中ア 西横川 沢登り

夢を見ていた。朝5時に起きよう、と行っていたのだけど、4:45に早くもロープウェイ駅のスタッフの方々の車がやってきて、目が覚めた。外はまだ暗く星が残っている。今日もいい天気だ。5:15を過ぎると早くもバスの第一便がやってきて、その後はバス・タクシーが続々とやってきた。急かされるようにこちらも準備を整える。駐車場の一番下の端っこで寝ていてよかった。ロープウェイ駅の入口に近いところだったとしたら、かなり落ち着かなかったと思う。
5:50に出発。3分ほどでしらび橋に到着。橋の左岸から踏み跡を辿って沢床に降りる。ここで沢装備を身に付け、6:00に出発。標高は1675mなり。
最初の堰堤は左岸に踏み跡があったので僕が見に行ったのだけど、どんどん上へと延びてしまう踏み跡で×。右岸から簡単に越えられる。
その後はすぐに沢を分け、二つ目の堰堤が出てくる。これも右岸から越えるが、最初がスラブをフリクションを確かめながら登るので、みなどことなく緊張感が漂っていた。
テントが張れなくもない中州を越えて、小滝を越えると、岩が迫り出した標高1740mの東横川・西横川の分岐となる。東横川にかかる15m規模の滝が美しい。地図で場所を確認後、西横川へと進む。6:30
しばらくはゴーロが多いが、やがて滝が出てくる。岩質は上から下まで全て花崗岩。標高が高いこともあって日差しはきつくて、振り返ると雲海が広がっている。稜線近くは紅葉が美しい。標高を上げるにつれて、どんどん色づいてくるのを眺めるのは素敵だった。
さて、いくつか滝を越えて、30m大滝手前までやってきた。一つ手前の滝は滑らないように気をつけながら左岸を巻き気味に登る。そして30m滝。7:10。

見た目よりも簡単でホールド・スタンスが豊富な滝、ということで、まずはザハくんに登ってもらう。結構慎重にゆっくり登っていく。しばらくして笛の合図があってロープ必要なし、とのこと。うーん、どうだろうか、と思いながらもカナハナさんも確保なしで登ることした。ハラサワくんに続いてカナハナさんが登り、その後に僕が続く。
が、登りながらちょっと後悔した。確かにホールド・スタンスは割と豊富なのだけど、花崗岩の登攀にまだ慣れていないカナハナさんの登りをみていると、ひょっとして今滑ったりしないだろうか、という思いに駆られてしまい、さらに高度感が結構あって、ここで滑ったら木端微塵だよなぁと思いながら登っていると、なかなか緊張してしまった。
特に問題なく登り切りはしたのだけど、高さはあってもし滑り落ちるとやばいので、それほど慣れていない人には必ずロープは出した方がいい滝だと思う。
さて30m滝の後は、16〜18mのナメ滝で沢が二手に分かれる。1980mの二俣。7:25。

10分ほど休憩。その後右俣へと進む。
と、少し進むと割とすぐに2段10mほどのナメ滝が出てくる。左壁を登るのは難しそうで左岸巻きもしづらそう。ここは右から取りついてその後左に進みながら水流を横切って上に上がり、その先はリッジ状を行く。

僕が最初に登ったのだけど、やや不安を感じて、カナハナさんにはロープを出すことにした。斜めに生えたミヤマハンノキにスリングを巻きつけ結びで固定して、上からロープを投げる。長さは27mは必要。要らないかもしれないけど、花崗岩フリクションの感覚に慣れていないのだとしたら確保はしておいた方がいい滝だと思う。ザハくんとハラサワくんは確保なしでサクサクと登ってきた。

その後も滝が続いてぐんぐん高度を上げる。もはや遡行図のどの滝がどれなのかわからないでいた。8:10にこの沢で最も美しいと言えそうな滝群に達する。美しい。透き通った青空と赤や黄色の紅葉、花崗岩の淡い色、そしてその上を流れる清らかな水が相まって、本当に来てよかったなぁとみなで話ながら登っていく。

この滝の上部は少し滑りやすいところがあって、ザハくんにお助け紐を出してもらってカナハナさんを確保してもらった。その先も小滝が続く。
2180mの二俣には8:35に到着。その先の滝ではカナハナさんに手がかりスリングをハラサワくんに出してもらって、そして2270mの段々30m滝のある二俣(三俣)には8:50に到着した。ここでしばし休憩。とにかく景色が素晴らしい。

