休日 Mont tremblant River kayaking

朝6時過ぎに起きて準備を整え、7時に家を出る。天気はいい。ただ、明日は雷雨でかなりの量の雨が降るとの予報。カヤック等が入った大きなザックを背負い、テント・寝袋等が入った50リットルのザックを抱かえて、さらに小物の入ったトートバッグを持ってよろよろと歩いていく。
向かう先は車で北西方向に約2時間のところにあるモントランブラン州立公園(Parc national du Mont-Tremblant)。今日のターゲットは、シャ湖(Lac Chat)から公園の入口までの間のディアブル川(River du Diable)の川下り。職場の隣の部屋のNicoが、いい川だよ、行くべしと仰っていて、車を取りに出発地点にはどうやって戻るの?と訊くとヒッチハイクで戻った、とのこと。ただ、調べるとレンタルカヌーは盛んに行われていて、さらにツアー用のバスが出ているようで、それに便乗できると信じて出発。
地図はこちら(pdf)参照。

9時前に到着。公園の入口でキャンプサイトの手続きを済ませた後、カヤックを持ってきてこの区間の川下りを考えているのだけどどうしたらいいのかと訊くと、「シャ湖に行けば良い。バス?Lac-Monroe Visitors Centreで予約できるよ」とのことで、先にとにかくLac-Montoe Visitors Centreに行けばいいのか念押しするとそうだとのことだったので、10km先にあるビジターセンターに向かった。
ビジターセンターで、バスの予約をしたいのだけど、と話をすると、カヤックを運びたいのかと訊かれる。曰く、川下りの際に、自前のカヤック・カヌーがあるなら、(i)まずシャ湖に車で向かう、(ii)そこから川下りして公園の入口に着く、(iii)のオプション1:カヤック・カヌーをその場に置いておいて、車をピックアップするなら、料金は要らない。バスの運転手さんにシャ湖まで乗せて行ってください、と言ってもらえればOK。座席に余裕があれば大丈夫。バスの座席数も結構あるので大丈夫なはず、(iii)のオプション2:カヤック・カヌーを運んで欲しいなら料金がかかる。その場合、車のピックアップのためにシャ湖で人は下ろすが、カヤック・カヌーはこのビジターセンターまで運んできてここで受け渡しになる、とのこと。なるほど。さらに、身一つで乗って車を回収しに行くのに時間はかからないよ、お金節約した方がいいよ、とのアドバイスまでもらった。素晴らしい。ちなみにレンタルカヌー・レンタルカヤックができて、その場合はここ出発でシャ湖までカヌー・カヤックと一緒にバスで送ってもらい、最後公園の入口からビジターセンターまでバスに乗って帰ることになる。また、コースタイムは休憩なしで約3時間、公園入口からのバスは今の時期は14時から17時まで一時間ごとに動いていますよ、とのことだった。
車で2km程手前のシャ湖に戻り、車を駐め、そこでカヤックに空気を入れて組み立てる。時刻は9時半。到着した時は他に1名しかいなかったのだけど、レンタルカヌーを借りた人も含めて続々と集まってきて、出発する頃には結構賑やかになった。何名かが、僕のカヤックを見て、それはインフレータブルなのか、素晴らしい、と話をしていった。蚊がたくさん寄ってくるので虫除けクリームを塗って備えた。

さて10時前に出発。湖の中を見ると稚魚がちらほらいてかわいい。今回、川下りということでカヤックの底につけるスケグ(舵)を外しているのだけど、それもあっていつもよりもよく回転する。左右のバランスを取りながら湖面を進む。そして瀬へ。
瀬をカヤックで漕ぐのはいつ以来だろうか?と思う。屋久島の後の東京生活では、東京にカヤックを置く場所がなかったので実家においたままだった。実家周辺の川で川遊びのためにカヤックを取り出したことはあったけど、本格的に瀬を漕いだわけではない。屋久島にいる時も安房川も栗生川も永田川もそれほど流れがあるわけではない。となると、瀬をしっかりと漕ぐのは北海道の釧路川源流、そして釧路川中流を漕いで以来か?と思い始めると、本当に久しぶりだなぁと嬉しくなる。
さて、最初の瀬の流れは素直で何も問題なし(YouTube)

