東黒沢・ウツボギ沢 沢登り初日

朝4時半に起きて準備を進める。冷凍してあったアジ・サンマ・鮭の干物をザックに詰める。今回目指すは、何度も訪れている上越の癒しの沢、東黒沢と、12年前に途中まで往復したことがあるウツボギ沢。どちらもナメだらけの簡単な沢。秋が深まり始めるこの時期に、この癒しの沢を訪れて、大宴会を開きたいと思っていた。面子は、今シーズンの沢初参加となるツージーさん、そしてザハくん、僕の計3名。天気は良さそう。意気揚々と家を出る。
新幹線は東京駅6:36発。ただ、僕は何故か時間を勘違いして6:16だと思っていた。三連休中日とあって5:45に新幹線ホームに着くと割と混雑していたけれども、ここで50分も待つことになる。いやはや。ちなみに並んでいなくとも十分に座れる人数だった。ツージーさんがやってきて、新幹線に乗り込む。
越後湯沢駅に8:06に着いて、水上行の各駅停車に乗り換える。そして8:38に土合駅に到着。
電車を降りて、寒いな!と思った。ほんの数日前まであんなにも暑かったのに。風が強く、流れる雲が速い。もう一枚ぐらい上に羽織るものを持ってきても良かったなぁと思いながら空を眺めた。
ザハくんと合流して、荷物を駅にデポして、8:55に駅を出発。三連休とあって、車が連なっていた。その横を歩く。10分ほど歩いて辿りついた白毛門登山口の駐車場も満車だった。そのまま左岸の道を辿り、9:10に東黒沢入渓点に到着した。沢の準備を済ませる。
9:30に標高700mの入渓点を出発。昨日までの雨の影響もあって、水量は少し多め。水はかなり冷たい。秋なんだなぁとあらためて感じた。ゴーロを歩くとすぐにナメが出てくる。美しい。ただ癒される。この沢を初めて訪れたのは12年前。今回で4回目なのだけど、ここ上越(正確には奥利根側になるが)の森の中を歩ける喜びをあらためてかみしめていた。

さて、沢が久々でそして何故かザックが一番大きい(重さでは一番軽い)ツージーさんが少しフラフラしている。まだフリクションの感覚が取り戻せてなさそう。ゆっくりと歩く。そして、今年一緒に行った沢が割と登り系の沢が多かったザハくんは、このナメだらけの雰囲気に癒されていた。
ハナゲノ滝には10:05に到着。解放感のあるところ。半分ほど登って、その先は右岸のしっかりとした踏み跡を辿る。

その先もナメが続く。陽が射しこみ、キラキラと光る水面に心を奪われる。世界は美しいな。
10:25に標高820mの白毛門沢出合に到着。休憩。ブドウをつまむ。これはなかなか好評だった。10分ほど休憩して出発。東黒沢本流を進む。
その少し先の淵でみな感嘆の声を上げる!何とドングリだらけの淵があった!!!グルグルと回りながら滞留している。すごいなぁ!ここまでドングリに特化した淵を見たのは初めてだった。

その先は、ひたすら癒されながら歩く。ブナの森、美しい流れ、続くナメ。

標高870mの淵には10:50に到着。暑い時期なら水に入って突破するのだけど、今日は左岸から巻く。落ち口はお助け紐を出して手がかりとした。ツージーさんが少しだけバランスを崩して手を擦っていた。
7m滝には11:05に到着。簡単な滝だけど、久々のツージーさんのためにザハくんがロープを出す。ロープワークも慣れてきたなぁと思いながら、様子を見ていた。

その先がこの沢のハイライト。美しいナメが延々と続く。心が癒されっぱなし。

11:25に標高910m沢を過ぎ、段々滝を登って11:35過ぎに標高950mの金山沢出合に到着。日の当たる中を進んでいくと、上から3名のパーティーが降りてきた。父・母・息子の親子だろうか。それでは、と言って先へと進む。
その少し先で、ツージーさんが何でもないところでずっこけて右手の掌を強打していた。よそ見をしていたらしい。見たところただの打撲で済んでそう。ただ、押さえると痛いとのことで、少し先で休憩して治療する(痛い場所にテーピングをしてバンテリンを塗ったぐらいですが・・・)。11:45。20分ほど休憩した。そして荷物を少し分担することにした。
気を取り直して出発。12:10に15×40m滝に到着。右壁を登る。難しくないのだけど、手を痛めたツージーさんのためにザハくんにはロープを出してもらった。慎重に登る。

その先は随分と水量は減っては来ているが、まだナメが続いている。小滝を越えながらゆっくりと歩いていく。1040mの沢を12:40に過ぎて、13:00に1080mの二俣に到着。右俣に入る。
その少し先でたわわに実るサルナシの実を発見!。摘み取ってパクリと食べる。キウイフルーツの濃い味が口の中に広がる。美味しい。たくさん生っていたので、少し摘み取っていただいた。山の恵みを感じるひととき。
小滝を越えながら詰めていく。少し雲がかかって雨がぱらつきかけたが、すぐに収まった。ブナの森が広がる。

標高1270mで水汲み。そして1350mの丸山のコルには14:15に詰め上がった。ここを訪れるのは5度目だ。初めて来たのはもう14年前のこと。あれから随分と月日が経ったなぁと感慨にふける。
さて、ウツボギ沢一ノ沢の下降に入る。踏み跡を辿って、沢状地形に降り立ち、しばらくするとすぐに水が湧き出てくる。ブナの森の水の豊かさがよくわかる。山を一つ越しただけなのだけど、反対側の奥利根の森は既にすっかりと秋が深まっていた。葉が落ちた森が広がる。それは美しさに加えてどこか侘しさも感じる風景だった。
ウツボギ沢一ノ沢は、何箇所かお助け紐で手がかりロープを出した(ほとんどザハくんが出した)。手を痛めているツージーさんはそれを使って懸垂下降していた。案外時間がかかって、15:20にようやくウツボギ沢本流に到着。川上からは焚き火の煙が流れてきていた。この合流点にもビバーク適地はあるのだが、ちょっと狭いので、下流に探しに行く。広川原のビバーク適地には割と大人数の1パーティーが陣取っていた。今日は雨の心配もないので、そこよりは少しだけ上流の右岸の川原に泊ることにした。標高は1190m。
ツェルトを2張張って、薪を集める。僕は広河原の先のナルミズ本流の右岸側から大量の薪を集めてきた。まあこれだけあれば一晩は持つだろう。

今日の晩御飯は豪華絢爛。白菜・大根・ネギ・キノコ等と味噌漬け豚肉を入れた豪華な鍋、ご飯、魚の干物(アジ・サンマ・ツボダイ)等等。大根は一本丸々持ってきたので、それで大量の大根おろしを作る。陽が暮れ始め、上弦の月が梢の上に輝く。焚き火の傍で、まずは1.7?持ってきたビールで乾杯!美味しい。鍋は美味しかった。そして、魚の干物を焼き、シシトウを焼き、と楽しい時間を過ごす。三岳のお湯割りが体をポカポカと温めてくれる。見上げれば広がるのは満天の星空。絶え間なく続くせせらぎの音。でも不思議な静寂もそこには広がっていた。

21時を過ぎて解散。ザハくんとツージーさんはそれぞれのツェルトで、僕は外でシュラフシュラフカバーに包まって眠りについた。


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