休日 スキー、のち・・・長かった一日

朝5時半に起きようと思っていたのに、起きると6時半を回っていた。慌てて準備を進めて7:10過ぎに家を出る。先々週、先週はスノーシューだけをしたのだけど、今日は3週間ぶりにスキー場に行くことにした。いつもMont Saint-Sauveurかなぁ(近いし)と思っていたのだけど、木曜日に職場の隣の部屋のニコがEastern townshipsにスキーに行くつもり、良かったら一緒にいかが?と誘いを受けていて、結局車は別々で行くことになったのだけど、まだ足を踏み入れたことのないEastern townships(モントリオールの東側ののどかな田園地域)に行くことにした。スキー場はいくつもあって、有名なのはSuttonOwl’s Headなのだけど、より高低差があるということでOwl’s Headに行くことになった。モントリオールからの距離は約140km。
カーシェアリングコミュノートで今日借りる車はPrius C(日本名:アクア)。後部座席を倒してスキーを積み込み、7:30を過ぎてようやく出発。出発前に台帳に書かれた出発時の距離と車の走行距離を念のため確認すると40km差があって、単純に間違えただけならしょうがないけど、サバを読もうをしたならいけ好かないなぁと思いながら、台帳を修正した。天気は良くて、サングラスは必須。凍りついたセントローレンス川を渡ると、Auto10の高速道路をひたすら東へと向かう。Exit106で高速道路を降りて、南へ進む。ナビの終了地点付近は全然車がいなくて、こんな寂れた所なのかなぁ、フクロウ頭山(Owl’s Head )はどこだ?と思いながら走っていたのだけど、そこに到着して目的地がずれていたことが判明する。検索し直して、スキー場へと向かった(20分ぐらいのロス)。おかげで、素敵なカントリーロードを走ることができた。

スキー場には9:40に到着。準備を整え、インフォメーションセンターに行き、リフト券を購入する。学生じゃないの?と二度ほど確認されたのだけど、残念ながら違います、と否定しておいた。 50ドルのところを40%の割引券を使って30ドルなり。
さて、リフトに向かうと、”Oh, are you Seishu?”と声がかかった。早速無事ニコに発見された。8時50分ぐらいには到着していたとのこと。一緒にリフトに乗る。眺めはすごくいいし、コースも悪くないし、リフト券も安いし、いやぁ、初めてきたところだけどいいところだなぁという話をニコはしていた。リフトの終点に着くと、彼の娘さん(ウィスカさん)がいて、3人で一緒に滑る。
雪質は上々。が、何箇所か局所的にカリカリのアイスバーンになっている斜面があってエッジが全然入り込まずに大きくスライドして焦る。危ない。斜面の状態をよく見ながらバーンを避けつつ滑る。ニコもウィスカも上手くてサクサクと滑っていく。眺めは素晴らしい!凍りついたメンフレメーゴク湖(Lac Memphrémagog)のだだっ広さがいい!この湖はアメリカにも延びていて、ここOwl’s Headからカナダ・アメリカ国境まではわずか5kmしか離れていない。アメリカが見えていますねぇと話をしながら快適に滑る。



何本か一緒に滑った後、ニコの他の2人の子供を探す&軽食を取るとのことで、別れて僕は一人で黙々と滑っていた。ところどころのアイスバーン斜面にどきりどきりとなる。昔はもう少し踏ん張れた気もするのだけど・・・エッジがうまく効かずにスキーの先端をバタつかせながらカリカリとスキー板がスライドしてしまう。ひょっとしたらスキー板の影響もあるのかもしれないも思い始める。今使っている板は、ツアー用の超軽量板だ。アイスバーン以外では何も問題なくスイスイと滑っていく。一方以前13年間愛用していた板は、買った時に店員さんからこの板はアイスバーンに強いよ、と言われて買った板だった。今手元にはない(日本に置いてきている)のだけど、またいずれあの板も使ってみようと思った。ボコボコなのだけどコースが非常に狭い(谷筋の中に作られた)コブ斜、アイスバーンが所々にある急斜に涙目になりつつ、時々景色を堪能するのんびりコースも楽しみつつ、快適に滑っていた。素晴らしい眺めの動画はこちら(YouTube)

12時を過ぎて、流石にお腹が空いてスキー場のインフォメーションセンターの二階にあるレストランに向かう。人でごった返していた。ハンバーガーを買ってムシャムシャと食べる。その後もスキーをするが、残念ながらニコ一家は発見できなかった。
かなり太ももの筋肉に疲労感を感じ始め、かつ時々スライドするアイスバーン斜面に対する不安感が溢れ始めた頃、景色素晴らしく十分満足した!怪我する前に切り上げよう!と切り上げることを決め、その後はしばらくリフト乗り場で待ってみたのだけどニコが来る気配もないので13:40頃片付けを開始して、車に戻る。出発の準備を整え、この時間に帰れば16:30前には自宅について、17時から日本にいる相方とSkypeができるなぁと思いつつ、ニコに、「今日のスキーは満足した。探したけど発見できなかった。お先に帰ります。では月曜日にまた!」とショートメールを入れ、そして車のエンジンをかけたところ、急にニコから電話がかかってきた。声が切羽詰まっている。
「Seishu、信じられないのだけど大怪我をした。頼むからまだ出発しないでくれ。待っていてくれ!」とのこと。電話を通してレスキュー隊との会話も聴こえて来る。「わかった、まだいるからここに!レストランに向かいます」と言って電話を切る。レストランに行くと、娘さんのウィスカがやってきて、一緒にリフトのところで待った。本人は一緒にいなかったので、状況はわからないとのこと。15分ほどしてレスキュー隊がソリを牽いて降ってきた。下の娘さん、息子さんも合流する。

