奥多摩 巳ノ戸谷 沢登り

朝4時に起きて準備を進める。昨晩寝たのは0時を回っていたので流石に眠い。明け方の街を歩いて駅へと向かう。始発電車に乗って八王子へ。6時に八王子駅で無事ザハくんと合流して、ザハくんの愛車に乗って奥多摩へと向かう。
今回の沢は、奥多摩の日原川の巳ノ戸谷(みのとだに)。ルートグレードは1級上から2級程度に位置付けられている。忌山(いみやま)の悪場と呼ばれるゴルジュ・連瀑帯があって、その通過がポイントとなる沢だ。そこにある8m滝は手前の4m滝の下からまとめて巻くことが出来るのだけど、この登りがこの沢の核心部とのことで、そうなるとやっぱり登ってみたく、そして登るとなるとそれなりに緊張もしていて、さてどうするか、と思いながらここ数日を過ごしていた。
東日原の集落を越えて、7時半過ぎに八丁橋に到着した。準備を整え、7:47に出発。林道をテクテク歩く。途中ゲートがあって工事関係車両以外は止められていた。沢登りを行うであろうパーティーも何組かいたが、我々は先頭を行く。
7:57にガードレールの隙間がある地点(ガードレールに赤ペンキあり)に到着。ここから沢に降りていく。細い山道で道ははっきりしているが、段差があるところもあるので要注意。5分ほどで日原川の本流に到着した。ここで沢の装備を整え、8:10に出発。
すぐのところに巳ノ戸谷の出合がある。日原川本流を渡渉して、入口で高度計を720mにセットして進む。しばらくは平凡な沢。踏み跡はしっかりしている。8:10に15m大滝に到着。水しぶきが気持ちいい。この滝は登れないので、少し戻って左岸を巻く。
その先しばらくは平凡な渓相が続く。大畑窪を過ぎて8:40を過ぎて、忌山の悪場のゴルジュ・連瀑帯に到着。さてさてさて、と気合が入る。
最初の小滝群は、中央、そして右から、と越えていく。そして出てきた4m滝、その後ろに8m滝の核心部(写真)。8:45。4m滝は落ち口へのトラバースに気を付けながら右から巻き気味に登る。確実にホールド、スタンスを拾っていけば、難しいわけではない。そして、核心の8m滝。左壁にスリングが3本ほどぶら下がっている。苔に覆われた緑色の壁を滑りやすそうだなぁと思いながら眺める。
よし、やっぱりここはこの壁を登るか、ということで、リードすることにした。どうする?とザハくんに聞くと、いっ、行きます!とのこと。ホッとしたのだけど、本当に大丈夫だろうかと思って、もう一度確認すると、じゃぁここはぉねがいしますとのこと。やっぱりここを通過しないとその先はない。ここ数日、毎朝毎晩、随分と鈍っていた握力を鍛え直していたので気合も十分。アンザイレンし、それでは宜しく、と登攀を開始する。
最初は左から巻き気味に登る。途中にある出っ張り気味のしっかりとしたホールドを掴んで、右に体を移し、そこから左壁をまっすぐ登る。やっぱり滑りやすくなっていて、登攀開始早々、右足を軽く滑らせて、滑りやすい場所だなぁーと痛感した。残置スリングはなかなか素敵なところについていて、最初の残置スリングにはカラビナを一枚通してランナーにした。滑りやすいのでホールド、スタンスを確実に決めながら登る。2つ目の残置スリングのところは、ハーケンの穴が塞がれていないのでヌンチャクをかけてランナー(ランニングビレイ)にする。最後の残置スリングはスリングにヌンチャクをかけて登った。その先は少し不安定なスタンスにも乗りながら慎重に登る。ホールドは、多くはないが割としっかりしているので、慎重に行けば問題ない。無事登りきった時は流石にホッとした。確かな充実感。一段高いところにある立木をアンカー(確保支点)としてお助け紐でセルフビレイを取って落ち口まで戻って“(ビレイ)解除”と声を上げた。ほ。

