休日 La Mauricie National Park The Explorer Route 初日

朝7時過ぎにモントリオールを出発した。モントリオールから車で2時間半の距離にあるモリシー国立公園(La Mauricie National Park)へ。
今回のカヤックキャンピングのコースは、初日はまずワピッザゴンク湖(Lac Wapizagonke)から入って、2.8kmのポーテージ(カヌーを担いで歩くこと)の後、カリブー湖(Lac du Caribou)にたどり着き、コブ湾(Baie Cobb)を経て、0.5kmポーテージして、マレシャル湖(Lac Marechal)、1kmポーテージしてテシエ湖(Lac Tessier)、さらに0.4kmポーテージして、ウェーバー湖(Lac Waber)にたどり着き、そこでキャンプ。翌日はウェーバー湖から約3kmのポーテージを経て、ワピッザゴンク湖にたどり着き、スタート地点まで戻ってくるという計画。モリシー国立公園の地図に寄れば、このコースにはThe Explorer Routeという名前が付いている。地図はこちら(正方形の一辺が1km)

8:35に国立公園の入口の受付に到着。手続きを済ませて国立公園の中に入る。まずはカリブー湖に向かう。先月のカヌーキャンピングの際と同じく、2.8kmのポーテージを少しでも楽にすべく、テント・シュラフ等の荷物をカリブー湖のほとりにデポしておき、カリブー湖に到着後回収する計画を立てていた。
デポを済ませて、9:15にワピッザゴンク湖の北側の駐車場に到着。湖畔のピクニック広場にカヤック・荷物を運び、カヤックを組み立てる。リスがけたたましく鳴いている。
9:45に出発。

ハイシーズンの休日の天気のいい日とあって、湖には数艇のカヌーが浮いている。先月来た際は湖面はモンカゲロウの抜け殻だらけだったけど、今回はない。近くにいるハシグロアビ(Loon)が小魚を咥えている。

水の中に眼を凝らしていると、水中を悠々と泳いでいくアビ。鏡面のような湖面を突っ切っていく。カワアイサのたくさんの雛を連れた群れがいる。空高くにはヒメコンドルが舞っていた。


10:30にポーテージポイントに到着。

ここはキャンプサイトになっていて、森の中にテントを張るスペースが指定されているのだけど、湖に面した砂浜にもテントが張られていた。岸際には洗剤のボトルがある。生分解性でも何でもない普通の洗剤。そして産卵にきたトンボが洗剤の活性剤のためか、水面から飛び立てず溺れていた。すくい上げて陸に上げる。しばらくすると無事飛び立っていく。ほ。これがここケベック州の公園ルール遵守度の程度。もう慣れたけど。
ここで一旦カヤックの空気を抜いて折りたたみ、ザックに入れる。カリブー湖まで2.8km、標高差150m。10:45に出発。

荷物は背中に背負っているものだけなので、視界はいい。森の中をゆったりと歩いていく。ただ、背負っているのはカヤック用の簡易ザックで、腰ベルトがなく、それに濡れたカヤック、パドル、細々とした道具類(レスキュー、ファーストエイド、小物、etc)、水、食料、お酒、調理器具等々が全部詰まっているのでそれなりに重く、肩に食い込んで少々しんどい。なにくそ、カヤックを担ぐよりは楽なはず、と休憩なしで黙々と歩いていたのだけど、結構消耗した。
11:30にカリブー湖に到着。デポしておいた荷物を無事回収し、カヤックを組み立てて、と準備を進める。何艇かのカヌーがいて、出発の際にもどこから来てどこへ行くのか、話しかけられたりもした。そう、ラッキーだなーと思うのは、今使っているフェザークラフトのエアロナットというモデルが、かなり珍しい&かっこよく映るらしく、そのカヤックはインフレータブルなのか、使い心地はどうなんだ?という質問を割と頻繁に受けて、話すきっかけができること。ただ、残念なことに、カヤックに興味を持って話しかけてくれるのはいつも道具好きな男性ばかりで、若い女性から声をかけられたことはない。
さて、11:55に出発。べた凪。あまりにべた凪過ぎて、湖の真ん中を突っ切る。水面を走り回る水生昆虫。湖面に映った青い空と雲。雄大な景色。カリブー湖に来るのは既に3回目だったのだけど、美しかった。
12:50、コブ湾との間の浅い水路に到着。カヤックを降りて少し押して進み再び乗り込む。浅い水路は先月よりもさらに浅くなっている。引っかからないように気をつけながら進む。

