休日 Parc national du Mont-Tremblant 二日目

夜半、二時を過ぎて目が覚めた。相変わらず雨が降り続く。テントの入口に重みを感じて叩くと小動物のような重みがあった。何だったのだろう?小一時間程目が冴えていたが、気がつくと再び眠りに付いていた。
そして、朝6時に起床。5時には起きようと思っていたのに…幸い雨は上がった。時間が無いので、とパンだけ齧ってごくごく簡単な朝食として、テントの撤収をした。7時前に車に乗って出発。同じキャンプ場内の、モンロー湖(Lac Monroe)に面した砂浜(手前に駐車場がある)に向かう。
朝の湖面は美しかった。湖面にはもやがかかっている。ちょうど朝の太陽が前方の山から昇らんとしているところだった。この後天気はまた悪化するのだけど、この時ばかりは少し青空も見えていた。
カヤックを組み立てる。このカヤックは、これまでも何度も書いたけど、空気を入れて膨らませるだけであっという間に組み立て上がるのがいい。


30分程で全ての準備を済ませて、7時半を過ぎていざ出発。針葉樹の森に囲まれた、この湖に漕ぎい出す。

プランとしては、まずこのモンロー湖を北に2.5km程進んで、そこから右側の水路に入って、オウ・ビーンズ湖(Lac aux Beans)とさらにその先に連なるアーサ湖(Lac Ersa)に向かい、また戻ってくるというもの。
出発早々、近くを泳いでいたカモが魚を咥えていた。決定的チャンス!とカメラを構えたが、既に時遅しで、水中に姿を消した。残念無念。
天気が悪いこともあってか、全然人がいない。広い湖を一人で占領した気分になりながら先へと進む。

湖畔の森の中にはキャンプしている人もいて、時々そうした息づかいも聞こえてきた。しばらく進むと先方からシーカヤックに乗ったお姉さまが颯爽とこちらへ向かってきた。手を振って挨拶して、さらに先へと進んだ。湖面は風で波立っているところもあれば、鏡のように静かなところもあって、湖面に映し出された森が、ただ、ただ、美しい。そう、スプルースのさわやかな香りは湖面にも漂っていた。

モンロー湖(Lac Monroe)の出口が近くなり、GPSに表示された地図を見ると、オウ・ビーンズ湖(Lac aux Beans)に連なる水路は2つあった。どちらなんだろうと思いつつ、とりあえず手前の右手の水路に向かう。しばらく行くと水草が繁茂して進みにくくなる。これであっているのかなぁと思いながら進むと、案の定、行き止まりになり引き返すこととなった。
モンロー湖まで一旦戻り、さらに先へと進むと、左手から川の流れ込みがあって(バックウォーター)、右側に水路が続くところにやってきた。

水は澄んでいるのだけど全体としては少し透明感のある茶色がかっている。所謂フルボ酸、フミン酸の着色がされているのだけど、流れ込みはやはり気持ち透明感が強かった。魚もちょくちょくいるようなのだけど、カメラを水中にかざしたがうまく撮れなかった。
その先は、少し浅いところが多く、カヤックの底を擦らないように気をつけながら進む。

湿原の中の細い水路を抜けていくと、オウ・ビーンズ湖(Lac aux Beans)に到着。

誰もいない。雨がぱらつき始めて、雨具をPFDの上から羽織った。さらにここを横断して、その先のアーサ湖(Lac Ersa)に向かう。パドルを漕ぐ手を止めると、静けさが漂っている。湖面にはカモが一羽。遠くに目をやると、山腹をゆっくりと上がっていく雲。天気がぱっとしなくて、どんよりとした感じではあったけど、ここカナダの森・湖の中で静かなひとときを過ごしている、ということは、ただ、ただ、嬉しかった。




さて、ここから引き返す。復路は進路もわかっているので何も心配ない。流れ込みの分岐を過ぎて、モンロー湖に戻ってきた。時間は9時半近くになったのに湖面にはほとんど人がいない。風が少し吹き始めたが、幸いにして追い風だった。快適にパドリングしながら進む。


途中でシカを見かけた。湖畔の木の葉を立ち上がってばりばりと食べていた。


よくよく森を見てみると樹種に寄っては何となくディアラインがあるような気がしなくもない。日本ではシカは増え過ぎて各地で軋轢があるが、シカの捕食者もいるここカナダでは、どの程度の生息数なのだろうか。
10時前に、出発した砂浜に戻ってきた。

砂浜では夫婦がアウトドア用の折りたたみチェアを並べてのんびりと本を読んでいた。素敵なひとときだ。本日のカヤック旅これにて終了。

と思ったのだけど、せっかくだから、FeathercraftのナローブレードのパドルFlickerを使っていようと思い、パドルを持ち替えて、再び漕ぎい出す。これが、びっくり、無茶苦茶漕ぎやすい!

前回・今回とメインで使用した赤色のパドルはワーナーのリトルディッパーというモデルだが、こんなに漕ぎ心地がいいなら、このフェザークラフトのパドルをメインにしてもいいぐらいかも。いや、本音をいうと、もう一本欲しくなった。4ピースに畳めるのは便利だし。う〜ん。でも今年中は無しかなぁ。
その後は、カヤックを手早く畳んで片付けた。読書していた夫妻が興味深そうに撤収の様子を見ていた。
撤収後は、僕も湖畔に折りたたみのチェアを持ってきて、湖を眺めながら、昨晩の残りのソーセージを加えたトマトにコミスープを作って、パンを齧りながらブランチとした。体が暖まってポカポカした。

この日のカヤック旅の様子はこちら(YouTube、5分半)

その後は、車に乗って、モントリオールに向かう。下界に向かうと、天気は次第に良くなっていった。田舎道を走った後、高速道路に乗る。

途中で、高速道路を一度下りて、ガソリンを入れた。少しの眠気を堪えながら、車を走らせる。モントリオールに近づくと交通量は非常に多くなり、高速道路を下りてからは特に慎重に運転した。そして、14時前に無事自宅に到着。荷物を降ろした後、レンタカーを返却し、無事終了。
その後は、カヤック・アウトドア用品の手入れと洗濯、そして動画編集をやっていたらあっという間に夜になってしまった。
このモン・トランブラン州立公園(Parc national du Mont-Tremblant)モンロー湖(Lac Monroe)は、基本的に静水なので、風が非常にきついとか、雨がザーザー降っている、という悪条件でなければ、誰でも楽しめる湖だと思う。カヌーレンタルも簡単にできるので、ここを訪れたのであれば是非試してもらいたいところだ。僕が行ったのは比較的早朝で、雨もぱらつく条件下だったためか、誰もおらず、本当に静かで平和なひとときを過ごすことが出来た。でも今度は、是非晴れた日に、ここを訪れてみたいな、と思った。
週末が終わった。来週も頑張ろう!