休日 Lac Savane Canoe Camping初日

朝7時頃起きて、準備を進めて、家を出る。背中には折り畳まれたカヤック、前にはテント等が詰まったポーテージバッグを背負い、両手にもトートバッグを持っているのでノロノロとしか歩けず、遅い。車まで荷物を一度に運ぶことは諦めて、マンションの入口にカヤックをデポして、車を取りに行く。外は寒い。先週末は30℃を超えていたのに、今の外気温は4℃だ。天気はいいのだけど、カヤック日和ではないなぁ。荷物を車に積み込んで出発。先週に引き続き、モントランブラン州立公園(Parc national du Mont-Tremblant)へ。
今回は、Mont-Tremblant州立公園のサバンナ湖(Lac Savane)でのカヌーキャンピング。昨年8月にロッシ湖(Lac Rossi)でカヌーキャンピングをしているのだけど、それはそれは素晴らしかった。今年はとにかくたくさんカヌーキャンピングをするぞ、と意気込んでいるものの、職場の方からは「Seishu、5月末から6月は、蚊やブラックフライのブレックファーストになるだけだ。止めておいた方がいいよ」と聞いていて、でも聞いてはいるものの、それらも含めて経験してみたく、予約を入れた。ついでに来週末はMauricie国立公園でのカヌーキャンピングの予約を既に入れている。ちなみにモントランブラン州立公園の予約は電話で行う。カヌーキャンピングの地図はこちら(PDF)
9:55に公園入口の受付事務所に到着。10時に事務所が開いて、真っ先に受付を行う。予約番号を告げて、チケットを受け取り、出発。

公園の中の道路は新緑がまぶしかった!先週はそこまで強くは感じなかったのだけど、萌黄色に満ち溢れた森の中に、様々な新芽のピンク・薄茶色が混ざっている。それらが針葉樹の萌葱色との対比の中ですごく際立ち、まばゆいばかり。やっぱり春は美しい季節だなぁ。
モンロー湖にあるサービスセンター(Centre de services du Lac-Monroe)に寄って、一抱えの薪を受け取る(利用料金の中に含まれている)。そして、サバンナ湖へ。
サバンナ湖に至る道では一台も車に出会わなかった。湖畔に車道が走り、木立の隙間からサバンナ湖が見え隠れする。そして、カヌーキャンピング専用の駐車場に11時過ぎに到着。他には誰もおらず車も一台も停まっていなかった。
車の外に出ると、寒い!そのおかげが、蚊やブラックフライは少ない気がした。カヤックを組み立てる。

昨年購入したこのカヤックにキャンプ道具を積み込むのは初めて。組み立て終わって荷物を詰めると、防水袋が入っていかない・・・そう、持っている防水袋が少々太過ぎた。中の荷物を分散させたり、細く絞り込んだりして、なんとか詰め込むが、カヤックの中に入りきらず、前後のデッキに荷物を載せることになった。いやはや。先端がすぼまったタイプの防水袋が必要だなぁと今更ながら痛感。
さて、不恰好に荷物を積んだ状態で12時に出発。

風が出てきて、湖面は波立っている。昨年9月以来のカヤック。慎重に漕ぎ出でる。

見渡せば、新緑・新緑・新緑。美しい・・・今ここでは当たり前のように接せられるこの景色。よく目に焼き付けておきたいと思う。湖面の中心部は特に風が強く波立っているので岸からそれほど離れずに進む。水は透明感のある茶色。しぶきが冷たく、手が冷えた。波と風の影響でカヤックが結構流される。こんな時はラダーがあるといいのだけど、残念ながらこのカヤックにはラダーはついていない。新緑の中を波に揺られながら黙々と漕いだ。
30分ほどして、約2km離れたところにあるカヌーキャンピングのサイトに到着。

サバンナ湖はキャンプサイトが合計で20サイトあるのだけど、この場所には1〜4番のサイトがある。指定されたのは4番のサイト。まだ誰もいない。カヤックは荷物が満載なので、とりあえず荷物を減らそうと、薪やテント等をデポすることにした。
湖面に面したベンチに座って、りんごを齧る。目の前をリスが一匹駆け抜けていく。風が強くて寒い。押し寄せる波を見て、今日これからも行動をどうするか悩んだが、小一時間してから出発することにした。
13時半、再出航。いきなりFujiFilmの防滴ズームカメラを水没させて、慌ててカヤックの上に引き上げる。水が入っていないことを祈ろう。南西方向に向かう。この湖は入り組みが豊富。それらに沿って湖畔をぐるりと回る予定だ。

