休日 Parc national du Mont-Orford snow hiking

朝起きて外を眺めると、時折雨がパラついていた。天気予報は午前中は曇り時々雨、午後は晴れ。しばし逡巡したのだけど、意を決して起き上がり準備を整えて家を出る。
今日向かうのは、モントリオールから東に車で1時間半の距離(約130km)にある、モンオルフォール州立公園(Parc national du Mont-Orford )先月一度訪れて短いコースでスノーシューを楽しんだのだけど、今日はこの中の少々長いトレイルに挑戦するつもりでいた。
高速道路を先へと進むとやがて雪が降り始める。思ったよりも良くない天気。ただ、雨ではなくて雪でよかったかな、とも思った。モンオルフォール州立公園の入口の受付には人がいなかった。駐車場に停まっている車も少ない。
駐車場横のビジターセンターCentre de services Le Cerisierに立ち寄ると中にレンジャーの方がいて、入場料を支払って、トレイルについて話をする。Cerf trailを歩くなら、多分スノーシューは要らないけど、凍りついているのでアイゼンはあったほうがいいよ、とのこと。長いルートなので所要時間は6時間とのこと。お気をつけて、と言われ、外に出る。そう今日歩くのはSentier du Cerfという13.5km、標高差200mのトレイルだ。地図はこちら(PDF)
スノーシューは念のため背負っていくことにした。屋久島に住んでいた時に鹿児島市内の好日山荘で購入した愛用の軽アイゼンを装着して9時半に出発。

本格的な雪山登山では、グリベルの12本爪のアイゼンを愛用している(選んでくれたのは竹内さん!)のだけど、それほどではないところでは、このエバニューのアイゼンがお気に入り。爪が短い分、歩きやすい。ただ、怖い場面では12本爪よりもより慎重にフラットフッティングを行う必要がある。他のいいところは、これを買った当時、ストラップ部分の一部がチェーンになっていることで調整を行う6本爪軽アイゼンが多かった(例1例2)中で、このモデルはネジで固定する幅調節機能が付いていて、しっかりと登山靴にフィットしやすい点(モンベルもいつの間にか幅の調整できるそっくりなものを出していることに気がつきました)。
雪混じりの風が冷たい。最初はSentier du Pekanというトレイルに沿って歩いていく。湖畔沿いを行くが間もなく丘に登り始める。凍りついていてアイゼンがないと厳しいと思う。トレイルには何箇所も(フランス語なのでよくわからないのだけどおそらく)この先立ち入り禁止としてロープが張ってあった。ここモンオルフォール州立公園もスノーハイキングのシーズンは3月中まで。その後の無積雪期のハイキングは5月以降になる。今はちょうど休業期間中なのだ。でも、ビジターセンターではトレイル名を挙げて話をしても特に何も言われず、むしろアドバイスもくれていたので、きっと大丈夫なのだろうと思って先へと進む。不安があるとすれば、今日最初の足跡が僕であるということぐらい。最初のPekan trailの目印は、雰囲気を壊さないように茶色主体で作ってあるので、少々わかりにくかった。
1.6km歩いて、Sentier du Cerf(Cerf trail)の入口に到着。この先は四角い黄色のプラスチックの目印がつき、わかりやすい。疎林の中を歩いていく。陽の当たる斜面は雪が融けて黒い地面が見えている。

クロスカントリースキーのコースを二箇所横切って、山の中へと入っていった。雪は一部を除きそれほど硬くはない。時々膝まで埋まりながらも、それほど苦労せずに進む。森の中は雪解けの水に溢れる。斜面のいたるところから水の流れる音が聞こえてきて、時々気がつかないまま小さな沢筋を踏み抜いて靴を濡らし、どきりとした。

10:35に最初の展望台に到着。どんよりと曇って色彩はあまりないのだけど、案外遠くまで見渡せる。そのすぐ先により大きな展望台。標高は368m。

何度も展望台と書いているけど、人工物があるわけではなくて、天然の岩の展望台。

その先は山上湖に向かって下りていく。この先この山上湖をぐるりと3/4周するのだけど、まだ湖は凍りついている一方で、森から融けた水が流れ込み、氷の上に大きな水溜りがいくつもできていて、その水溜りの青さと褐色の藻類の醸し出す不思議な色合いがいい。

