休日 Thousand islands kayak-camping初日

朝5時過ぎになんとか起き上がる。昨日の懇親会のアルコールの残りがじんわりと頭の中でうずく。でも今日はのんびりはしていられない。冷凍庫・冷蔵庫に入れてあった食材をザックに詰め、6時前に家を出た。
今回の目的地は、モントリールから南西方向に約250kmのところにあるサウザンド諸島Thousand islands)の中にある国立公園。このサウザンド諸島は、オンタリオ湖の北東部分からその下流セントローレンス川にかけての80km程の区間に大小様々な島が数多く点在している場所(全部で1864島!)で、この島の一部が国立公園になっている。この中のアドミラルティ諸島(Admiralty Islands)と呼ばれる島群にあるBeau Rivage island(美浜島と訳しておこうか)でキャンプをする予定で予約を入れている。

国立公園のウェブサイトを見てもどこから出発すれば良いのか最初よくわからなかったのだけど、よくよくウェブページを見ると、ガナノクエTown of Gananoque)にある町営のマリーナから出発できそうだ。Beau Rivage islandまでは、ここから4km弱なので、当初は昼過ぎにガナノクェに着いて、それから出発すればいいや、と思っていたのだけど、昨日天気予報を見て背筋が凍った。天気予報が悪化していて、土曜日は午後から夕方にかけて激しい雷雨の予報。加えて、風速が8−9m/s程度で最大風速は14m/sという。嵐だ。島と島の間に入ってしまえば平気なのだろうけど、最初のセントローレンス川の横断部分(と言っても1km以下だけど)で強風に吹かれるのは嫌だ。それでなくとも、たくさんのボートやクルーザー、ヨットがいるだろうから、引き波が怖い場所なのに。ということでとにかく早く島にたどり着いて嵐は島でやり過ごす計画を立てた。
6時を15分ほど過ぎて出発。今回借りた車はPrius C。夜明け前のモントリオール島を運転していく。途中ガソリン補給・トイレ休憩でサービスエリアに立ち寄る。オンタリオ州のサービスエリアはOnRouteという名前。大体80kmごとぐらいに設置されている。
ガナノクェの町には9時頃到着した。マリーナのある方に向かうが、少し東の歴史公園のあたりに出てしまった。駐車場はどこもオーバーナイトの駐車は禁止と書いてある。しばらくうろうろした後、ここにある1000 Islands Kayakingというレンタルカヤックカヤック販売を行っている会社(ここで借りてカヤックをするならここにお世話になると思います。)の店に入っていって、自分のカヤックに乗ってキャンプするのだけど、一晩停められる駐車場はどこにあるか教えてもらえませんか?と聞くと、マリーナに行かないと、右に曲がって、そこから二つ目のストップサインを左に曲がってさらに次の通りを左に曲がるとマリーナにつきますよ、とのこと。感謝。言われた通りに進み、町営のマリーナに到着。

受付で駐車料金を払うように、と看板に書いてあるので、受付に行くと、明日までの駐車料金が6ドルだった。安い!右手奥に小さなビーチがあってそこから出艇してくださいとのこと。ここはトイレやシャワーもある。かなりたくさんの船が置いてあって、カナダ国立公園局の船をとめる場所もあった(そう書いてあった)。そして、ここオンタリオ州英語圏なので、あらゆる標識が英語優先で、フランス語が全くわからない自分としては非常にわかりやすかった。
ビーチ前の公園でカヤックを組み立てる。SUPで出発する人が多数(15名ほど)。

まだ青空は残っているものの、既に風は強い。少しでも早く向かおう、といそいそと準備を済ませる。そして、10時を過ぎて、出発。
南西風が強い。水温はそれほど低くはない。外気温は25℃ほど。既に空は雲で覆われていて、青空の欠片はなくなっていた。先ほど出発して行ったSUPの方々は、いくつか点在する島から外へは出ておらず、引き返してきていた。風をまともに受けてスピードも速くないSUPでは確かにこの風はかなり厳しいかも。そしてセントローレンス川の横断にかかる。距離は1kmもないのだけど、風があって波が立ち始めている上に、行き来する船の引き波があるので、とにかく早く切り抜けよう、と一生懸命漕いだ。

マクドナルド島(MacDonald island)の岸辺近くにたどり着いてほっとする。
この先は、波風が幾分弱まって、島々の間をのんびり漕いで行く。家一軒がようやく建てられるぐらいの小さな島から、ちょっとした森がある大きな島まで、いろいろな島がある。
目の前の川面を掠めるように飛んでいったカモメが足に何かを掴んでいる。おそらくナマズの仲間。生きたまま捕まえたのか、死んでいたものを捕まえたのかは不明。