次の瀬は右側の流れを通るように示されていて、若干の隠れ岩がある。カヤックの回転具合がいつもと違うのでそれに気をとられて一度バランスを崩しかけて腰をひねって戻した以外は何も問題なし(YouTube)

その後は気持ちのいい瀬が続く。三つほど瀬を越えるとすっかり感覚を取り戻して、何も不安はなくなった。

結論から言えば、二つ目の瀬がこの区間の中では一番難しい瀬だと思う。あとはひたすら楽しいばかり!最初はやや不安を感じて防水デジカメであるオリンパスのTG-820で撮影していたのだけど、平気そうなので防水袋から防滴ズームカメラのFujifilmのFinePixS1を取り出してこちらに切り替えた。

まず森が美しい。流れる水も茶色く着色されてはいるけど透明感がある。流れに乗って、森の中を通り過ぎていく。瀬が出てきてはその爽快さにニンマリとし続ける。


川は蛇行を繰り返しながら、森の中をぬっていく。川面には小鳥たちのさえずりが響く。水の中に沈んだ倒木が何とも言えない芸術的な雰囲気を醸し出している。日が当たるところの浅瀬には水草が生えていて、ゆらゆらと揺れる様子が素敵だ。

大きな魚は見かけず、所々に小さな魚(何かの稚魚か?)が群れていた。上陸できる岸辺は基本的には細かな白い砂だ。コース中で見た鳥は、水鳥はカワアイサCommon merganser)とアメリカガモAmerican black duck)、上空にはヒメコンドルTurkey vulture)が優雅に舞っていた。


同じぐらいのタイミングで出発した方々とは、時々追い抜いたり、追いついたり。川旅の良さは、どんどん流れていくので混んだ印象がないところだと思う。何度か顔を合わせていると、Hello again!が挨拶になった。
蛇行した川は、やがて瀬らしい瀬はなくなって、Sentiers du Toit-des-Laurentidesの登山道があるところにかかる橋の先からは瀬はなくなる。

このため、ダウンリバーではなくアップリバーをしている方も出てきた!とはいえ、流れはあるのでそれほど漕がなくともカヤックは流れていく。
途中、上陸してリンゴを取り出し、その後は齧りながら進む。

このコースは基本的には日帰り半日コースなのだけど、ところどころカヌーキャンピングのサイトがあった。

下流に向かうにつれ、山肌の岩が川にまで下がってきているところが出てくる。美しい川トンボを何匹も見かけるのだけど、なかなか写真・動画におさめることができなかった。絵に書いたような森の中を進む川。

それにうっとりし続けること3時間ちょっと、ヴィア・フェラータ(ワイヤーロープやはしご、吊り橋等が整備された岩場の登山コース)用の吊り橋を過ぎて、

さらに公園入口にある橋を過ぎるとそこがゴール地点だった。13:20に到着。

既に2組ほどゴールしていて、その後もぽつりぽつりと到着する。蚊に群がられる中、カヤックの空気を抜いて畳む。僕のカヤックに興味を持った方が、カヤックの漕ぎ心地を質問してきて、感覚的にはシット・オン・トップ・カヤックに近く、またスピードはそれほど出ないよ、と話をしたのだけど、通じたがどうか。
黄色いバスがやってきて、バスで戻る方のチェックを始める。