10分ほど休憩した後、段々30m滝に取りつく。最後の5m以外は段々となってはいるのだけど、案外滑りやすくて、結構傾斜もあるので慎重に登る。最後の傾斜が非常に強くなった5mの部分、右の水流沿いを越えるとの記述があって、ザハくんに取りついてもらったのだけど行き詰まりかけて下から見ていてヒヤヒヤした。その間にハラサワくんが左から巻き気味に登って上から手がかりスリングを出す。最後のところはホールドがないみたい。ここは下手に取りつかない方がいいなぁ。
カナハナさんにはロープを出してもらうことにして、僕はハラサワくんと同じコースを行く。水流の左から登るが、割と立っていて緊張する。岩の横の草部分のスタンスを見つければ最初の段はすんなり登れ、その先は水流中のスタンスに気付かないとちょっと厳しいと思う。
ザハくんと一緒のコースを登ることになったカナハナさんは結構苦労していて、さらにお助け紐で手がかりも出してもらった。無事登りきってホッとする。9:30。振り返った先には甲斐駒ケ岳から聖岳以南も含めた南アルプスのパノラマが広がっていて美しいの一言。そしてこの滝の上からは突き出た岩が見えて、それはもののけ姫のワンシーンを彷彿させるものだった。

さて、出発。その上の割と立っている5m滝は左から少し巻き気味に越えるのだけど、ワンムーブが案外難しい。ここもカナハナさんには手がかりスリングを出してもらった。
その上、2350mを越えると急に水がなくなり、水汲みをする9:50。左側から岩の隙間から水がコンコンと湧き出ていて、中央アルプス天然水をゴクゴクと頂く。冷たくて、すっきりしていて非常に美味しい。
岩清水の後は水はきれいさっぱり涸れて、花崗岩の乾いた小滝、岩、急なゴーロのツメとなる。スリップ・落石をしないように慎重に登るが、如何せん傾斜がきつくて息が切れる。しかし、見事に色づいたダケカンバの黄色、ナナカマドの赤色を眺めながら真っ青な空へと向かって行くのは素敵だった。本当に素晴らしい。

詰め上がっていくと急にトラロープが現れ、そこで長谷部新道に合流。右奥を見ると写真入りの遭難碑があった。10:20。この新道は完全に廃道で、不安定・所々不明瞭な踏み跡。50mほど進んで、広くなったところで沢装備を解いた。10:25。朝から標高差約950mを一気に詰め上がったので、流石に足は疲れ気味。
10:40に出発。不安定・所々不明瞭な踏み跡が続く。道に張り出した枝がうるさい。しばらく歩くと宝剣岳方面の稜線が見えてきて、その美しさに沸く。いやぁ、美しい。千畳敷カールが見えてくるあたりも大いに気持ちは高ぶった。実は中央アルプスに足を踏み入れるのは初めてなのだけど、やはりここも日本アルプスに数えられる場所なんだ、ということを強く感じながらその眺めを堪能した。


さて、この長谷部新道は30分程度という読みだったのだけど、荒れてきているせいか、45分かかって11:25にようやく一般道に合流。そこには「長谷部新道は危険につき立入禁止」の看板があった。
この先は一般の観光客、登山客ですっごく賑わっていた。千畳敷カールの眺めを堪能しながら歩く。

千畳敷カールの看板のところでは記念撮影をやった。

その後は足早にロープウェイ駅へと向かう。ここのロープウェイはすごく混むと聞いていて、運が悪ければ2〜3時間待ちもあり、ある意味での核心部であるとの記述すらあった。このため、混む前にロープウェイに乗ってしまいたかった。
幸い11:40に駅に行くと、12:26の整理券を配っているところだった。僕たちの15分後の人は1時間半待ちになっていたので、ギリギリそれほど混まない時間にくることが出来たのだと思う。
40分ほど時間があったので、茶店に入り、生ビールで打ち上げした。五臓六腑にしみわたる。これだから山はやめられない。ロープウェイ駅周辺の賑わいを眺めながら、至福のひとときを過ごす。
さて、その後は無事ロープウェイに乗る。標高2612mからわずか8分で一気に1700mまで下がる。途中植生が変わっていくのがよくわかった。また途中では完全に雲の中に入り、何も見えないところもあった。
しらび平では、デポ品を回収し、12:50の駒ヶ根駅行きのバスに乗る。駒ヶ根駅には13:42に到着して、急いで切符を買って13:49の岡谷行の各駅停車に飛び乗った。間に合った!車内のトイレで着替えてすっきりし、岡谷で15:05の特急スーパーあずさに乗り換えて夕方17:25ぐらいには新宿駅に到着した。


■今回の沢をまとめた動画はこちら(YouTube、8分弱)


家では相方が晩御飯を作ってくれた。感謝。早く帰ってこられて、一緒に晩御飯を食べることができて、ただそれだけのことなんだけど、本当に嬉しかった。
中央アルプス天竜川支流の中御所谷の支流の西横川。初級の沢と紹介されているが、花崗岩の大味なホールド・スタンスに慣れていない初心者をいきなりつれてくるのは厳しいと思った。ある程度慣れたメンバーなら問題はないが、若干バランスを要する場所もあるにはあるので、油断はしてはいけないと思う。
そして、今回は紅葉を本当に存分に堪能出来た。いや〜楽しかった。今年沢に行く日数ももう限られてきてはいるけれど、残りも楽しく安全にこなせれば、と思う。


※遡行図はこちらを使用。
※写真付き記録はこちら(お散歩観察会のページ)