波の間にWalleyeと思しき魚影が見える。しばらく波立っていたのだけど、突き出した部分を回ると幾分波がおさまった。

その先は岸に沿って北東方向に進む。9〜12番のサイト地点を越えると非常に狭まったところがあって、それを超えていくと、流れ込みが幾つかある。最初の流れ込みにはビーバーダムがあった。見慣れてくるとよくわかる。この場所に佇んでいるだけで、すごく幸せな気分になる。

空には猛禽類が一羽舞っている。かっこいい!でも種類はよくわからなかった。森の中からはたくさんの小鳥のさえずりが聞こえてくるのだけど、実際に見られる鳥の数はそれほど多くない。目立つところではハシグロアビCommon loon)が忙しそうに潜水を繰り返している。このハシグロアビは鳴き声が独特。湖面に響くこの声を一度聴けば、忘れることはないと思う。日本だとアオバトの声を聴いて最初は鳥の鳴き声だと思わなかったようなのと同じような印象。その先も流れ込みに立ち寄りながら進む。

湖の一番奥まったところは、せせらぎが響く細い流れ込みとなっている。目をこらすと流れの中にはトビイロトビケラがいて、かわいらしい。この場所は風が弱くて落ち着いた場所だった。カナダの山奥に一人でひっそり佇んでいるという贅沢感。

さて、戻り始める。逆風となって漕ぐのがなかなか大変だった。無心に黙々と漕ぐ。狭まったところを過ぎた先は強い逆風で押し戻されそうになる。その先の湾は、追い風となって、漕がなくても風と波でカヤックはどんどんと進んで行く。帰りは大変そうだなぁと思いながらも束の間の風力推進を楽しんだ。そして帰りは案の上結構な風。少しでも風当たりを避けるために岸寄りギリギリを漕いでいたら、沈木に気がつかずにカヤックを乗り上げてしまった。僕のカヤックはインフレータブルだ。エアチューブを挟んで乗り上げた沈木の感触が伝わっていくる。穴が開かなくてよかった。いくら船体布が丈夫とは言ってもやはり布は布。今ここで穴が開けば、水温も低いし、それは結構大事となる。
湖をさらに南下する。そして適当なところで横断して、そこからはキャンプサイトに向かって北上した。体が慣れてきて、岸辺から離れたところを漕ぐ

他のキャンプサイトを全て回ってみたのだけど、誰一人としていない。一番長いところの長さが5km以上ある、この入り組んだ大きな湖にいるのは僕一人だけらしい。ただそれだけのことなのだけど、そのことがなかなか感慨深く、心に沁みる。
冷たい風と波しぶきでパドルを持つ手が冷え切る中、今宵のキャンプサイトに戻ってきた。もう16時を過ぎているのに誰もいない。今夜はこの湖は僕が貸し切り状態になるようだ。タープを張ってテントを組み立てた。蚊取線香をセットして、集まり始めた虫を追い払う。
ダウンジャケットを着込んでから、湖面に面したベンチに行き、ワインを飲み、本を読み(と言ってもiPadKindleで電子本を読み )、ハーモニカを吹いた。日暮れまではまだまだ時間があった。この湖面に面した場所は風が強い分、蚊等が吹き飛ばされてそれほど不快ではない。のんびりと過ごす。
その後焚き火を開始。

今夜のメニューは、カレーと、BBQ(ソーセージ、マッシュルーム)、熱燻処理されたサーモン、スナップエンドウ、オリーブ、ピスタチオ等。ビールを飲みつつ、ソーセージを焼く。

やがて日が暮れ始める。

何度見ても神秘的な風景だ。湖畔に佇んで、西の空を縁どるたおやかな森の影を眺めていた。空には月齢5の月が輝いている。

日暮れ後は、ウィスキーを飲みながら、焚き火の前で過ごす。夜になって風は随分とおさまった。聴こえてくるのは、パチッパチッという薪が燃える音、湖面に打ち寄せる波の音、時々遠くから運ばれてくる得体の知れない何かの鳴き声、時々吹き抜ける風が引き起こす木々のザワメキ。ついついウィスキーが進んで、すっかり酔っ払ってしまった。酔い覚ましに湖畔にいくと、満天の星。北極星の位置が高い。かつて、択捉島に向かう途中で見た北極星もかなり高かったのを思い出す。

動物に奪われないように食料・食器を入れた袋を高いポールの上に吊り下げてから、テントに入り寝袋に包まって、眠りについた。(写真は翌朝撮影のもの)