尾瀬山スキー 初日(メッケ田代)

全然眠れなかった。30分ごとに車が来て、その度に待合室に人が訪れるのだけど、待合室には自動点灯ライトがついていて、人が訪れる度にライトが点灯した。さらに、天気は大丈夫だろうか、という不安が眠りを浅くしていた。3:40に最初のタクシーがやってきた。その後タクシーが並び始める。4時に起きるつもりだったが、眠れないので起きて準備をする。外は雪が降り続いていた。
4:40に出るというバスはやってくる気配がなく、4:50にタクシーに乗って鳩待峠に向かった(バスでもタクシーでも片道900円/人。なおバスの出発時刻の10分前からはタクシーには人を乗せない、という協定があるとのこと)。昨晩遅くに引き返したところも過ぎて、上に向かう。吹雪いている。道路には雪がかなり積もっていて、つくづく車で入らなくて良かったなぁと思った。5:15に鳩待峠に到着。たくさんの車が停まっているが、ノーマルタイヤの方がいれば相当厳しいと思う。
鳩待山荘に寄ってカナハナさんが挨拶してから、出発の準備を整える。外は吹雪。率直に言って、これだと平ヶ岳はとてもではないけど厳しいな、思った。そして5:40に出発。
季節外れの吹雪のため、トレースは皆無だったのだが、全面がパウダーでスキーで滑るのはすっごく快適だった。適当に滑っていくと、ハトマチ沢の手前の尾根に引き込まれて、スキーを脱いで登り返し、夏道のあるところまで戻った。沢はスノーブリッジが大分無くなっている。でもこの吹雪で、その上に雪が積もり、スノーブリッジにどこまで信頼が置けるのか、全然分からなくさせていた。
その先もさっくりと滑っていくが、高度を下げてしまった(夏道は高度を下げずにトラバース)ので、ワル沢が合流する先でスキーを脱いで河原に降りる。途中の小さな沢のスノーブリッジを渡るところがどこまで耐えられるのか全く分からず緊張した。そのまま川沿いを歩いて進む。ヨセ沢を過ぎて標高1460mのところで、川まで尾根がせり出していたので、ちょっとした急斜面を登り返している途中で、ザハくんがエッジを効かせながらもズリズリと2mほどズレ落ちていった。ここは気を取り直してつぼ足で登ったが、たまに太ももまで雪に埋まって消耗した。
その先は延々と川沿いを電柱を見つつ、ラッセルしながら進む。1410mの川上川にかかる橋の手前200m程のところでこちらに向かってきた人にようやく出会う。相変わらず吹雪いている中、橋を渡って、間もなく、8時にようやく山ノ鼻に到着した。ビジターセンターは閉まっていたので、山の鼻小屋に向かい、中に入る。カナハナさんが小屋の主人と話をしている。荷物を乾燥室に置かせていただき、さらに温かいココアと茶菓子をいただいた。流石。
計画を練り直す。まず、天候が悪すぎた。さらに寡雪の上にフカフカの雪が降り積もって、スノーブリッジの安全性の判断が全く出来ない。そして視界も芳しくない、その上、少なくとも今日一日中は天候が悪い見込み、とのことだった。そんなこんなで流石にこのコンディションで平ヶ岳に突っ込むのはいくらなんでもリスクが高過ぎる。ということで平ヶ岳は諦めるとして、その一方で季節外れの極上のパウダースノーがあたり一面を覆っているのでどこか滑りに行かないのは勿体なさ過ぎる。地図を眺めながらう〜んと悩んでいたが、ここ標高1400mの山ノ鼻を出発し、小テンマ沢の北の尾根を辿って、標高1780mのメッケ田代(高層湿原)を往復するプランを立てる。登山計画書上にないコース取りのため、緊急連絡先にしている相方に公衆電話から電話して、プランの変更と今後の行程を伝えておいた。
外は寒いので、このまま小屋の中に居着いてしまいそうな雰囲気すら漂っていたが、極上パウダーを目指して、泊り装備等の余分な荷物を置いて、9:25に山ノ鼻を出発した。雪は相変わらず、降り続ける。
1410mの川上川にかかる橋からコンパスを145°に切ってピンポイントで取りつく尾根に向かった。スキーラッセルしながら進む。尾根に取りつき、高度を上げていく。1530mで最初の休憩。さらに先に進む。ネズコ(クロベ)の大木が生えている。1600mあたりからは傾斜が非常に緩くなった。ブナの森を歩いていたが、オオシラビソの森の中へと入っていく。北欧のおとぎ話に出てきそうなメルヘンチックな森の中を歩く。時々風が強く吹いて、オオシラビソの葉に積もった雪がどっと落ちてきて視界を遮っている。ただ、それ以外は不思議な静寂を保っていて、この森の中を黙々と無心になってラッセルした。1620m付近で休憩。南向きの風から北向きの風に変わる。その先は、1700mのあたりから傾斜が増してくる。吹雪いていて、視界は良くない。気圧は下がってきていた。そして、11:30に標高1780mのメッケ田代に到着。突然森が開けて雪原が広がっている。僕がここに来るのは10年ぶり。こんな風景だったなぁと懐かしい気持ちになった。

