大荒川谷沢登り 2日目

2時半ごろ寒さで目が覚める。ダウンジャケットを着るべきかどうか、逡巡しているうちにまた眠りについてしまい、3:45に目覚ましにしていたラジオが鳴って起きた。木々の隙間から満天の星が輝いている。昨日強く手をついて痛めてしまいバンテリンを塗ってテーピングで固定してあった左手の薬指・中指は、強く持つと痛みはあるものの、何とかなりそうでホッとした。起き上がると寒かったので薪を集め、火を付けた。暗闇が赤い光に揺らめき始める。
4時を過ぎてまだ寝ていた人を起こして、朝ご飯にラーメンを作る。気がつけば明るくなっていた。ラーメンをすすって体を温め、お茶をいただいた後、撤収開始。5時半には出られるかなぁと思っていたのだけど、何だかんだで遅くなって5:55にようやく出発!
まだ暗い沢の中を歩く。それほど大きくはないが4m滝、2段6m滝が続き、どちらも右岸を行く。昨日よりもさらに苔が増え、森の美しさは増していく。
6:20に標高1400mの10m滝に到着。大きく迫力のある美しい滝だ。この滝は左岸を巻くこともできるが、右岸を最初だけ巻き気味に登り途中から水流すぐ横を登って越える。

この先はしばらく小滝が続く。時々陽が射しこんで美しいの一言。
さらに先に進むと滝が連続する。3条の苔に覆われた滝のすぐ上に8m滝がある。6:50。割と立っている滝なので、先に登ったザハくんから、チシキくんとカナハナさんにロープを出してもらった。

難しいわけではないのだけど最後のところが少しホールドが少なめなので、ロープ確保しておいて良かったなぁと思った。ロープを出すのに結構時間がかかって、7:20に滝の上を出発。
すぐにゴルジュになって、ゴルジュの先に一軒直塔が困難そうな大きな滝(10m滝)が出てくるが、これは奥の滝の左側から簡単に登れた。そして、15m滝到着。7:30。
この滝はぼんやりと覚えていて、かつて来た時は僕が右から巻いて上からロープを出して、後続にリード練習をしたような気がする。でも実際はどうだったか。右壁はそんなに難しくなさそうなので、リードで取りつくことにした。
ザハくんリード、僕ビレイで、登攀開始。アンカーはハーケンで取った。ザハくんは滝の1/3程のところでリンクカム#1を噛ませて一つ目のランナーとするが、ここでロープが屈曲して流れが悪くなっていた。2/3の手前でリンクカム#2をセットして2つ目のランナーとして、そのまま上まで登り切る。上の立木でセルフビレイを取ってビレイ解除。
その後は、チシキくん、カナハナさん、僕と登る。


少しばかり滑りやすいところがあって、ちょっとだけ怖いなと思うところは滝の2/3程度の高さのところにあるが、全体的にホールド・スタンスは豊富で登り自体に問題はない。でも高度感は結構あるので直登するならロープは必ずつけるべき滝だと思う。無事終わってホッとした。8:25に滝の上を出発。
少し歩いて8:30過ぎに1570mの二俣に到着。12年前に泊った場所だ。懐かしいなぁ。この先も簡単に登れる滝と苔と美しい森が続く。1660mの滝の下で休憩。9:05。陽に当たって暖かい。15m滝の下では結構冷えてしまい、カッパを着たものの体が冷え切ってしまったせいか喉が痛くなり始めていたのでこの暖かさは嬉しかった。
いくつかの滝の後、最後の最後に2段15mの滝が出てくる。9:45。この滝も美しい。右から登る。

9:55に標高1790mの三俣に到着。左俣、中俣の二つが大きくて右俣は水が涸れていた。地図読みをやって、左俣を進む。苔がびっしり。小さなゴルジュ帯を越えて、さらに6m滝を越えて少し進むとガレが広がる。その手前1850mで水汲みをする。10:15。この先は水が完全に涸れたのでここで汲んでおいて良かった。
10:25に出発。すぐにガレた水の涸れたところに出て歩く。1900m手前から沢が二つに分かれて右俣に進む。やがてガレが落ち着いて倒木と苔が増えてくる。1970mで左俣に入り、その先2020mからは左の小さな尾根沿いを歩いた。11:10。

ここはコメツガとトウヒが広がる美しい森だ。苔がふっかふかで根の上を歩く。伝わる柔らかな地面の感覚。倒木に足を踏み入れるとスポンジのように柔らかく崩れていく。12年前この森を訪れた時、霧の中に陽が射しこみ、それが倒木更新の小さな芽を照らし出して、その美しさに心を奪われた。その感動が心の中に残り続けて、また来たいと思っていた場所だ。そうこの場所を訪れたくてまたこの沢に足を運んだのだった。足元にはカモシカの糞も結構あった。ひっそりとキノコが顔を出している。どこかメルヘンチックな森だ。この緑に溢れた静かな森の中を時々木をかき分けながら幸福感に浸りながら歩いた。
11:45に無事破風山の東の2178mピョコの東側詰め上がる。吹き抜ける風が爽やかで思いの外涼しかった。
沢装を解いて、12時に出発。尾根上の気持ちの良い道を歩く。リョウブの木を中心に鹿による樹皮剥ぎが結構あって、歯の後もたくさんついていた。12:30に雁坂嶺に到着。5分休憩してから出発し12:55に雁坂峠に到着。

景色がよく気持ちがよい。残っていたウィスキーを薄く割って、吹き抜ける風の下、皆でスコッチウィスキーの甘い香りと味を楽しんだ。
13:05に雁坂峠を出発。テクテクと歩いて、14:10に林道入口に到着。長かった。ここで10分休憩してから、陽のあたる暑い林道を歩く。流石に疲労感が漂う。バイクでにぎわう雁坂トンネルの料金所の横を通り、途中で右下に延びる小道(看板あり)を辿り、家族連れでにぎわう釣り場を越えて15:15に道の駅三富に到着!最後の下りは結構足に響いた。
今回温泉に入る余裕はないので、トイレで着替えて、富士山コーラと富士山サイダーを買ってから15:40のバスに乗る。登山客ばかりそこそこたくさん。そして16:40に塩山駅に到着。
特急は満席ばかりで、17:05のホリデー快速山梨に乗って新宿に向かう。ここで自然解散。みなさんお疲れさまでした。電車は結構混んでいて、僕は八王子駅まで座席には着けなかった。流石に眠くてうつらうつらとしていた。そして、家に帰宅した。


今回の沢の記録をまとめた動画はこちら(YouTube 13分半)


帰宅後は喉の痛みをとるべくうがいを繰り返す。しかし、どうもだるいので熱を計ると37℃の微熱があった。あらららら。体が冷えた時間が長かったのか。仕方がないので、ニンニクとオクラとソーセージのスープを作って、半額で買ったお寿司とともに頂き、さらにケフィアヨーグルトも頂いた。銀翹散を飲み、免疫を上げるべく熱い湯にしばらく浸かり、その後毛下をきて汗をかきながら寝た。おかげで翌朝は36.1℃まで熱が下がってホッとした。


ずっと再訪したかった大荒川谷。この奥秩父の奥にある素敵な森の中にある沢はこの週末も素敵なままだった。また、ほとんど覚えていなかったので初めて訪れた沢のように楽しめた。いつかまた機会があれば、訪れる事ができたらな、と思う。


※滝は「東京起点沢登りルート120」の遡行図と整合を取った。
※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)