休日 Diable River Kayak-camping 二日目

朝5時半に起床。うっすらと明け始めた夜。ポールに吊るしておいた食料・調理器具を回収して、お湯を沸かし、朝食をいただく。まだほとんどの方はテントから出てきていない中、さっさと準備を済ませて、7:15に出発。

靄のかかった川面をゆっくりと流れていく。今日も天気は良い。朝一で誰もいないので静かでとてもステキ。この川は雰囲気は素晴らしいのだけど、出発時間が集中して、少々混雑感を感じるのが玉に瑕だったので、朝一のこの静けさはとても気に入った。

出発して20分、のんびりと進んでいたら突如右岸の茂みがガサゴソガサッ!と大きな音を立てて大きく揺れ、何事か!(クマかオオカミが突進してくる?)と、身構えたら、ビーバー2頭がこちら目掛けて突進してきた!咄嗟に彼らの心情が理解できず、噛みつかれる!?とかなりドギマギしたところ、ドボンッと大きな音を立てて川に飛び込んだビーバーは、そのままカヤックの下を通り抜けて姿を消した。振り返ってみれば、ビーバーにしてみれば、ムシャムシャと草を食べていたらいきなりカヤックが現れたのでびっくりして川の中に逃げ込んだだけらしい(その最短距離が僕の方向だった)のだけど、突進してくるビーバーには結構ビビって、でも距離わずか1mで見ることができたのはとても素敵な体験だった。もう少し早く気がついていたら写真を撮れただろうに…残念(撮った写真には何も写らず)。

早起きは野生動物に出会える確率を上げてくれる。そんなことを今更ながら考えながら、先へと進んで行く。
さて、7:40にNo.12の瀬(2級 75m)に到着する。

上陸して偵察。ここはLe Pont-Brûléのキャンプサイトがある場所でもある。特に最後の部分はきちんと見ておいたほうがいい場所だ。朝一でもあるのでやや緊張しながら進む。流れ自体はまっすぐで、最後のいくつかの岩をきちんと避けられればそれほど問題はない。

橋の下をくぐり抜け、その後はのんびりと進む。ここから湖までの一時間ほどの区間は、くねくねと曲がる流れをただひたすらゆったりと流れていく、湿原好きにはたまらない区間だと思う。水面に映った森を眺めながら、小鳥たちの歌を聴きながら、水面下の水草の揺らめきに癒されながら、朝の涼しい空気を胸いっぱいに吸い込みながら、ゆったりと過ごす。


Lac Escalierには8:40に到着。湖の入り口では釣りをしている方がいた。

穏やかな湖をのんびりと横切る。湖上でくつろぎのポーズを取っていたカヤッカーが、随分と近づいてから僕の存在に気がついて、いそいそとパドリングして遠ざかっていった。湖の中島の近くではハシグロアビが潜りを繰り返している。湖岸にカヤックキャンピングのサイトがあって、のんびりとくつろいでいた。
30分ほどかけて湖を横切る。再び川になるべく狭まっていくところには、小魚がたくさんいて、パドリングの度に群れが揺らぎ、水面に数々の水紋を作っていた。
9:15にNo.13の瀬に到着。

ここは岩だらけで下れないのでポーテージ(カヤックを担いで運ぶこと)する。ここにもLe Barrage-du-Lac-Escalierという名のキャンプ場があって、トイレ休憩を済ます。橋のすぐ横にカヤックを降ろして最後の区間へと向かう。

後から降り返れば、このポーテージ再出発地点にある、No.13から続く瀬がNo.14の瀬(2級 50m)だったのだと思う。でもこの時はそう思わなかった。この点は、このガイドマップの分かりにくさに起因する。そして、9:40にNo.15の瀬(2級 350m)に到着した。

でも勘違いしていて、これがNo.14の瀬だと思っていた。ちなみにNo.14の瀬の解説は「いくつか避けるべき岩があるが、困難なしに越えられる」であり、No.15の瀬の解説は「何箇所かしっかりとした操舵が必要、何箇所か避けるべき岩があるが、著しい困難なしに越えられる」となっている。
偵察する。瀬が続き、最初の部分しかわからない。入ってすぐに気をつけるべき狭い部分が当て、そこを頭の中で何度かリハーサルした。
さて、出発。入口で早速底が引っかかってずりずりと進む。その先は、あれよあれよという間に過ぎていく。岩が出てくると咄嗟に判断して避けていく。スピードがあって面白い。距離も長い。なかなかの瀬だ。泡立つ瀬が陽の光にキラキラと輝いている。これがNo.14だなんて、No.15はかなり難しそうだ…と思いながら下る(降っていたのはNo.15なのですが)。

300mほど降って一度淵になる。その先は偵察せずにそのまま突っ込んだ。うまく岩の間をすり抜けて、少々引っかかりはしたものの、無事通り抜けた。

その後は、のんびりと美しい流れが続く。でも気持ちは、次のNo.15の瀬は如何程のものか、と思いながら落ち着かずに進む(実際にはNo.15は終わっているのだけど)。既に終わっているものと知っていれば心からリラックスしてのんびりと下ったのですが…地図ぐらいちゃんと見ておけばよかった。Lac Laplanteの手前の湖に浮かんだ雲が印象的だった。

さて、気がつけば、眼の前に昨日Lac Laplanteに車を停めた際に見た「この先滝があり危険、川下りここまで」という川にかかった横断幕を見て混乱する。あれ、そうか、No.15はもう終わっていたんだ、とようやく気がつく。昨日の出発地点から計25km、今朝のキャンプサイトからは10km下って、10:20にゴール地点に到着!ちょっと急ぎ過ぎただろうか?

その後はカヤックを乾かしてから片付けるのだけど、気がつけば何箇所か蚊に刺されていて痒かった。シマリスが近くに寄ってきて、エサをくれ!と物欲しげな顔をしていたのだけど、心を鬼にして、食料の入った袋を真っ先にバッグの奥にしまって無視を決め込む。かわいい顔をしているけど、実は手には鋭い爪があって、そのギャップにはどきりとする。

カワアイサの群れが流れていく。のんびりとした水辺の時間。
11:15に出発。砂利道を越えて、舗装路に出て、公園の入口を過ぎて、モントリオールに向かう。途中の高速道路は事故渋滞で通過に時間がかかるところがあった。

14時前には到着。その後は洗濯、片付けに邁進した。
Diable RiverのLac aux HerbesからLac Laplanteのこの区間は、実は昨年から是非行きたいと思っていたところ。それをやり遂げ、一言でどんなところかと訊かれれば、とても素敵なところだった、と答えたい。瀬と瀬の間は、よく言えばのんびり、悪く言えば若干冗長な部分もあるけれど、いじくられていない蛇行した流れの中を進むのはとてもとても素晴らしい。瀬は水量に寄るのだろうけど(今回は平均よりも少ない低水量期だったと思う)、とてもとても困難、という場所はなかった。でも流石に全くの素人だとちょっと難しい・厳しいのではないかとも思う。でもいざとなれば主要な瀬にはポーテージ用のトレイルも付いているし(避けて通るのは勿体ないですが…)、なんとかなるコースだと思った。一点、残念な点があるとすれば、バス利用者は出発時間が被るため、混み合った印象になることか。さらに言えば、このケベック州の州立自然公園のカヌーキャンピングは、ネットで予約が出来ず、電話する必要があるため(国立公園のカヌーキャンピングサイトはネット上で予約可)。国外に住んでいるとちょっと面倒だと思うことか。とはいえ、素敵な森の中の川を堪能できてとにかく大満足な週末だった。