メッケ田代ではフライシートを張って、休憩。各々スープやお茶を飲み、おにぎりやパンを頂いた。吹雪を遮るフライシートが一枚あるだけで随分と休憩の雰囲気が違ってくる。こうしたホッとする空間は結構好きだ。
30分ほど休憩して、記念撮影した後、12:05に出発(一番上の写真)。最初は平らなので、200m程戻って、シールを剥がす。カナハナさんのスキーが滑らないというので、滑走ワックスを塗ってもらった。期待が高まる中12:20に出発。
1770mから1700m付近までの斜面は、適度な斜面で雪質は最高で、とてもよかった。みな雄叫び(?)を上げながら、吸い込まれるように滑り下りていく。その先の傾斜が緩いところは、往きに付けたトレースを辿りながら進む。と、一番パウダーに適したファットなスキーを持っているザハくんが、どうもスピードが出ていない。スキーの滑走面を見るとびっしりと氷がついている。こりゃワックス塗らなければダメだな、ということで、止まってワックスを塗る。ちなみに自分の板は、ホットワックスのおかげで快適な滑り心地。ワックスの重要性を知る瞬間だ。
気を取り直して、出発。滑るようになったらしい。よかったよかった。緩やかな斜面をゆるゆると下る。1600mを過ぎて滑り応えが出てくる。
1500mの下は尾根上から少しだけ逸れて北側の沢状の横斜面を垂直に下っていく。フカフカパウダーで急傾斜でも全く怖くない。樹林の間を一気に駆け下っていく。いや〜良かった。平ヶ岳には行かなくなったけど、季節外れのパウダーを楽しめて、本当に来てよかったなぁと思った。
1420mまで降りてきて、休憩。13:05。その後はシールを付けて山ノ鼻に向かう。13:35に山の鼻小屋に到着。

 初日をまとめた動画はこちら(YouTube)

 滑りのハイライト動画はこちら(YouTube)

 珍しく僕が滑っているところを撮ってくれた動画はこちら(YouTube、登山靴スキーです)

荷物を回収して、ビジターセンターの横のテント村の一角にテントを張った。相変わらず雪は降り続く。
テントを張った後は、山の鼻小屋に戻り、生ビールで乾杯した。尾瀬の雪の情報を教えてくれた 片品・山と森の学校の安類さんもいて、ルートについていろいろ伺った。睡眠不足のところに生ビールを二杯飲んだら結構フラフラになった。15時半を過ぎてテントに戻る。
今宵のご飯はいつものポークチリビーンズとアルファ米。美味しかった。料理をしていたら、先月購入したプリムスのエクスプレススパイダーストーブの調子が急に悪くなった。火力が全然上がらなくなる。なんでだろう。戻ったら修理に出さねば。
晩御飯を食べた後は、ダラダラと飲みながら、水作りをやった。みな睡眠不足で寝てしまいそうになっている。さっさと寝ましょう、ということになって18:30を過ぎて寝る準備を始める。4人用テントなので、広い。僕はさっさと寝る準備を整え、早々と眠りに着いた。外は雪が降り続いていた。


※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)