続いてザハくんが登る。途中一か所足を滑らせていた(テンションまではかからず)。滑りやすいですねぇと言いながら無事登り終える。巻かずに無事登り終えて嬉しかった。9:20。

その後も滝が続くが、右から越えたり中ほどを行ったりと楽しく登れる(濡れはする)。そして忌山の悪場の最後に出てくる倒木がかかった6m滝。9:30。かつては左壁に小さな倒木が立てかかり、これを使って取りついていたそうだが、今はない。右壁からも登れるとのことで、右壁から取りつくことにした。一応ロープを出そうと話をして、ザハくんに沢での初リードを任せることになった。
登り始めは割と細かめだが怖くはない。右側を登って、立木にランナーを取る。その先のトラバースがこの滝の核心部で、登ってみると案外怖い。でも残置スリングもあるし(使わなかったけど)、残置ハーケンもあるのでその場所でもランナーは取れる。ただ見た目よりは怖めだった。ザハくんにつづいて、僕も登る。今回ザハくんは先週買ったばかりのハンマーを持ってきているのだけど、そのハンマーで、ピカピカのハーケンをリス(岩溝)に叩き込んでいた。そこには、これから永く愛用する道具を使っている、という充実感が漂っていた。9:50。
鞘口窪を通過し、その先の大釜をもつとの記述のあった4m滝は、釜が埋まっていたので右壁に簡単に取りついて越える。その先の左岸には大きな崩れがあった。いくつもある小滝をサクサクと越えていく。10:10に6m滝に到着。左壁を直登する、との記述があるが、この滝は右側を巻き気味に登った。巻きは難しくはないが高さはあるので慎重に。その先は小滝が連続する。サクサクと登る。岩が被った4m滝は割と見栄えが良くて、はしゃぎながらシャワークライムを楽しんだ。
そして8mの直滝に到着。10:30。見た目の迫力は十分な滝だ。壁に近づいても下から見るとそれほどホールド・スタンスがあるようには見えないのだが、ホールド・スタンスはしっかりしている滝とのこと。ここもザハくんリードでロープを付けて登ってもらう。ビデオカメラをセットして、登攀開始!
下段はリッジ状を登り、中段でリンクカム#2番でランナーを取っていた。上段はそのまま直登。登りきって立木でアンカーを取っていた。続いて僕も登る。確かにホールド・スタンスはしっかりしている。ただ高さはあって割と立っているので、ロープは付けた方がいいだろう。無事登って、プチ休憩。10:45。主なポイントが一通り終わってホッと一息ついた。

