休日 La Mauricie National Park kayak-camping 初日

朝7時に家を出た。この週末は、モントリオールの北東方向に車で2時間ちょっとのところにあるモリシー国立公園(La Mauricie National Park)のLac Soumireでカヤックキャンピングをする計画。コースはLac Soumireから入って、0.5kmポーテージ(カヤックを担いで歩くこと)してLac Giron、さらに1kmポーテージしてLac DubonそしてLac Dauphinaisに到達、テントを設置した後にLac des Cinqに至り、引き返し、Lac Dauphinaisでキャンプ。翌日は、Lac Dauphinaisを出発してLac Dubon、Lac Giron、Lac Soumireとたどり着いて帰ってくるという一泊二日のプラン。この場所はキャンプサイトは全て焚き火禁止になっていて、さらにポーテージもあるのでそれほど慣れていない人は入らないだろうという予想があって、まあ、一言で言えばこの公園の中では玄人向けの場所だった。先月、Nicoと一緒にカヌーに行った際に、カヌーでのポーテージというものを一通り知って、今度は自分の持っているカヤックを使ってポーテージをしながら旅することを是非やってみたいと思って今回計画したものだった。地図は以下の通り(正方形の一辺が1km)

9時過ぎに国立公園の入口に到着して受付を済ませる。Lac Soumireの入口の駐車場には9:35に到着。結構な数の車が停まっていて、人がたくさんいるのだろうかとちょっとびっくりした。

カヤックを組み立てて、荷物を担ぎ、9:50に出発。7月に行った一往復半する方法ではなくて、カヤックもキャンプ道具も一度に全部運ぶ方法で行く。でも背中に背負った防水バッグが高過ぎるのか、頭上に持ち上げたカヤックのバランスが悪く、首筋にかなりの疲れが生じて、結構消耗しながら歩く。最初の500mでこんなに消耗しているようでは…と思いながら歩いていく。
500m歩いてLac Soumireに到着。

キャンプ道具をカヤックに詰め込む。この部分は何度もイメージトレーニングしていただけあって、割とスムーズにことが運んだ。ふと足元を見ると水の中にはヒルがうようよと泳いでいる。ちょっと気持ちが悪い。
10:15に出発。天気は曇り。気合いは十分。

15分ほど漕いで、ポーテージ地点に上陸。ここから隣のLac Gironまで500mのポーテージ。

バランスが悪いのか、歩きづらい。カヤックを乗せた頭の上が結構痛い。背中に背負った防水バッグのせいか、常にカヤックが前に押されているような力が働いて、それを正す力に結構消耗した。気持ち暗くなる。
Lac Gironには10:45に到着。カヤックを水の中に入れて荷物を詰め込んでいるとここもヒルが近寄ってきて気持ちが悪い。
10:55に出発。

程なくして雨が降り始めた。この湖にはもう一艇のカヌーがいて、釣りをしながら進んでいる。ハシグロアビは雨の中でも元気だ。11:20に上陸。
この先Lac Dubonまで1kmのポーテージ。雨がザーザー降り始める。辛い。ポーテージでは、途中の木道で足を滑らせて派手にこける。ポーテージの疲れもあって、がっくりと来ていた。

11:50にLac Dubonに到着。ちょうど3隻ほどのカヌーが出発していったところだった。ここも水の中にはヒルが何匹かいて、パドルですくい上げて、陸地に放り投げる。こうした湖の中にいるチスイビルに血を吸われたことはまだないのだけど、ゆらゆらと蠢いているのはやっぱり気持ち悪かった。
12:05に出発。

Lac Dubonはすぐに終わって、2つのビーバーダムとその間の浅い水路を抜けてLac Dauphinaisに至る。カヤックの中から荷物を引き出すのが面倒で、なんとか荷物を全部入れたまま、カヤックを持ち上げてビーバーダムを越えたのだけど、これが思いの外消耗した。
小さなお子さんを乗せた一隻のカヌーがいて、お父さんはたくさんのトラウトが釣れたんですよ、と誇らしげ。見せてもらうと確かにたくさん釣り上げている。いいなぁ。
12:20にLac Dauphinaisを出発。この先、雨が激しくなる。この湖には4−5隻のカヌーが浮いていて、釣りをしている。そういう場所なんだなーと思いながら進む。

大分エネルギー切れしてきて、狭窄部を越えて進路を西に取る頃にはバテて来ていた。すれ違ったソロカヌーのおじさんが、キャンプするの?一人なのか?と聞いてきたので、今夜一人でキャンプです、と答える。ペアが多い中で、ソロ同士が会うとどこか親近感というか、むしろ絆すら感じるところ。雨は上がり始め、ただ風が強まる中、13:00に今宵のキャンプサイト、Lac DauphinaisのNo.1のキャンプサイトに到着した。