湖の南の付け根でクロスカントリースキーのコースに合流し(誰も通った跡なし)、その先は1km以上湖畔沿いを歩いていく。

途中、不思議な形の木があった。

折れて、でも枯れずにその後も伸び続けているのだろう。逞しさを感じる造形。

静かな湖畔をゆったりと歩く。

その後は、森の中の登りに入る。地図上にある最初のビューポイントは気がつかず。その先の、標高400m付近にあるビューポイントは、岩の展望台になっていてなかなか素敵。眼下に先ほどいた山上湖を見下ろせる。暖かければゆっくりとお茶を飲みたくなる場所だ。

その先は、埋まる頻度が増し始める。ふと油断すると太ももの付け根まで埋まってもがく。トレース沿いは踏み固められているのだけど、そこからうっかり足を踏み外すと結構な頻度で膝上、太ももまで埋まった。どこがよく歩かれていたトレースなのだろうか、とストックで前方の地面を突き刺しながら歩いた。
標高498mのピークには12:40に到着した。ここも広い岩場で素晴らしく良い眺め。360°の全球写真はこちら(Ricoh Theta)。お弁当を食べるのに最適だろう。ただ今日はそれをするには少々風が冷たかった。季節を変えてまた来たいと思える場所なのだけど、帰宅後に気がついたのだけど、このルートは積雪期専用で夏道はない。夏に訪れられればいい場所なのになぁ・・・ぐるりと見渡すと、まずモンオルフォール州立公園の隅々までが良く見える。遠くには、2月末に訪れたOwl's headのスキー場、そして名の知らぬ山塊が見えている。

ここはアメリカの国境もそう遠くはない。故・加藤則芳さんがちょうど10年前に歩いた全長3500kmのアパラチアントレイルの終着点であるマウントカタディンが見えないか、目を凝らしてみたのだけど、残念ながらどの山かはわからなかった。直線距離で260km離れているので、よほど天候がよくなければ見えないかもしれないし、そもそも見えないのかもしれない。このカナダ東部のまだ雪が残る森の岩場の展望台で一人、2年前に亡くなった加藤さんを追悼していた。
さて、その先は下りになってサクサクと歩いていく。一箇所森の中に展望ポイントがあるが、それほどすごいわけでもない。やがて、クロスカントリースキーのコースと交わり、そこからさらに1kmほど歩いていくと、Pekan trailに合流した。結局Cerf trail中では誰一人合わず。 一方、このPekan trailには1名分の踏み跡があった。
入り口に向かって歩いていく。途中コースを逸れて展望ポイントのあるという小ピークを往復する。この手前で2人組の軽装のパーティーに会って、ほとんど人がいないですねぇという話をした。この小ピークの手前に良い展望台があって、太い木がちょうどいいあんばいにあったので、ザックの中からハンモックを取り出して、のんびりと過ごす。

時刻は14時過ぎ。空には大きな猛禽が1羽。風も穏やかで、リラックスして過ごした。
荷物を片付け終えると2人組のパーティーがやってきた。結局今日出会ったのはこの合計4名だった。あとは入口を目指して黙々と歩く。

Cerf trailの分岐点を通り過ぎて、15:10に入口に戻ってきた。ようやく天候が回復してきて、青空も見える。

アイゼンを外しながら、やっぱり青空は素敵だなぁと思いながら、今日のトレイルを思い返していた。本日の歩数は約2万6千歩。
15時半に州立公園の入口を出発して、17時過ぎに自宅に到着。

あいにく天候は雪のち曇りでどんよりとしていたため、ちょっと色彩には欠けたのだけど、この距離13.5km(+ 0.6km)のCerf trailは静かなところ(Cerf trailの中では誰にも会わず)で、まず山上湖の静けさが素晴らしく、何箇所かある展望台の雰囲気は非常に良く、森と湖と展望を楽しめるなかなか素敵なトレイルだった。歩きながら、今度は若葉が芽吹く頃か、もしくは紅葉の時期に再度是非訪れたいと思ったのだけど、おそらく夏道はなさそうなのが少しばかり寂しいところ。