静かなコブ湾を進む。高くなった陽がギラギラと照り暑さを感じる。カヤックの向きが変わるたびに帽子のひさしの向きを変えた。ここにある大きなビーバーの巣は今日もずっしりとたたずんでいる。

水鳥を眺めながら進む。



13:20にマレシャル湖に向かうポーテージポイントに到着。ここから500mのポーテージ。左手を流れる水路を行けば、30mぐらいのポーテージと2回ぐらいビーバーダムに乗り上げて越える程度で済むのだけど(先月はそちらを行った)、荷物満載のカヤックでそれをするのは逆に面倒かつ船底に気を使うので、まとめてポーテージとした。
8月初めのカヤック旅でポーテージのコツを掴んだおかげで、とても重心バランスがよく楽々カヤックを運べる。折りたたんで運ぶよりも楽かも。これなら長距離でも問題なく歩ける。
13:40、マレシャル湖に到着。一隻のカヌーが到着。また家族連れの賑やかなカヌーが右手に見える。
荷物を積んで、13:50に出発。

鏡のようだったけど、少し進むと若干波立ち始める。この先は初めて進む場所だ。ポーテージポイントが湖の途中にあるので、それを見逃さないように右手の湖岸沿いに進む。
14:05に、あっという間にポーテージポイントに到着。

ちょうどポーテージに出発していく人影が見えた。ここから隣のテシエ湖までは1kmのポーテージ。キャンプ道具を満載した防水袋を背負い、カヤックを担いで歩く。
14:30にテシエ湖に到着。先ほど見かけた人影の方々が出発するところだった。荷物は軽くて、日帰りで回る予定の方々のようだった。カヤックを水面に浮かべるとヒルがうようよと近寄ってくる。夏の間、このモリシー国立公園のポーテージポイントではかなりの頻度でヒルを見た。幸い一度も血は吸われなかったけど、気持ち悪いのですくい上げて陽に照らされて熱くなった砂の中に埋めて干物にしたりする。
14:35に出発。すっかり人影が消えたテシエ湖。ハシグロアビの声が響く。静かな、贅沢な空間。ここまで来ると今宵のキャンプサイトへの到着時間にも目処がつくようになったので、のんびりと進む。
14:55にポーテージポイントに到着。ここからウェーバー湖まで400mのポーテージ。流石に少し疲れてきて、ゆっくり進む。
15:15、ウェーバー湖到着!水際の白い花が綺麗だ。到着したのはウェーバー湖の真ん中あたりで、今宵のキャンプサイトは左側(西側)にしばらくいったところにある。

15:25、出発。西向きに漕ぐと日差しがきつく感じて、顔面に布を巻いた。誰もいない静かな場所。

15:45、ウェーバー湖のキャンプサイトNo.2に到着。ここには2パーティー分の区画がある。まだ誰も来ていない。左側の湖を望める区画を占領。ここにテントとタープを張った。

ただ、リンゴか何か、生ゴミらしきものがすぐ横に捨てられていることに気がついた。げ。わざわざクマ・オオカミ除けのために食料を高い位置に吊るすにもかかわらず!つまみ出して遠くの森の中に持っていく。
時間があるので、ウェーバー滝を見に行くことにした。食料品・調理器具を高いポールの上に吊るし、その他の余分な荷物はテントの中にデポして、16:25に出発。