そのままインフォメーションセンターの救急室に運び込まれる。すぐに酸素マスクが当てられて、さらに保温するために毛布でぐるぐる巻きにされていた。
足をやってしまったようで右足のスネ部分がぐるぐる巻きにされていた。スキーで派手に転倒した際にエッジでぐっさりと切ってしまったらしい。本人は骨は折れてはいないと思う、とのことだったのだけど、救急隊員の方は9割方折れている気がするけど、と話していた。いずれにせよ傷は相当深く、血はかなり出ていたとのこと(後で傷を見せてもらいましたが傷の長さは15cm程あった気がします・・・)。
救急室には他にも怪我をした人がいて、しばらくしてやってきた救急車に乗せられていった。ニコはいつも通り冗談も話していたのだけど、救急隊員が患部を確認するために包帯を取ると痛みで呻いていた。次にやってきた救急車で病院に向かう。ここから50km離れた病院に運ぶとのこと。救急車は狭いので家族みんなは載せられないとのことで、息子さんだけ一緒について、娘さん二人は僕が送って行くことになった。最初は救急車の後をついてきてくれと言われたのだけど、はぐれる危険性大だったので、住所を聞いて(正確には病院名を聞いて住所を検索して)すぐに追うことにした。そうこうしているうちに次の救助者が部屋に入ってきて、スキー場ってこんなにも怪我人だらけなんだ、とびっくりした(そういえば昼頃ゲレンデでソリに乗せられている人もいた)。そうよ、ここには頻繁にけが人が運ばれてくるのよ、と救急室のおばさんは話をしてくれた。
車に向かう。カーナビに番地と郵便番号を打ち込むと目的地の病院を示してくれた。優秀。スキーを載せていると助手席しか使えないので、僕のスキーはニコの車に載せて(いつ回収されるかは不明)、3人で病院に向かう。一時間かかって無事病院に到着。救急処置室に向かう。と、息子さんのトーンがひょこり現れて、こっちだよ、と場所を教えてくれた。
その後は、レントゲン検査をしたり、患部を縫い合わせたり、と処置が続く。そういえば車は夜19時までに返却することになっていたことを思い出し、コミュノートに電話して、カクカクシカジカなので返却時間を19時から23時まで延長したいのだけど可能か、と話をすると、本当に大変な状況ですね、その時間は他に予約が入っていないので大丈夫ですよ、延長しておきます、とのこと。ほ。
病院内のカフェテリアで腹ごしらえをしたりしながら待ち続ける。僕は夜間運転に備えて30分ほど居眠りしていた。子供達から、似顔絵を描いてみてよ、と頼まれたので、では日本で最も有名な似顔絵を描いてあげよう、と、へのへのもへじ、を描いて説明したところ、意外なほどウケて、ひらがなを一生懸命に真似していた。父親のことが心配でたまらない中、少しでも自分たちを元気にしようと前向きなお子さんたちを見ているとなんだかグッとくるところがあった。
20時を過ぎて部屋に呼ばれていくと、すでに縫製措置を受けたニコがいたのだけど、骨に本当に異常がないかどうかはまだ結論が出ておらず、別の医師がこれから確認するのでまだ時間がかかるとのこと。なので、ニコは深夜か明日親族の方に迎えに来てもらうことにして、とりあえず子供達を家まで送ってほしい、ということになり、子供たち三人を車に乗せて、20時半前に病院を出発。さすがに責任重大なことを痛感。絶対に事故るわけにはいかない。天気が良くて路面状態がいいのが救い。深夜の高速道路をスピードを出し過ぎずに疾走する。セントローレンス川をまたぐ大橋の上から見たモントリオールの夜景はなかなか素晴らしく、眠っていたお子さんたちも起き上がり、むっちゃ綺麗、と話していた。
さて、お子さん達を無事自宅まで届けて、その後自分の自宅に向かう。プリウスCには残り何キロ走れるかのメーター(走行可能距離メーター)が付いていて、自宅近くの24時間営業のガソリンスタンドにたどり着いた時は残り19kmを示していた。危ない。でも入ったガソリンは29リットル強。プリウスCのガソリンタンクの容量は36リットルなので、走行可能距離メーターが0kmになってもあと100kmぐらいは走れそうだ。また一つ勉強になった。
22:40に自宅に戻ってきた。無事自宅にたどり着いて本当にホッとした。しばらくの間スキーは手元に戻ってこなさそうだけど、仕方がない。次スキーに行くときは、レンタルスキーを借りて、登山靴スキーでないスキーを15年ぶりにやってみるチャンスかもしれない。


非常に残念ながらアクシデントがあったのでトータルで見れば悲しい1日となってしまった。とは言え、Eastern Townshipsの田園地帯はなかなか風情があって素晴らしく、またOwl’s Headの鄙びてはいるけど変化に富んだ、そして眺めの素晴らしいスキー場は素敵だった。行く価値はある。病院での対応は、こういった分野のボキャブラリが足りていないことを痛感した。それにしてもこの緊急事態に気がつかずに帰ってしまうということにならなくて本当に良かった。早くニコの怪我が回復することを祈るのみ。そんな長い1日だった。