはさらに歩くことを希望したため、まだ戻ってきていないことを聞く。こちらの隊は、豪華な飯こそなかったが、モノポールシェルターに包まれながら、カップラーメンを美味しくいただいたので、その意味では勝ったな、と思った。それにしてもやっぱり今日は相当寒いみたい。痛いほど冷たかったゴーグルと目出帽の隙間は、軽い凍傷で皮膚が変色してしまっていた(→ 一週間後には跡形もなく完治)。
スノーシュー隊が帰ってくる前にさっさと温泉に入る。流石に体が冷えていて、指先がじんじんと温まる。平和で幸せなひととき。この鈴蘭小屋の温泉は熱過ぎずぬるくもなく本当に気持ちがいいと思う。窓の外は雪が降り続いていた。温泉を上がってしばらくするとスノーシュー隊が無事帰還。みなさん顔にはお腹が空いた、と書いてあった。
片づけをして、干しアンズも買って、16時半を過ぎて帰路につく。鈴蘭小屋のご主人、今年もありがとうございました。雪道を慎重に下る。今回借りたトヨタのノアは、オートマだがギアを7段階で選べるようになっていたので、エンジンブレーキをしっかりと効かせることが出来て楽だった。途中でレンタルスキーを返却し、松本の事務所でスノーシュー等を返して、無事解散。松本の事務所から諏訪湖SAまではクッシーに運転してもらった。諏訪湖SAではみなおやきを食べ、18:30に再出発。渋滞に巻き込まれることもなくスムーズに進み、新宿駅には20:40には到着した。6名のうち4名がここで降りる。みなさまお疲れ様でした。
その後は、別の駅でもう一人を下ろした後、家に寄って荷物を下ろし、その後ガソリンを入れ、そして21時半を過ぎてようやくレンタカー屋に返却する。今回の走行距離は542km、燃費は12.7km/Lだった。家に帰るも相方はまだ仕事から帰ってきていなかった。簡単な晩御飯を済ませ、お風呂に入り、ついでに洗濯もしつつ相方の帰りを待つが一向に帰ってくる気配がない。いつもは帰ってくるまで起きて待っているのだが、朝早かったこと、そして山スキー&運転で疲れていたので、0:30を過ぎると流石に力尽きてしまい、一足早く眠りについた。
毎年恒例の乗鞍合宿。今年は二日目が吹雪となってさほど上までは行けなかったが、そこそこの雪質でスキー滑降を楽しむ事が出来た。ただ反省点もチラホラあった。それらは今後の山に活かしていきたいと思う。


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)