時々ボートが横を通過していって、引き波に備える。夏の間はもっともっとボートが多いだろうから、その点については若干面倒な場所だなぁと思った。
岸辺に茶色い小動物がいてカメラを向ける。ミンク(American mink)だ。そのまま川に入って行き、別の島目指してまっすぐと泳いでいる。と、近かづくカヤックに気がついたのか大急ぎで元の島に戻り始める。

せっかく1/3ほど泳いだのにもったいない、とカヤックを元の島とミンクの間に入れて、さらに方向転換してもらって、再度目指していた島に向かってもらった。こんなときビーバーであれば、ドボンッという大きな音を立てて水中に潜って隠れてしまうのだけど、ミンクは潜ることなく、水面を必死で泳いでいたのが興味深かった。カモやウ、カモメはたくさんいる。魚を食べる猛禽のミサゴもたくさんいて、時々その精悍な顔つきに似つかわしくないピヨピヨというかわいい声で鳴きながら、何羽も空を舞っていた。

さて、一時間ほどして無事美浜島に到着。

まずはぐるりと島を一周する。桟橋は島のあちこちにあって、普通のボートに加え、キャンピングカーならぬキャンピングボートも数隻停泊している。後日、隣の部屋のオランダ人の同僚にその話をすると、水上の家でしょ、オランダにもいっぱいあるよ、とのことで、それほど珍しくもなさそうだったのだけど、僕がこうしたボートを見たのはおそらく初めてだったので、それは凄く新鮮だった。そして、上陸。

カヤック用の上陸ポイントは島の南西部分にあるのだけど、そこからだとキャンプサイトまで若干距離があるので、島の東側についている桟橋の場所で上陸した。岸際は岩場だけど、カヤックの乗り降り自体は問題ない場所だ。

上陸地点はNo.5のキャンプサイトで、僕が予約したNo.6はその隣だ。プライベート感がより強いのはNo.5だった。No.6のよさは、見晴らしの良い岩の広場がすぐ横にあることなのだけど、それもNo.5のすぐ横でもあって、もし次ここに来るのであれば、No.5を予約すると思う。
手続き方法がよくわからなかったのだけど、ドルマークのついた桟橋に向かうと、そこに記入シート+封筒とそれを入れるポストが置いてあって、手続きを済ませるらしい。薪も置いてあり(注:薪を置いていない受付箇所もあるので注意)、6.8ドルとのことだったので、7ドルを封筒に入れてポストに入れておいた。

この島はリスが非常に多い。10m歩くごとにリスの気配を感じた。他にはヘビもいた。
キャンプサイトでタープとテントを立てる。風が強いので木陰に張った。

その後はすぐ横の見晴らしの良い岩の広場で折りたたみ椅子に座ってぼんやりしていたのだけど、すぐに雨が降り始めて、タープの下に避難した。


でもずっと降っているわけではなく、雨が止むとまた岩場に出て、その景色を堪能した。時間はたっぷりあって、まだ12時過ぎだ。本を読むのだけど、朝早かったこともあって、眠くてうつらうつらしていた。今日ハンモックを持ってこなかったのは失敗だった。遠くを見ると川面にウサギが跳ね始めた(白波が立ち始めた)。

早くこの島にたどり着いてよかった、とホッとしながら、ゆっくりと過ごした。
何度かタープに避難した後、レバーペーストを塗ったパンを食べながらウィスキーの水割りを飲み始めると益々眠くなって、ぼんやりと過ごしていた。

タープの下にいるといくつものヒッコリーの実が落ちてくる。風が強いしなぁと思っていたのだけど、落ち方が規則的だったので、ふと頭上を見るとリスが木の上で食事をしていた。この島はヒッコリー(クルミ)の他、どんぐりも非常に多いところだった。

島をぐるりと周る道の横にキャンプサイトがあったので、賑やかな子連れの家族から、犬を連れた夫婦、そしてピチピチと若い女性三人組まで、いろいろな方がキャンプサイトの横を通り過ぎていった。

夕方、雨が激しくなった。18時過ぎに一度雨が弱まった際に焚き火を開始して、ビールを飲みつつ、ソーセージを焼いて食べる。

その後は土砂降り。焚き火の上に新聞紙を広げて雨を避ける。雨で濡れ新聞になって燃えず、いい雨よけになってくれる(雨が止むと乾いて燃え上がる)。雨の日に焚き火を起こす際にも使う技術の一つだ。やがて雷鳴も轟き始める。カエルが何匹もタープの下にやってきた。夜21時にはようやく静かになって、あれほど強く吹いていた風が収まった。テントに入り、寝袋に包まって、明日は予報どおりに晴れることを祈りながら、眠りについた。