大荒川谷沢登り 初日

朝4:30に起きる。睡眠時間が短いので流石に眠い。よく晴れていて星空が美しい。空高くにアンドロメダ大星雲がぼんやりと見える。スバルも出ていた。その美しさにしんみりとしていた。
朝ご飯を食べ、トイレを済ませる。既に釣り人が何人か奥へと進んでいった。5:30に出発。ザックを背負って歩く。矢竹沢の先の分岐を5:50に通過して、トロッコ軌道跡を歩いていく。

途中で休憩。6:40に赤沢谷出合に到着。ここから入川の本流を経由して大荒川谷に至るコースを選択している記録もたくさんあるのだけど、この先も登山道を行く。
橋を渡って、ブナ林の中を歩く。秩父の美しい森だ。
8:25頃入渓点の「十文字峠 川又」の看板に到着。でも入渓点であることに自信を持てず、その先を確認に行き、結果的には8:40頃ここに戻ってきた。そう、11年前はここを見落としてどつぼにはまったところだ。自分の中の誤った記憶では、入渓点の看板は進行方向左側にあったような気がしていて、今回も右側にあるこの看板に自信が持てなかった。勘違いは恐ろしいな。
入渓点の先の踏み跡は赤テープが付いていた。20分ほど下って大荒川谷出合の真ん前に降り立つ。9:00。入川の流れが美しい。ハーネスを付けてメットを被り入渓の準備を済ませる。

正確にはここは金山沢の出合だ。大荒川谷となるのは標高1300mで合流する小荒川谷の先からなのだけど、あまり気にせず全体を大荒川谷と呼んでいる。高度計の高度を1030mに合わせて、9:20に入渓。気をつけよう、と身を引き締める。入って間もなく、早速泳げる淵が出てくる。胸まで使って早速はしゃぐ。

2m滝はザハくんとチシキくんは泳いだ後水流沿いを見事に突破。カナハナさんと僕は残置ロープを使いながら右岸を巻いた。小滝と釜が連続する。沢は北向きなので薄暗いところも多いのだけど、くねくねと屈曲しているので時々光が差し込み、水面がキラキラと輝いて美しいの一言。苔に溢れた美しい森の中を歩いていく。登れない滝は左岸から簡単に巻けた。
この沢の記憶はほとんど残っていないのだけど、5m滝を見た途端、12年ぶりに記憶が一部舞い戻る。そうそうこんな場所があったなぁと懐かしむ。この滝も左岸を巻いた。
1120mの陽のあたるところで休憩。10:20。チョコレートをかじった。10分ほど休憩した後、出発。
僕の中では大荒川谷はナメが続く沢のイメージなのだけど、案外ゴーロ帯も長かった。印象的な場所以外は忘れていくものだなぁと思う。1160mの左岸のスラブ帯のところではその対岸にある大きなサワグルミの木が印象的だった。
ゴーロ帯を歩きながら時々出てくる小滝、そして釜で遊ぶ。泳ぎを苦手としていたカナハナさんだが、腰ベルトを腰の低い位置でしっかりと締めた方が泳ぎやすいことを伝えていたところ、今日は結構スムーズに泳いでいる。なかなか。
11:15に標高1210m付近のゴンザの滝に到着。なかなか立派な良い滝だ。

この滝は左岸を巻いた。巻きの途中でゴンザの滝のすぐ上のところに出られるか見てみたが、懸垂下降が必要な様子。さらにもう一段上を巻く。少し急だが、降りられそうな踏み跡があった。ちょうどいいところに木があって、10mのお助け紐をダブルでかけて手がかりとして下る。降りたところには秩父漁協の看板があった。11:35。このすぐ前の右岸側にはビバーク適地があった。
11:50に3mCS(チョックストーン)滝が二つ続くゴルジュ帯に到着。巻いている記録も多いのだけど、そのままゴルジュに突入する。最初の3mCS滝は右の水流のないところを越える。難しくない。続く3mCS滝は、まずは5mほど泳いで左側に這い上がり、その後右側の水流の中を越える。

みなザックを下ろして這い上がってもらった後ザックを引き上げる。ここも見た目ほど難しくはない場所だ。12:10に出発。
簡単な滝を越えていく。程なく標高1300mの小荒川谷出合に到着。12:25。陽がよく当たって気持ちのいい場所だ。時間はまだ早いのだが、今日はここまでとする。小荒川谷の出合から大荒川谷を30mほど進むと、右岸に非常に良いビバーク適地がある(他にも場所はある)。ここにツェルトを2張張った。後続のパーティーが来るかなぁと思っていたのだけど、結局この日ここに泊ったのは僕たちだけだった。

ここでザックのサイドポケットに入れていたタモが無くなっていることに気がつく。写真を確認すると3mCS滝のゴルジュまではあったことが判明し、皆が薪を集めてくれている間に、僕は一人、空身で確認しに行った。と、途中の何気ない岩で足を滑らせて勢いよく水中の岩に左手をついたのだけど、それが思った以上に力がかかって、ピキリと筋が響いた。やばい、指の関節をやってしまったか?と焦る。恐る恐る触るがそれほど痛くはない。でもどうやら痛めたらしい。川の水に浸して冷やす。しばらくして触るが、折れていたりひびが入っているようではないらしい。また指をある程度曲げた状態で岩を持つのは平気だった。ただ指を広げた状態で強く押さえると痛いので、慎重に行動することにした。3mCS滝まで下ってきて探したが見つからず。残念、と肩を落としながらサイトに戻ることになったが、途中で何と途中の川底にタモが落ちていた。嬉しかった。その後は川虫を集めながら戻る。大きめのカワゲラを6〜7匹捕まえて、餌は確保した、後は釣るだけだとほくそ笑んだ。
サイトに戻ってからはお茶を飲んだ後、釣り竿を出す。少し上流まで竿を延ばしてみたが全然ダメだった。このビバーク場所では相当釣られているらしい。魚影も見えず、釣れる気配もなし。いなさそうなのはすぐにわかったので早々に竿を仕舞った。夕方遅くなって再度見て回った際には、ビバーク場所の20m下流の小さな淵で1匹だけ見つけたが、このイワナはスレていて、餌には近寄ってきたが食いついては来なかった。
15時前には焚き火を開始。晩御飯はポークチリビーンズとご飯。僕は米炊大臣として米を炊く。美味しく米が炊けて嬉しい。16時を過ぎて乾杯!今回350ccビール×2、500ccビール×2、梅酒500cc、日本酒250cc、ウィスキー350ccが持ち込まれて、つまみの手羽先、ソーセージ、(激辛だった)シシトウ、マシュマロを焚き火で炙りながら優雅なひとときを過ごす。気が付けばすっかりと暗くなって、せせらぎ、そしてパチパチと木が燃える音を聴きながら、夜の静寂を楽しむ。何気なく川岸の石を見ているとサンショウウオが現れた。かわいい!石をひっくり返すと他にもいて、3匹捕まえて眺めてはしゃぐ。澄んだ水と豊かな森の象徴だ。
21時頃。解散。僕以外はツェルトに入り、僕は外でシュラフカバーに包まって眠りに着いた。


※滝は「東京起点沢登りルート120」の遡行図と整合を取った。
※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)