静かな湖面を漕いで行く。ひたすらに心が癒されていく。


17:00にキャンプサイトNo.1を通過。こちらにはテントが張られていた。そこからほどなく、滝に向かうトレイルの近くに上陸。17:05。3隻のカヌー(キャンプサイトNo.1の方々のものだった)。滝の音がここまで聞こえている。カヤックをデポして歩く。
トレイルにはたくさんの方がいてびっくりした。皆軽装だ。ここは、今日僕が出発したワピッザゴンク湖の入口から反対方向にカヌーで1時間半ほど進むと、周囲9.3kmの環状トレイルがあって、その途中にあるもの。ワピッザゴンク湖に泊まる方を除けば多くは日帰りなのだろう。人の多さに急に下界に戻った気分になって気持ちは複雑。
滝の上を眺めてから、滝の下に向かう。屋久島の縄文杉コースに匹敵する立派な木製の回廊・階段。さらに手摺まで付いている。

滝壺の展望台では、20名程の方々が和んでいた。17:15。滝壺では行水している方もいる。この滝は、ウェーバー湖の水が流れ落ちてきたものだ。なかなか立派で、見ていてそれなりに迫力はある。段々なので、水の中・水際を簡単に登れそうで、沢登りしたいなーと思った。

さて、人の多いので、さっさと戻ることにした。

カヤックのところに戻ってくると、やたらとこちらをジロジロと眺めているおばさんがいる。よく見ると犬を連れていて、犬のトイレを済ませ、人目を気にしているようだった。まあペットは持ち込まないというルールがある場所も、平気で犬を連れ込むのはケベックスタンダードということなのだろう。

また側にトイレ跡もあった。バックカントリーを謳っているとは言っても、訪れる人の雰囲気を見れば、少なくともこのウェーバー滝の周遊トレイルはあまりバックカントリー風の雰囲気を感じない。そもそもこのトレイルにたどり着くにはカヌーで往復3時間漕がないといけないとは言っても。人数制限等が行われているわけでもなく、実は(アメリカの国立公園んでいうところの)バックカントリーではない、ということなんだと思う。
17:25、騒がしかったトレイルから離れて出航。空が美しい。キャンプサイトNo.1を通り過ぎれば、その先は僕一人しかいない空間。ウェーバー湖は入り組んだ形をしていて、角を曲がってしまえばあとはただ静かな自然が広がっている。この場所を占有できるという贅沢。空に浮かぶ雲が美しかった。

今宵の宿のキャンプサイトNo.2を通りすぎてさらに湖の西側の端まで探検にいく。湖の端の湿原の静けさ。

と、湖面を横切る影を発見。ビーバーだ!西の端でビーバーに出会えるなんて、とてもラッキー!嬉しかった。18:20。

その後は引き返して、途中の流れ込みを見に行く。割と豊富な流れ。せせらぎの音。好きだなぁこんな場所。
随分と太陽は傾いた。キャンプサイトに向かう。大きなトンボ(ギンヤンマ系)がカヤックの周りをぐるぐるぐるぐると飛び回る。それだけなんだけど、なんだか嬉しい。

18:50、キャンプサイトに到着。今宵ここを使うのは僕一人だけのようだ。
ビールを飲み、サーモンナゲットをいただく。今回のこの場所は焚き火が禁止なので、折りたたみ椅子に座って、持ってきた食料をつまみ、ビール・ワインを飲みながらただのんびりと過ごす。びっくりしたのはウェーバー湖の水の味で、甘くてまろやかで柔らかくて、とても美味しかった。ウィスキーの水割が幸せ。この水が店で売っていたら買うだろう(念のため浄水器を通した上で飲んでいる)。
暗くなり始める頃、キャンプサイトのすぐそばの水面を一頭のビーバーが横切っていった。素敵。

その後はハーモニカでいろいろな曲を吹いて過ごす。星空はとても素敵だった。

水際にはカエルが何匹もいた。

22時前に就寝。