奥日光・日光にて

時差ぼけがようやく出てきて、朝5時には目が覚めた。まだ暗い中、温泉に行く。誰もいない。内湯に浸かった後、広い露天風呂を独占する。雪が舞う。ほてった体を半分お湯につけてふぅーと息を吐いた後、吸い込む外気の冷たさと温泉の香りと体を温める温泉の心地よさ。日本にいるんだなぁということをしみじみと感じながらポカポカと過ごす。
ここの朝ごはんは感動的なほどメニュー豊富なバイキングだった。一品一品は非常に少ない量で、とにかくたくさんの種類を食べられる(そして勧められる)のが特徴的。器の一つ一つがかわいい。美味しかった。
チェックアウト後、午前中は日光湯本ビジターセンターに行き、クロスカントリースキーをレンタルして、湯ノ湖周辺を散策した。山スキーを初めてしたのはかれこれ15年前だけど、クロスカントリースキーはこれまで一度も履いたことがなかった。相方と二人で、平らな湖岸・森の中をサクサクと歩く。山スキーでのシール歩行とはまた違った感覚。確かに歩きやすい。なるほど。


湯ノ湖にはたくさんのカモがいた。

簡単にまとめた動画はこちら(YouTube)

昼前に湯ノ湖を発って、中禅寺湖畔を通り、いろは坂を下り、日光東照宮へと向かう。そう今回の旅のメインは日光東照宮。職場の帰り道の地下鉄の中で、明治11年に横浜から北海道まで旅した記録をまとめたイザベラ・バード日本奥地紀行を読み進めているのだけど(さらにこれを読み解いた「イザベラ・バードの『日本奥地紀行』を読む」はかなり面白かったです)、その中での日光とその周辺の記述、日光東照宮の鮮やかさにかなり心が動かされて、結果、日光が今回の一時帰国の際の旅行先となったもの。昨日訪れる予定が、天気がイマイチだったので、今日に順延したのだけど、今日も小雨が降って相変わらず天気はイマイチ。でも雰囲気はより出ている。
学生時代にここ日光・中禅寺湖に来た際には、この日光東照宮のすぐ近くの沢で調査を行っている。日光東照宮かぁと思いつつ、結局訪れずじまいのままだった学生時代。さて、どんなものかと楽しみにしていた。
第一駐車場に車を停めて、日光東照宮の中へと向かう。まず出てくるのが石鳥居。立派な花崗岩の鳥居だ。ずっと昔からここで笛を売っている、というおじさんのウグイス笛の音がしっとりと雨が降るこの日光東照宮に木霊する。諸国大名から奉納されたという花崗岩の石灯籠に苔が生え、それがさらに静かな歴史ある雰囲気を醸し出している。

五重塔を過ぎ、入場料を払って表門から中に入る。睨みつける仁王像。細部に彫り込まれた様々な動物。少し先には有名な三猿(見ざる言わざる聞かざる)がある。

そこから振り返ると、彫り込まれた想像上の「ゾウ」。おどろおどろしさとどこかかわいさも感じる見事な彫刻だと思う。

日本が誇る美しい門として有名な陽明門は残念ながら工事中で見えなかったのだけど、その周りの回廊に彫り込まれた数々の鳥の美しさは素晴らしい。

ふと軒先を見るとそこには龍が猛々しくあたりを睨みつけている。

これはすごいなぁ、とFujifilm FinePix S1のズームカメラをあちらこちらに向けながら、何枚も写真を撮りながら進んだ。すごい!
その先、有名な眠り猫(とその裏側の雀たち)をくぐると、徳川家康公の墓へと続く道となる。花崗岩のしっかりと加工された石段、それに生えた苔と羊歯が僕にはとても印象的だった。



イザベラ・バードは、この手前の豪華絢爛な部分ではなく、その上のひっそりと静かな一画に家康公の墓があることに感銘を受けていた。そんな記述を思い出しながら進んでいった。
この他には、輪王寺薬師堂(東照宮と同じ境内にある)の鳴き竜も、その柏木が余韻を持って響く様子がなかなか素晴らしく、一聴の価値がある。
東照宮の後は、中にある茶屋でお蕎麦を頂いた後、二荒山神社も参拝した。
この日僕が見た日光東照宮の様子をまとめた動画はこちら(YouTube)

東照宮の後は、東照宮の裏手にある二荒山神社の別宮である滝尾神社へと向かう。車がないと40分ぐらい歩いてようやく到着する場所。まだ雪が残り肌寒い中なのでかなり冷え込んだ。人は非常に少なくて、でも何組かの方々がいらっしゃった。人が少ない分、静かに参拝が出来るいい場所だと思う。
その後は、雪がたっぷり残る霧降高原をドライブした後、日光駅に戻り、レンタカーを返し、お土産を買い、特急に乗って帰京した。
晩御飯は自宅でアジの干物をいただく。美味しい。やっぱり魚が好きなんだと思う。
一泊二日の日光旅行。日光の蕎麦を食し、銅山の湿った坑道をくぐり、華厳の滝を目で、温泉と会席料理と豪華な朝食を堪能し、初めてクロスカントリースキーをし、日光東照宮の数々の装飾に驚き、静かな家康公の墓とそこに至る花崗岩の石段の立派さに感銘を受け、二荒神社と別宮の滝尾神社を参拝し、と楽しい時間を過ごすことができて感謝。それなりに旅行をしているつもりだけど、まだまだ訪れていないところはたくさんあって、まだまだ知らない日本の文化もたくさんある。それら全てを見ることは無理だろうけど、でも、もっともっといろいろなものを見て聞いて触って感じて、自分の中の日本を増やしたいな、と思った時間だった。