僕は、スタート地点まで運んでくれないか、と話をすると、カヤックを入れる空きがあるかどうか確認すると言われ、いや、カヤックはここに置いておくつもりだ、と話すとわかったとのこと。次来るときは念のため鍵を持ってきておこう。
バスの最後尾の席に乗ると、出発時に運転手さんが確認を取っている。フランス語は全くわからないのだけど、おそらくシャ湖で降りたい方を訊いている気がして、手を上げかけたところ、近くの席の方が英語に訳してくれて、おかげで予想通りであることが判明して、手を堂々と伸ばすことができた。たくさんの方がバスには乗っていたのだけど、この14時のバスでシャ湖で降りるのは僕一人のようだった(つまり他のみなさんはレンタルカヌー・カヤック)。
お礼を言ってバスを降り、車に乗って、公園入口に戻る。カヤックは畳まれて一セットが簡単に持ち帰ることができる状態だから、盗まれることはないとは思っていても、やっぱりそれなりに不安だった。
カヤックを無事回収して、再び公園内に入る。と入口の料金所のすぐ先で、この炎天下の中荷物を背負って歩いている若いカップルがいて、大変そうだなぁと思っていたら、手を挙げられたので停まってあげた。ヒッチハイクで人を乗せるのは屋久島以来だ。この先7km程進んだところにあるキャンプサイトに行く予定とのことで、そこまで送っていく。モントリオール在住・女性の方は2年前に日本を訪れたことがあるとのことで、東京に5日間滞在した後、大阪、広島等に行って、宮島で宿泊しましたよ、と話されていた。日本の文化を知ってもらえるのは嬉しいことだ。
その後は、Lac-Montoe Visitors Centreで、薪を一抱え購入して、本日のキャンプサイトであるセイブルズ湖(Lac des Sables)を目指して走っていく。
途中、まだ訪れたことがなかったChutes Crochesという低めの滝のある渓流を訪れる。人も少なく、静かな中を水が轟々と流れている。

近くにカヌーの出発地点があるのでそこもついでに見に行った。川辺にはアゲハチョウが集まっていた。

さて、セイブルズ湖のキャンプ場に到着。今回は77番を選択した。このサイトは89のサイトからなるのだけど、この週末にいたのは全部で10組程度だと思う。非常に静かだった。この77番に着くと、なんとサイトのすぐ横にハリモミライチョウSpruce grouse)が一羽いて、砂浴びしている最中だった。僕に気がついて逃げかけたのだけど、その後、危害を加えられることはないと判断したのか、逃げずに砂浴びを再開していた。

まだ16時なので、セイブルズ湖を眺めにいく。泳いでいる方、水遊びをしている方、カヤックをしている方、と様々なのだけど、たくさんの蚊に群がられたので、さっさと退散した。

サイトに戻って、タープを張って、ハンモックを吊るした。

この間もずっとハリモミライチョウくんは砂浴びをしていて、そのうち大胆になってこちらを振り向かなくなった。

僕はハンモックに寝転がって、iPadで本を読む。贅沢な時間だ。ハンモックの下には蚊取線香が二巻あって、他に電動式の虫除け器も作動させたおかげで、蚊もブラックフライもさほど寄ってこなかった。そう、湖の側ではなくて森の中というのは、蚊もブラックフライもいるにはいるのだけど、湖畔のように数十匹に集られるようなことがないのはありがたい限りだ。気がつけばうたた寝していた。
目覚めるとライチョウは姿を消していた。代わりにリスが忙しく森の中を駆け抜けていく。 起きてワインを開け、その後焚き火を開始して、エンドウを煮て、ソーセージ・牛肉・マッシュルームを焚き火で焼き、サーモンミルクスープを温め、と食事を進めていく。贅沢だなぁ。

夏至を間近に控えた今日は、日が暮れるのは遅くて、夜22時を過ぎてようやく暗くなる。酔い覚ましがてらセイブルズ湖に向かう。他のサイトの方々も焚き火を囲んでしっとりとした時間を過ごしている。湖に着くと、淡い光が点滅しながら飛んでいるのが目に入ってきた。ホタルだ!全く予想していなかっただけに、それはとても嬉しかった。数は多くないのだけど、湖畔の草陰や湖面の上を淡い光が瞬いている。嬉しいなぁ。2匹捕まえて、手のひらの上でその光を楽しむ。幸せな時間。

天気予報では夜から雨が降るとのことだったけど、幸いにしてまだ晴れたままだ。明日の朝は雨だろうけど、素敵な天気をありがとうございました、と夜空にお礼を言った後、サイトに戻ってテントに入り、寝袋にくるまって寝た。