上陸して場所を決める。4区画あって、そのうちの一番左手の部分を選んだのだけど…木枠で囲まれた場所にりんご等の生ゴミは落ちているし、シリアルも溢れているし、その外にも缶詰の空き缶が残されているし、正直かなり幻滅した。野生動物を近づけないという意味でわざわざ食料・調理器具・匂いのするもの(歯磨き粉等)を高いポールにぶら下げるのに、そもそもテントを張る区画に生ゴミが落ちていたら意味ないじゃないか!幻滅というより怒りすら感じながら、それらを片付けた。

またトイレも扉が開いていて、ハエを中心に虫が入り放題な状態だった。蚊取り線香をセットして、とりあえずその場を離れた。
と、テントを張る場所自体は低評価なのだけど、岸際には程よい砂礫の広場もあって、悪い場所ではない。すぐ横には小さな澄んだ川も流れていて、素敵じゃないか、と思いきや、その美しい流れのすぐ横にトイレットペーパーの残骸があったのは大いに幻滅、失望。はっきり言って、こうした汚物をもっとも避けるべき場所なのに!ごく一部だと信じたいのだけど、ケベック州のカナダ人のこうしたルール・モラルの遵守度は本当に低くて幻滅する。この二ヶ月あまり期待を裏切られ続けているのでもう慣れっこなのだけど、こんなにモラルが低いのはケベック州だけだと信じたい。
14:05、荷物の一部をデポして、さらに湖の奥を目指す。雨はすっかり上がって気持ちが良い。空には大きな積乱雲。夏のケベック州

No.3のキャンプサイトには10名程の方々がいて賑わっている。そのさらに奥へと進む。前方からカヌーがやってきてすれ違う。水中の水草が美しい。細くなった先のポーテージポイントに到着。14:45。

この先Lac des Cinqまで400mのポーテージ。ここにある鍵のついた木製の何かの保管庫には、クマの爪の跡がたくさんついていた。

15:00にLac des Cinqに到着。ここは水際にたくさんのカエルがいて、しかも逃げないでいた。最奥の湖。漕ぎ出す。少し進むと8名ほどのパーティーが岸際の岩場で休憩していた。
時間があまりなく、この広い湖を全部行くのは無理だろう、と今回は東側だけ回ることにした。

風が強く、場所によっては割と波が立っている。転覆しないように気をつけながら進む。と、突然、何故か安室奈美恵Don’t wanna cryが頭の中でヘビーローテーションを始めた。うーん、この曲が頭の中を流れるのは15年ぶりぐらい。懐かしさに駆られながら、この初めて訪れた湖の景色が、この曲に融合しはじめて、不思議な気分で眺めていた。この曲をよく聴いたのは高校時代、特に初めての海外(オーストラリア)に行って帰ってきた直後の心持ちがこの曲に被る。
さて、Lac des Cinqの東側の最奥まで到達しなかったけど、その手前の部分にたどり着き、うーん、この場所を訪れることはもうないのだろうなーとセンチメンタルな気持ちになりながらパドリングしていた。西側も含めた全部を回ることはできなかったけど、それも仕方がないと思いつつ、どこか中途半端な状況に気持ち悪さを感じつつ、でもここまでは来たんだという満足感はあった。

この東側部分には誰もいなくて、それが満足感そのものでもあった。記念写真を撮ってから帰路についた。(追記:結局10月に紅葉に彩られたこの湖を再訪することになって、ムースに出会うというとてもとても貴重な体験が出来ました)。
Lac des CinqのNo.3のキャンプサイトまで反時計回りに回る。

その後、この湖の入口に向かって湖を横断した。
前方に湖の西側に向かうカヌー隊が見える。16:25に湖の出発地点に戻ってきて、そこから400mポーテージして、Lac Dauphinaisに戻ってきた。16:40。ちょうど2組の計4名のカヌー隊がポーテージを始めるところだった。
16:50に出発してキャンプサイトNo.1に向かう。急に暗くなって雨に打たれる。雨が上がってからは少し釣り糸を垂れてみたけど、何も食いついてこない。代わりに岸際に寄った時に地球を釣ってしまい、急激に深くなる湖ゆえに外すのに苦労した。
17:50にキャンプサイトに戻ってきた。湖のそばに折りたたみ椅子を置いて、そこでビールを飲み、ワインを飲みながら、サーモンナゲットやスモークミート等を食する。

この湖は残念ながら焚き火はできないので、夜は割と暇だ。キャンプサイトNo.1は僕以外は誰もいない。これはチャンスと食後はずっとハーモニカを吹いていた。靄が立ち始めた湖面が美しい。そう、湖の表面は驚くほど水が温かかった。沈みゆく太陽が神秘的だ。21時頃ようやく暗くなり始める。

そのまま22時まで粘って星空を眺める。
食料・調理器具等を防水袋にまとめて、ロープで高いところに吊り、テントに入って寝袋に包まる。酔いもあってうとうとし始めた頃、ガサガサゴソゴソ、という大きな足音がほんの10mの距離であって神経を逆立てた。枕元のクマスプレーを手にとって耳を澄ませる。少し遠くに離れていく気配がしても5分ぐらいはじっと聞き耳を立てていたのだけど、いつの間にか眠りについていた。