この先は、小滝を簡単に登りながら先へと進む。孫七沢を過ぎて5分ほど進むと、ドラム缶が滝壺の中に埋まっていた。林業で使っていたものだろう。小滝は豊富にあって、サクサクと進むが次第に倒木が増えてくる。美しいスダレ状の滝で合流する五平窪には11:10に着いた。その先は小滝と倒木のハーモニーが広がっている。倒木帯を越えて、少し進むと(1210〜30mぐらい)、左岸にガレガレの涸れ沢があって、踏み跡らしきものも見えるのでそこで遡行終了とした。11:20。
コッヘルとガスバーナーを出してお湯を沸かし、お茶を飲む。今日は成城石井のチーズケーキは無くて、代わりに小さなチーズタルトを買ってきた。お茶を飲みながらお菓子を頂く。楽しい沢だったねー、でも初回者にはちょっと厳しいねー、滝を全部登るとやっぱり2級下ぐらいのグレードにはなるねー、というような話をしていた。
11:45に出発。まだハーネスとメットは付けたまま。ガレガレの斜面を慎重に登る。斜面から沢筋に辿りついたところに山道が付いていた。無事山道に乗ってホッとする。11:48。
その後は山道を歩く。かつての仕事道。林業用の小屋の跡にはたくさんの空き瓶が転がっていた。さて、大ガレところまでやってきた。12:00。そのまま行くとガレガレのところをトラバースしてその先にはトラロープが付いているのだが、怖そう。そこで、20mほど木を支点にして垂らしたお助け紐を掴みながら下って、ガレガレ斜面が恐怖の涸れ滝となる手前(の少し上)をトラバースする。涸れ滝の真上のトラバースは怖い&恐怖なので、少し上を上がること。その後急な斜面に両足をねじ込み、木の根を掴み、気休めでハンマーを斜面に叩き込みながら、そろりそろりと登った。空にはヘリの爆音が響く。2回ほど周回してから飛び去っていった。近くで何かあったのだろうか?
12:15に無事ガレの巻きを終えて、その後はサクサクと歩く。途中一か所左上に延びていく分岐を見送り右へと進む。途中立派なブナの木があった。アサギマダラも飛んでいた。
12:45頃、分岐が出てくる。ここで尾根を一本手前と勘違いしていて、この分岐を右に曲がるかどうか迷ったが、結果的に右に曲がって正解だった。この場所は尾根筋を道が延びていて、こちらからなぁと思いながらもそのまま左に行ってしまっても、その先30mほど先で尾根筋に戻るような道が付いている(黄色テープあり)。そのままトラバースを続けてしまうとまずいので要注意。必ず右折すべし。遡行図には明記されていないので注意が必要。ここでどちらに行くかで下見をしたこともあり、15分ほど時間をロスした。

さて、その正解ルートだが、これが案外怖かった。最初は尾根筋をジグザグと降りていくのだが、その途中の部分では落ち葉に埋もれていてややわかり辛いところあり。一か所道を見失って尾根の右筋に見つけてホッとする。その先は急斜面の横を細いトラバース道が続いていて、足を滑らせて落ちたら止まらないだろうなぁというところをずっと歩いていく。スピードは出せないところだ。岩とかが出てくるわけではないけど、細くて落ち葉が積もって滑りやすそうで、落ちたらヤバいので、登山道の中では危険な部類に入るとは思う。そんなことで、無事日原川の流れが近づいてきた時はホッとした。最後は立派なつり橋を渡って、13:35に無事林道に出た。ほ。
装備を片付けてから林道をダラダラと歩いて戻る。13:55に無事八丁橋の手前の車を停めたところに到着した。
装備を片付け、家から持ってきたメロンを切って食べる。一人でメロンの半分を食べるという贅沢の極み。熟し具合もちょうどよくて美味しい!いや〜満足。周りには早速香りをかぎつけたショウジョウバエが多数寄ってきていた。

その後は、車に乗って、奥多摩駅の近くのもえぎの湯へ。まだ15時前なので空いていた。温泉で体をほぐして、温泉上りにビールを一杯頂き(ザハくんは運転するのでコーヒー牛乳)、その後奥多摩駅まで送ってもらって解散。ありがとうございました。
そして、16:23発のホリデー快速に乗って都心に戻ってきた。


■今回の沢の様子をまとめた動画はこちら(YouTube、10分)


晩御飯は相方が作ってくれた。メインディッシュはウナギ!今年初めてのウナギだ。めっきり食べる機会が少なくなったウナギ。小さな切れをありがたくいただいた。


どの遡行図にも大抵は出てくるかなりメジャーな沢の割には行く機会に恵まれなかった巳ノ戸谷。核心部も無事正面から通過して、なかなか充実したひとときを過ごすことが出来た。一度行ったので今後は初心者でもつれていけると思うが、初回者にはちょっと厳しいだろうと思う。あとは下山路が、あまり良くない。特に1050mからつり橋までの下り尾根が案外怖かった。この1050m付近の山道の分岐は遡行図に明記されていないので、注意が必要かも。何はともあれ、無事怪我なく終わってホッとした。次からも安全に楽しく登りたいと思う。

※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)